インドネシア人雇用のポイント:国民性・宗教・仕事観を徹底解説

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外国人雇用を本音で語る「リクアジの編集部」の上田です。本日のトピックはこちら!

・インドネシアの基本情報
・インドネシア人の仕事観について
・実際に日本で働く人の声

インドネシア人と一緒に働くことに不安を感じる方も多いかもしれませんが、実際、インドネシア人は親日的な人が多く、日本での就業者数は年々増加しています。令和5年10月時点では、インドネシア人の在留者は121,507人となり、前年より56%増加しています。インドネシア人の国民性や仕事に対する考え方を理解し、受け入れやすい環境を整えることが重要です。実際の声も交えながら、参考にしてみてください。

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インドネシアの基本情報

まずはインドネシアの基本情報をまとめました。日本にやってくるインドネシア人は日本について一生懸命勉強し、憧れや期待で胸をいっぱいにしています。以下は、インドネシアの基礎データを含めた表になります。

項目内容
国名と国旗正式名称:インドネシア共和国
国旗:赤と白の2色。赤は勇気、白は潔白を表し、「潔白の上に立つ勇気」という意味。
人口約2.70億人
平均年齢29歳
国土日本の約5倍の広さ。17,000以上の島々から構成される。約490種類の民族が暮らし、多民族国家である。人口世界第4位
公用語インドネシア語(583種の民族言語も使用)
平均給与日本円で約2万9,165円/月

首都移転計画と生産年齢人口の特徴

インドネシアは、現在ジャワ島のジャカルタを首都としています。しかし、一極集中による人口増加や交通渋滞、他地域との経済格差、地盤沈下や巨大地震のリスクなどの課題を抱えており、2045年までに首都をカリマンタン島のヌサンタラへ移転する計画があります。

また、インドネシアは若い人々が多い国としても知られています。人口の半分が30歳未満と言われ、生産年齢人口(15〜64歳)の総人口に対する割合は68%を超えています。この数は約1億9000万人に達しております。日本は今後さらに減少が続くと予測されており、対照的な状況となっています。

日本の生産年齢人口は約7400万人で、総人口の59%程度とされています。

宗教

インドネシアの宗教は、イスラム教約87%キリスト教約9.8%ヒンズー教1.6%という割合です。世界で最もモスリム(イスラム教徒)が多い国ですが、国教ではなく、憲法で信仰の自由が認められています。しかし、無宗教は認められていません。「建国5原則」では「イスラム教」「キリスト教プロテスタント」「キリスト教カトリック」「ヒンドゥー教」「仏教」「儒教」いずれかを信仰するよう定められており、外国人であっても宗教を国に登録する必要があります。

インドネシアの宗教は生活に密着しているため非常に重要です。例えば、イスラム教徒の婚姻や争い事などは宗教裁判所でイスラム教に則った判決が下されます。また、宗教によって通う学校も違います。生活習慣や食文化も、宗教による違いが顕著です。

インドネシア人の国民性

インドネシアの人々は明るくフレンドリーで、異文化への順応性が高いとされています。礼儀正しく、年長者への敬意を忘れず、謙虚で遠慮がちな一面もあり、日本文化に溶け込みやすい人も多いでしょう。また協調性が高く、自己主張は控えめで、集団行動や助け合いを好む傾向があります。一方で、時間にはルーズな面があり、30分程度の遅刻は日常茶飯事です。「ゴム時間(jam karet)」という言葉を用い、時間の柔軟さを文化として受け入れる姿勢が見られます。

ゴム時間とは?

インドネシアでは「時間はゴムのように伸び縮みする」という概念があり、電車が時刻通りに来い、友人が約束に遅れることがよくあります。このような時間の柔軟さをゴムの時間と呼びます。

インドネシア人との円滑な関係を築くために

インドネシア人には穏やかでスローペースな方が多く、日常の些細なことで焦ることが少ないのが特徴です。これは、常夏の気候が計画性や時間の捉え方に影響を与えているとも言われています。そのため、急かしたり厳しく叱ることは逆効果になりやすいです。

特に、怒られることに慣れていないため、人前で叱るのではなく、別室で1対1で話すことが重要です。その際、なぜ叱られたのかを根拠を持ってわかりやすく説明しましょう。穏やかな性格や文化的背景を理解し、適切に対応することで、より良い関係を築くことができます。

インドネシア人の仕事観

転職は当たり前

インドネシア人は転職を頻繁に行う傾向があります。会社への帰属意識が低く、不満があればすぐに辞めたり、より良い待遇の仕事を見つけると迷わず転職します。この背景には、家族やコミュニティを優先する価値観があり、日本のような「仕事に没頭する文化」とは大きく異なります。サービス残業を求めることも難しいと考えられます。

インドネシアでは経済の不安定さから、公務員など安定職が人気で、給与や福利厚生を重視する傾向があります。

家族やコミュニティを優先する価値観

インドネシア人の多くは、仕事よりも家族やコミュニティとのつながりを優先します。そのため、長時間労働や家庭を犠牲にする働き方には否定的な傾向があります。仕事は「自己実現」や「キャリアアップ」のためではなく、あくまで生活の糧を得る手段と捉えている人が多いようです。この価値観を理解することで、インドネシア人従業員との関係をより良好に築くことができます。

データで見る親日国インドネシア

インドネシアは、データからも日本への強い関心が伺える国です。日本政府観光局の調査によると、訪日インドネシア人観光客は2014年の約12万人から2019年には約34万人と約2.8倍に増加しました。

さらに、インドネシアの日本語学習者数は世界第2位の約71万人を誇り、2020年の調査では、日本は「学びたい外国語」として英語、韓国語に次いで3位にランクインしました。

日本語学習者数

順位国・地域名人数
1中華人民共和国(中国)1,004,625人
2インドネシア709,479人
3大韓民国(韓国)531,511人
4オーストラリア405,175人
5タイ184,962人
6ベトナム174,521人
7台湾170,159人
8アメリカ合衆国(米国)166,905人

日本とインドネシアの関係

日本はインドネシアにとって、最大の援助国です。日本のODA(政府開発援助)は戦後賠償の一環として1954年に始まりましたが、最初に援助をした国のひとつがインドネシアです。それ以来現在まで、日本はインドネシアの主要なインフラ整備や貧困削減、人材育成などの事業を行っており、その額は2016年までに5.5兆円(約495億ドル)に達しました。日本の援助は、インドネシアの人々にもよく知られています。

インドネシア人と一緒に働くときの注意点

日本に対して良いイメージを持つ人が多いインドネシアの人々ですが、一緒に働くときにはどのような点に注意するべきでしょうか。

宗教に対する配慮

インドネシアでは宗教が生活と密接に結びついており、受け入れ側は宗教への配慮が必要です。宗教によっては食べられないものがあり、それはわがままや好き嫌いではありません。日本人にとって犬や猫の肉、あるいは人肉を食べることがタブーであるのと同じ感覚です。だまして食べさせるような行為は信頼を損ねます。また、イスラム教やヒンドゥー教についての理解が浅い場合、受け入れ時に注意点を確認することが大切です。

イスラム教

イスラム教にはいくつかの宗派があり、代表的なものに「スンニ(スンナ)派」「シーア派」があります。スンニ派が世界の9割を占めていて、インドネシアもスンニ派に属しています。

一番大切なのは食事です。イスラム教の聖典コーランに、食べていいものと悪いものが記されています。食べてよいものは「ハラール」、禁止されているものは「ハラーム」と呼び厳格に区別されているのです。

禁止されている食べ物で代表的なのが豚肉。豚は忌まわしいものと考えられ、例えイラストであっても嫌悪感を示すイスラム教徒も多いので注意しましょう。豚肉と一緒に料理されたものだけでなく、豚肉エキスの入ったお菓子豚肉を使った調理器具も禁止しているイスラム教徒もいます。アルコールや、うろこの無い魚(タコなど)も口にしてはいけません。

また、1日5回のお祈りや、女性が髪を隠す服装をしていることに理解を示すことも重要です。お祈りが出来るスペースを設けたり、身体を水で清める時間を作ると喜ばれるでしょう。

イスラム教徒は毎年1カ月間、断食を行います。日の出から日の入りまで、水を飲むことも許されません。悪口や喧嘩、嘘なども禁止です。全ての欲望を絶ち、精神を鍛えます。飢えた人々に思いを馳せ、食事に感謝する意味もあります。

これらすべての戒律を守るのは、日本の職場環境では難しいでしょう。受け入れ側はどこまで対応できるのか考え、困難な場合は来日前に知らせること。状況を分かったうえで来日してもらうようにしましょう。

インドネシアなどは比較的戒律が緩いとされますが、個人差が大きいため、相手が厳格に守っているかは観察や会話で確認しましょう。

ヒンドゥー教

インドネシアのバリ島はヒンドゥー教の島です。ヒンドゥー教は多神教の宗教で、日本の神道に少し似ている感じもあります。

ヒンドゥー教徒は牛肉を食べません。牛は聖なる生き物だからです。牛のエキスを使ったブイヨンやバター、ゼラチンも食べることができません。ベジタリアンが多いのも特徴で、アルコールも避けるべきとされています。また、野菜であっても玉ねぎやニラ、ラッキョウなど臭いの強い野菜も食べません。

左手は不浄の手とされているので注意が必要。左手で物を渡したり、相手に触れたりしてはいけません。身分や職業によるカースト制も根強く残っています。輪廻転生を信じているという特徴もあります。違う身分の人と一緒に食卓を囲まない人も多く、違う階層間で食器を共用するのもNGです。

バリ島のヒンドゥー教は地元の文化と混ざり、インドのヒンドゥー教ほど厳しくなく、柔軟だと言われています。

プライドに注意

いつもニコニコして穏やかな印象を受けるインドネシア人ですが、愛国心や自尊心が強いので注意してください。国や宗教をけなさないよう、敬意を持ちましょう。仕事の失敗を人がいる前で注意せず、二人きりになって穏やかに伝えるように。叱るよりも褒めて伸ばすほうがインドネシアの国民性にマッチするようです。 

日本で働くインドネシア人の声

日本で働くインドネシア人たちにインタビューし、日本に来た理由や実際の働き方、日々の暮らしについての生の声を集めました。採用をご検討中の企業様にとって、インドネシア人労働者の考えや課題を理解する一助になれば幸いです。

日本に来た理由

インドネシア人の多くは「日本への憧れ」や「日本語の活用」、「技術力の習得」を目的に来日しています。中には「アニメが好き」「日本は安全で親が安心する」といった理由もあり、日本での生活や仕事に対する前向きな姿勢がうかがえます。

実際に働いて、困っていること

コミュニケーションの課題:日本語力や敬語、方言への戸惑い、「顔と心が違う」と感じる日本人のコミュニケーションスタイルに不安を抱く声があります。

宗教に関する課題:祈りの時間やハラルフードの不足、ヒジャブへの偏見など、宗教的な配慮が不足していると感じる場面があるようです。

生活習慣の違い:温泉文化や寒さ、物価の高さへの驚きなど、日本特有の生活環境に適応するのが難しいとの声も聞かれます。

日本に来て嬉しかったこと

「雪を見られた」「日本人の優しさを感じた」「新しい友達やスキルを得た」といった感動や喜びの声が多く、日本での経験を前向きに捉えています。また、「家族や友人に羨ましがられる」「日本での生活を誇りに思う」という声もあり、日本への好意が強く感じられます。

よくある質問

インドネシアにも年始のような長期休暇はありますか?

はい。毎年イスラム教のラマダン(断食月)終了後に迎える「レバラン(Eid al-Fitr)」が最も大きな祝祭となり、国民の祝日が2日設定されます。さらに企業によってはその前後に有給奨励日(Cuti Bersama)を設けるため、1~2週間の長期休暇になるケースが多いです。

・毎年約10日前後早まるため、2026年は3月20日頃の見込み
2025年は3月31日・4月1日頃が祝日に指定予定

レバランが企業活動や採用・人事に与える影響は何ですか?

人材確保・シフト調整
レバラン前後は社員の帰省(Mudik)や長期休暇取得が集中しがちです。生産性や顧客対応に影響が出るため、早めのシフト管理が重要です。

採用スケジュールの調整
新卒採用や中途採用の面接・入社時期などは、レバラン休暇を避ける工夫が必要です。連絡が取りにくくなる期間のため、スケジュールを見越した計画が求められます。

多様な宗教行事への理解
インドネシアではイスラム教に限らず、キリスト教・ヒンドゥー教・仏教など多様な宗教行事が祝日となります。宗教休暇の習慣を尊重し、柔軟に対応することで従業員のモチベーション向上にもつながります。

まとめ

インドネシア人労働者の増加が予想される中、日本では働き手不足を補う重要な存在となっています。宗教や価値観は異なりますが、謙虚さや和を重んじる精神など、日本人との共通点も見られます。一方で、特に来日直後は日本語能力への不安からコミュニケーションに課題を感じるケースが多いようです。職場環境を整え、日本語に不慣れな人にも配慮することが重要です。互いを理解し合い、インドネシア人が日本で長く活躍できる協力関係を築きましょう。

【参考資料】
厚生労働省:「外国人雇用状況」の届出状況【概要版】(令和5年 10 月末時点)
国際協力銀行:インドネシアの投資環境 第一章概観(国土、民族、社会、歴史など)
外務省:最近のインドネシア情勢と日・インドネシア関係
インドネシア政府観光局:インドネシアについて
外務省:ASEAN諸国における対日世論調査
外務省:インドネシア共和国(Republic of Indonesia)基礎データ
外務省:インドネシアにおける日本のODA援助の歴史

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この記事の監修者

プロフィール画像
キャリアアドバイザー
秦 秀斗

大学卒業後、経営コンサルティング会社に入社し、企業の経営支援に携わる。その後、dodaを運営するパーソルキャリアにて、様々な方の転職支援に従事。その経験を活かし、株式会社JINにて、人材事業を開始。

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