
外国人雇用を本音で語る「リクアジの編集部」の上田です。本日のトピックはこちら!
・技能実習制度の概要と課題について
・問題が発生する具体的な原因と背景
・問題解決に向けた企業、団体の対策方法
「技能実習制度の問題って、どこに原因があって、どう解決できるのだろう?」と悩んでいる方へ。本記事では、制度の抱える課題とその原因、さらに企業が取り組める具体的な対策についてわかりやすく解説します。読み終えれば、制度の理解が深まり、改善に役立つ実践的な知識が得られるはずです。
技能実習制度とは?その目的と仕組み
技能実習制度の概要と歴史
技能実習制度は、もともと日本が途上国への技術支援を通じて国際社会に貢献するために1993年に設立されました。当初は製造業や農業など、技術習得が難しい分野での人材育成を目的とし、現地での産業発展につなげることが期待されました。しかし、近年の日本国内での深刻な労働力不足に伴い、制度の主眼が「国際貢献」から「労働力の補填」へと変わりつつあります。この変化が、制度の問題点を浮き彫りにし、見直しが必要とされる背景にもなっています。
年代 | 出来事 |
---|---|
1960年代 | 日本企業が海外進出し、現地社員を日本に招聘して技術や知識を習得させる取り組みが開始 |
1981年 | 在留資格「研修」が創設され、外国人研修生の受け入れが制度化 |
1993年 | 外国人研修制度に「技能実習」が追加され、技能実習制度が本格的に開始 |
2017年 | 「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」が施行され、制度の適正化と実習生の保護が強化 |

技能実習制度の目的:人材育成と国際貢献
制度の大前提は、日本の技術や知識を学び、それを母国で生かして現地の発展に寄与することです。しかし、実習生が受ける訓練や研修が本当に専門的な技術の習得に寄与しているか、という点はしばしば疑問視されています。一部の業界では、実習生が単なる「安価な労働力」として使われるケースが目立ち、制度本来の目的が忘れ去られているのが現状です。

技能実習制度における主要な問題点
低賃金・未払いの残業代
技能実習生が働く環境では、最低賃金にギリギリ達しているかどうか、または賃金未払いの問題が頻発しています。これは、日本で働く技能実習生が「学びに来ている」と見なされ、労働者としての権利が制限されやすい点が背景にあります。さらに、労働時間に見合わない報酬を受け取るケースも多く、残業代が支払われない例も珍しくありません。こうした低賃金問題は、実習生の生活を圧迫し、彼らが失踪や不法就労へと追い込まれる一因となっています。
長時間労働と労働環境の悪化
技能実習生が直面するもう一つの問題が、過度な長時間労働です。実習生が労働時間の基準を超えて働くことを求められる場合が多く、これは企業側が安価な労働力として実習生を見ていることが原因です。劣悪な労働環境や安全基準の不徹底により、健康被害や怪我が発生するリスクもあります。
ハラスメントや人権侵害の事例
実習生に対するハラスメントや人権侵害の問題も深刻です。例えば、言葉や文化の違いを理由に不当な扱いを受けたり、仕事上の指示に従わないことで強い叱責を受けることもあります。さらに、特定の上司からのモラルハラスメントや、住居環境の問題、個人のプライバシーを侵害するような監視体制が敷かれるケースも報告されており、実習生のメンタル面にも悪影響を及ぼしています。
実際にあったニュース:ベトナム人技能実習生への暴行事件
技能実習生の失踪者について(年度別・国別)
技能実習生の失踪者数は年々増加しており、2023年には約9,753人が失踪しました。主な原因は低賃金や長時間労働であり、SNS上で違法な仕事を紹介されるケースも増加しています。制度改善が求められる状況です。詳しいデータは、下記の表をご覧ください。
国 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 |
---|---|---|---|---|---|
総数 | 8,769人 | 5,885人 | 7,167人 | 9,006人 | 9,753人 |
ベトナム | 6,105人 | 3,741人 | 4,772人 | 6,016人 | 5,481人 |
ミャンマー | 347人 | 250人 | 447人 | 607人 | 1,765人 |
中国 | 1,330人 | 964人 | 896人 | 922人 | 816人 |
カンボジア | 462人 | 494人 | 667人 | 829人 | 694人 |
インドネシア | 307人 | 240人 | 208人 | 367人 | 662人 |
フィリピン | 85人 | 48人 | 47人 | 70人 | 84人 |
その他 | 133人 | 148人 | 130人 | 195人 | 251人 |
技能実習生の問題が発生する原因
文化・宗教の違いによるストレス
技能実習生が感じる文化や宗教の違いによるストレスは、日本で働く上で大きな課題です。例えば、イスラム教徒の実習生は豚肉を避ける必要があるものの、職場で十分な配慮がされないことも多く、食事面での負担が増えます。また、祈りや断食など宗教的な習慣を守ることが難しい場合もあり、ストレスが積み重なります。こうした問題を解決するためには、受け入れ側が異文化を理解し、習慣に配慮することが重要です。

監理団体や送り出し機関に関する問題
技能実習制度では企業が実習生を受け入れる際、監理団体と連携して現地の送出し機関と面接を行い、合格者は日本語や日本の文化を学んでから日本に入国します。しかし、送出し機関の手数料や保証金が大きな負担となっており、実習生の多くが借金をして支払っています。例えば、ベトナムの実習生の場合、手数料の上限は3年で約40万円とされていますが、実際には80万~150万円に達することが多く、家族や友人から借金する必要に迫られています。
こうした経済的負担により、実習生は過酷な労働条件にも耐えざるを得ない状況が続き、制度の改善が求められています。

想定賃金と実質賃金のギャップ
技能実習生が日本に来る際、母国より高い収入を期待しています。しかし、実際の手取り額は、さまざまな控除や最低賃金の影響で期待を大きく下回ることが多く、このギャップが問題となっています。
技能実習生の平均手取りは月15万円前後です。ここから住居費や保険料が差し引かれるため、自由に使える金額はさらに少なくなります。この状況を改善するためには、受け入れ側が給与や控除の内容を丁寧に説明し、実習生が現実的な期待を持てるようにすることが重要です。

技能実習生問題に対する企業・団体の対策
適切な労働環境の整備
技能実習生が安全に働ける環境を整えることは、企業の基本的な責任です。特に危険な作業を伴う現場では、安全設備の導入と定期的な安全教育が欠かせません。
例えば、建設業では高所作業や重機操作などの危険を伴う業務が多く、安全対策を徹底することが求められます。ある企業では、全従業員に対して毎月の安全講習を義務化した結果、事故率を30%以上削減する成果を挙げています。さらに、作業現場の定期的な安全点検や、実習生への適切な装備(ヘルメット、保護具など)の支給を行うことで、より安全な作業環境が確保されています。
賃金・労働条件の改善
適切な賃金と労働条件の提供は、実習生が安心して働ける環境を作るために重要です。多くの実習生は、自国で高額な手数料を支払い、日本での収入を期待して来日しています。そのため、賃金が最低賃金を下回ることや、時間外労働に対する手当が不十分であることは、大きな不満の原因となります。
例えば、2023年の調査によると、最低賃金を基準に賃金を見直した企業では、技能実習生の定着率が20%向上したというデータがあります。また、労働時間の適正化を図り、長時間労働を削減することで、実習生の健康維持と生産性向上にもつながっています。
コミュニケーションと相談体制の整備
技能実習生が安心して働ける環境を作るためには、日常的なコミュニケーションと定期的な相談体制の整備が重要です。文化や言語の違いを超えた良好な関係を構築するため、多くの企業では日本語サポートや面談を実施しています。
また、生活や仕事の悩みを早期に解決するために、相談窓口を設置する企業もあります。ある会社では月1回の相談会を実施し、実習生が抱える問題を早期に把握し、適切な対応を行っています。こうした取り組みにより、実習生が安心して働ける環境づくりが進められています。

不法行為防止と監視体制
技能実習制度の信頼性を向上させるためには、企業が法令を遵守し、不法行為を防ぐ監視体制を整備することが不可欠です。特に、労働環境や契約内容が適正であるかを定期的にチェックする仕組みが求められます。
例えば、ある建設業では外部監査機関を活用し、年に数回の監査を実施しています。この監査では、賃金支払状況や労働時間の記録が適切であるかを確認し、改善が必要な場合には迅速に対応しています。また、企業内にコンプライアンス部門を設置し、問題の未然防止に努める企業も増えています。

技能実習生制度における実例とトラブル事例

賃金の未払いと長時間労働の問題
技能実習生制度では、賃金未払いと長時間労働が深刻な問題として報告されています。厚生労働省の調査によれば、実習生の約40%が賃金に関する問題を経験しており、中でも残業代の未払いが頻発しています。
山口労働局の調査で、外国人技能実習生を雇用する事業所の72.2%が賃金未払いなど法令違反をしていることが判明。主な違反は割増賃金未払いや有給休暇の未付与で、建設業が最多。局は是正を求め厳正に対処する方針です。
技能実習生と犯罪の現状
技能実習生が犯罪に関与するケースは、劣悪な労働環境や経済的困窮、社会的孤立が背景にあることが多いです。
窃盗:生活費や借金返済に困窮した実習生が、スーパーで食料品を盗むなど。低賃金や生活苦が原因
不法就労:失踪後、ブローカーを介して別の企業で違法に働くケースが増加。建設業や農業で特に多く見られます。
暴力事件:共同生活でのストレスや文化の違いが原因で、実習生同士の衝突が暴力事件に発展することもある。
技能実習制度の今後の展望と改善案
育成就労制度への移行とそのメリット
2025年には、技能実習制度から「育成就労制度」への移行が予定されています。この制度では、外国人労働者が働きながら特定技能1号水準の技能を習得し、公正な労働条件のもとでスキルを身につけられる環境を整備します。受け入れ企業にとっては、即戦力となる人材を育成できるだけでなく、教育コストの削減や社会的信頼の向上といったメリットがあります。また、外国人労働者にとっては、安定した雇用環境のもとでキャリア形成が可能となり、帰国後の自立や本国での活躍が期待されます。

長期就労や永住権取得の可能性と影響
新しい育成就労制度は、外国人労働者にとって日本での長期就労や、場合によっては永住権取得への道も開かれる可能性を持っています。特に、日本の社会や労働環境に適応し、高い技能を持つ実習生には、長期間働き続けられる仕組みが提供される見通しです。これにより、外国人労働者が安定した生活基盤を築きやすくなり、労働力不足の解消だけでなく、地域社会の発展や活性化にも寄与することが期待されます。
まとめ
技能実習制度の概要から課題、そして今後の展望までを深掘りし、実際の対策と改善案をお届けしました。本記事では、制度の本質的な問題や背景をわかりやすく解説し、企業や団体が取り組むべき具体的な方策を示しています。2025年には「育成就労制度」への移行が予定され、実習生のスキル向上や自立支援がさらに進む見込みです。これにより、日本の労働力確保と実習生の本国での活躍が期待されています。技能実習制度の将来に向けた理解と改善のヒントを得る一助になれば幸いです。

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この記事の監修者

大学卒業後、経営コンサルティング会社に入社し、企業の経営支援に携わる。その後、dodaを運営するパーソルキャリアにて、様々な方の転職支援に従事。その経験を活かし、株式会社JINにて、人材事業を開始。