
外国人雇用を本音で語る「リクアジの編集部」の上田です。本日のトピックはこちら!
・外国人労働者の日本語教育の現状
・外国人労働者が直面しやすい課題
・解決するためのポイント
この記事では、外国人労働者に対する日本語教育の現状や直面しやすい課題、企業が行うべき指導ポイントを詳しく解説します。労働者のスムーズな職場適応を目指すための具体的な取り組みや安全教育の重要性にも触れ、採用後の環境整備に役立つ内容をお届けします。
日本における外国人労働者の現状と課題
2023年10月末時点で、日本の外国人労働者数は過去最高の204万8675人を記録し、初めて200万人を突破しました。コロナ禍からの回復が見られた2022年以降、増加傾向が続いており、今後もさらなる増加が予想されます。2007年の届け出制度義務化以降、特に2019年までは年間約20万人のペースで増加していました。

出典:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】(令和5年 10 月末時点)
外国人労働者の日本語教育の現状
外国人労働者の受け入れが進んでいる中、日本語教育の現状には多くの課題が残されています。
文化庁の調査によると、日本には外国人労働者が通える日本語教室のない「空白地域」が全国市区町村の46%を占めており、日本語教育を受けられない人が多くいます。さらに、日本語教師の約5割はボランティアであり、教育体制が十分整備されていないことがわかります。
項目 | データ・現状 |
---|---|
日本語教室が利用できない地域 | 全国1896市区町村のうち46%は日本語教室がない「空白地域」 |
日本語教師数 | 国内に39,241人(約5割が無償ボランティア) |
日本語教育機関数 | 国内に2,542施設(前年比252施設増) |
日本語教育推進法の現状 | 令和元年に施行されたが、環境整備は十分に進んでいない |
外国人労働者の教育で直面しやすい問題

言語の壁と文化・知識の違いによる誤解
外国人労働者を教育する際、最も大きな課題となるのが「言語の壁」です。日本語が十分に理解できないと、業務指示や説明が誤解されやすくなり、仕事の質や安全性に悪影響を及ぼします。また、日本特有の作業手順や専門用語、安全意識の徹底が求められる場面では、労働者の母国で通用していた知識や技術が適用できないことがあります。この結果、仕事に必要な知識やスキルに差が生じ、現場での事故やトラブルのリスクが高まる可能性があります。

職場ルールやマナーへの戸惑い
外国人労働者が日本で働く際、職場特有のルールやマナーへの適応が難しい場合があります。特に、時間厳守や敬語の使い方、上下関係の理解など、日本の職場文化は他国と大きく異なる部分が多く、これらを理解し実践するには時間がかかることがあります。こうした違いに適応できないと、職場で孤立したり、不安やストレスを抱える原因となります。
外国人労働者を教育しないことで起こるリスク
以下では、外国人労働者への適切な教育が行われないことで発生するリスクについて解説します。これらのリスクは、企業や労働者双方にとって大きな問題を引き起こす可能性があり、早期の対策が求められます。
モチベーション低下と生産性への影響
外国人労働者に対して十分な教育が行われない場合、業務への理解不足が原因で自信を失い、モチベーションが低下することがあります。特に、自分が期待に応えられていないと感じる状況が続くと、孤立感やストレスが増し、最終的には離職につながる可能性も高まります。さらに、教育不足は生産性にも影響を及ぼします。必要なスキルや知識が欠けていると、業務の進行が遅れたり、ミスが増加したりするため、企業全体の効率が低下します。
品質やサービスの低下
教育が不十分な場合、製造業やサービス業において、品質のばらつきやサービスの質の低下が目立つようになります。たとえば、製造業では、日本特有の高い品質基準や細かい作業手順を理解していないと、不良品の増加や仕上がりのばらつきが発生します。また、接客業では言語や文化の違いが原因で顧客ニーズを正しく理解できない場合があり、サービスの質が低下するリスクがあります。教育を通じて品質とサービスを安定させることは、顧客や企業の信頼を守るために欠かせません。
労働災害のリスク増加
安全教育が不十分な場合、労働災害が発生するリスクが高まります。工場や建設現場などの職場では、安全手順や設備の使い方を正しく理解しないまま作業を行うと、事故やケガが起きる可能性があります。特に、危険認識の差がある場合、労働者自身が危険を察知できないケースも見られます。このような状況では、労働者の安全が脅かされるだけでなく、企業が責任を問われることにもなります。安全教育を徹底し、危険を未然に防ぐ取り組みが必要です。
ニュース記事:技能実習生の労災発生割合は全体の1.7倍

外国人労働者の教育課題を解決する指導のポイント
外国人労働者の適切な指導や教育を怠ると、早期離職につながる可能性があります。調査では、外国籍人材の約28%が入社後1年以内に早期離職を経験し、53%がモチベーションの低下を感じたとされています。これらの課題を解消し、外国人労働者が即戦力として活躍できる環境を作るために重要な5つの指導ポイントを紹介します。
明確なコミュニケーションを心がける
外国人労働者を指導する際は、明確で簡潔なコミュニケーションを心がけることが重要です。あいまいな言葉を避け、具体的な表現で指示を伝える必要があります。例えば、「これはOK」「これはNG」といったはっきりとした表現を用いることや、「これ」や「あれ」といった指示語を多用しないことがコツです。また、ジェスチャーや図解を活用し、視覚的なサポートを加えることで、理解を深めやすくなります。
業務を通じて日本語力を磨く
外国人労働者の指導では、業務を通じて日本語能力を高める工夫が重要です。例えば、労働者に業務内容を振り返る時間を設け、自分の理解した内容や感じたことを日本語で話してもらうことは効果的です。また、簡単な作業報告書を書いてもらうことで、リーディングやライティングスキルの向上も図れます。一方通行の指導ではなく、双方向のやり取りを意識することで、自然な形で日本語能力が伸びる環境を提供できます。
定期的な日本語教育の実施
日本語能力を向上させるためには、定期的な日本語教育が欠かせません。日本語教育は、企業内で研修を行う方法と、日本語学校に通わせる方法があります。
企業内研修では、業務に直結する専門用語や日常会話を学ぶことができ、現場でのコミュニケーション向上に役立ちます。一方で、日本語学校では、日常生活やビジネスの場面で必要なスキルを幅広く学べるため、総合的な言語能力の向上が期待できます。どちらの方法でも、教育の成果が業務効率や職場のチームワーク向上につながります。
お互いの意見を大切にする
指導の際には、外国人労働者と日本人スタッフがお互いの価値観を尊重し合う姿勢を持つことが大切です。文化や慣習の違いが原因で誤解や衝突が起こることを防ぐためには、双方が相手の背景を理解し合う努力が必要です。
日本特有の「時間厳守」や「ホウ・レン・ソウ(報告・連絡・相談)」といった仕事の進め方を丁寧に教えることが効果的です。同時に、外国人労働者からのフィードバックを積極的に求めることで、文化の違いを学び、双方が歩み寄る姿勢を見せることが信頼関係の構築につながります。
母国語の作業マニュアルを整備する
外国人労働者が業務を効率的に理解できるよう、母国語の作業マニュアルの整備が重要です。ただし、単なる文章だけではなく、写真やイラストを多用し視覚的にわかりやすい内容にすることが求められます。また、動画マニュアルを活用することで、動作手順や細かいニュアンスも伝えやすくなり、理解度が向上します。

外国人労働者の教育で大切な3つの基本
外国人労働者が日本の職場に適応し、スムーズに業務を遂行するためには、基礎的な教育が欠かせません。特に重要なのは「日本語教育」「業務内容の教育」「安全衛生教育」の3つのポイントです。それぞれの具体的な内容や実施方法を詳しく解説します。
日本語教育
外国人労働者が職場で指示を正確に理解し、円滑にコミュニケーションを取るためには、日本語の能力が必要不可欠です。職場で使われる日本語は、日常会話とは異なり、業務特有の専門用語や作業手順が含まれるため、これを理解できないと業務の遂行が困難になります。指示を誤解すると業務効率が低下し、重大なミスや事故が発生する可能性があります。
- OJT(On the Job Training)
日常業務を通じて現場で日本語を学ぶ方法です。同僚や上司との会話で指示を受けたり報告する中で、日本語力を実践的に向上させます。 - OFF-JT(Off the Job Training)
職場外の研修や講座で日本語を体系的に学ぶ方法です。学校で文法や語彙を幅広く習得します。
業務内容の教育
外国人労働者が職場の流れを理解し、効率的に働けるようになるためには、業務内容を正確に教えることが不可欠です。特に日本の職場では、作業手順や品質基準が細かく定められている場合が多く、それを理解し実践するための指導が求められます。
- 正確な手順の理解:正確な業務手順の理解は効率化と品質安定に直結します。適切な教育がないと、不良品や品質のばらつきが生じるリスクがあります。
- 機械操作と安全対策:機械操作や危険物取り扱いでは、具体的な指導と最新情報の共有が重要です。新機械や手順変更時は徹底した教育が必要です。
安全衛生教育
安全衛生教育は、外国人労働者が安全に働くために欠かせない取り組みです。特に製造業や建設業では、作業内容に応じた具体的な安全対策が求められます。危険を察知する能力や対処法を身につけていないと、労働災害のリスクが高まります。また、定期的な復習により安全意識を維持し、新しい機械や作業内容の変更時には、その都度再教育を行うことが重要です。
まとめ
外国人労働者の教育は、企業と労働者の双方にとって重要な課題です。本記事では、日本語教育の現状や課題を明らかにし、安全教育や職場適応のための具体的な指導方法を提案しました。適切な教育を通じて、業務効率の向上や職場の信頼関係の構築を目指しましょう。企業が労働者のスキル向上と職場適応を支援することで、双方にとってより良い環境が生まれることを願っています。
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この記事の監修者

大学卒業後、経営コンサルティング会社に入社し、企業の経営支援に携わる。その後、dodaを運営するパーソルキャリアにて、様々な方の転職支援に従事。その経験を活かし、株式会社JINにて、人材事業を開始。