
外国人雇用を本音で語る「リクアジの編集部」の上田です。本日のトピックはこちら!
・永住権取得に必要な条件と具体的な要件
・申請手続きの流れと必要書類
・企業が永住権を持つ外国人を採用する際の注意点
日本での永住権取得は、長期的に安定した生活を送りたい外国人にとって大きな目標です。しかし、申請には厳格な条件があり、どのような基準を満たせばよいのか不安に感じる方も多いでしょう。この記事では、永住権申請の具体的な条件や手続きの流れをわかりやすく解説します。
永住権とは?
永住権とは、外国人が日本に永住できる権利を意味します。これは、在留期間に制限がなく、日本で自由に生活できる「永住者」の在留資格を取得することによって得られます。永住権の申請は、出入国管理及び難民認定法(入管法)第22条に基づき、審査を通過することで法務大臣から許可されます。
- 在留期間に制限がない
- 就労に制限がない(職種や業種に関係なく働ける)
ただし、永住権を取得するには一定の条件を満たす必要があります。具体的な条件は後ほど詳しく解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
永住権の取得と「帰化」の違い
永住権の取得と「帰化」には大きな違いがあります。永住権は、外国人が日本に制限なく住み続ける権利を得ることです。取得後も元の国籍を保持しながら日本に永住できます。一方、「帰化」とは、外国人が日本国籍を取得することです。帰化すると日本国民となり、すべての権利と義務が日本人と同じになります。帰化には、永住権よりも厳しい条件や手続きが必要であり、元の国籍を放棄することが求められます。
永住権取得のための3つの条件
在留資格「永住者」を取得するためには、以下の3つの条件をクリアする必要があります。
- 良好な生活歴を持っていること
- 生活に困らない収入があること
- 永住が日本国の利益になると認められること
良好な生活歴を持っていること
永住権を申請する外国人は、過去に法的な問題を起こしていないことが求められます。具体的には、犯罪行為や重大な交通違反がないことが第一条件です。軽微な違反(例えば駐車違反など)でも、繰り返し行われている場合や、悪質な違反があれば審査に影響を与える可能性があります。出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン」では、「法律を遵守し、日常生活において社会的に非難されることのない生活」を送っていることが求められます。
生活に困らない収入があること
申請者が経済的に独立して生計を立てていることが必要です。この条件では、現在および将来にわたって安定した生活が送れるかどうかが重要なポイントです。
- 資産や職業、年収の安定性:目安は、年収が300万円前後で、扶養家族1人当たり70万円程度の追加収入が必要とされています。ただし、年収が少なくても永住権が許可された例もあります。
- 将来的な安定性:収入の安定性だけでなく、将来にわたる安定した生活が続けられるかも審査されます。例えば、職業や技術が今後も需要があり、安定した収入が見込まれることが求められます。
この要件は、外国人が日本で自立して生活し、税金や社会保険料の負担をする立場にあるかを評価する基準となります。
永住が日本国の利益になると認められること
最も複雑な要件である「国益適合要件」は、申請者が日本にとって利益となる存在であるかどうかを判断するものです。この要件には、以下の4つの具体的な条件が含まれます。
- 日本に10年以上在留していること:加えて就労資格または居住資格を持って、5年以上の滞在
- 罰金刑や懲役刑を受けていないこと:特に、税金や保険料の滞納がないことが重要
- 適切な在留資格を持っていること
- 公衆衛生面で問題がないこと:例重大な健康問題や伝染病を持っていないなど
永住権の取得条件には特例がある
特例として、日本人・永住者・特別永住者の配偶者または子どもである場合、素行が善良であることや独立して生計を立てるための資産や技能があることといった要件を満たさなくても良いとされています。詳しく解説します。
10年間の在留がなくても永住権を申請できる場合
特定の条件を満たす場合は、滞在期間が短くても永住許可を申請することができます。主な例は以下の通りです。
- 日本人・永住者・特別永住者の配偶者で、婚姻生活を3年以上、かつ1年以上日本に滞在している。
- 日本人・永住者・特別永住者の子どもで、1年以上日本に滞在している。
- 「定住者」の在留資格を持ち、5年以上日本に滞在している。
- 外交、社会、経済、文化などで日本に貢献していると認められ、5年以上日本に滞在している。
企業の中でよく見られるパターンとしては、日本人配偶者を持つ外国人のケースが挙げられます。また、高度人材ポイント制の優遇措置により、在留期間が10年に満たなくても永住権を申請できる場合があります。高度人材ポイント制では、学歴や職歴、年収、年齢などの条件に基づいてポイントが付与され、一定のポイントを満たすことで、短期間で永住権の申請が可能になります。
参考:出入国在留管理庁|永住許可に関するガイドライン(令和5年12月1日改訂)
特別永住者:特例により永住権が取得可能
特別永住者とは、「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法」に基づく在留資格を持つ外国人のことです。特別永住者は、主に戦後に台湾や朝鮮半島が日本の領土でなくなったことに伴い、日本に住んでいた在日台湾人や韓国・朝鮮人が該当します。これらの人々は日本国籍を離れましたが、すでに日本で生活基盤が整っていたことが考慮され、本人とその子孫には特別永住が認められました。
一方、一般の永住者は在留カードを持ちますが、特別永住者は在留カードを持ちません。代わりに、「特別永住者証明書」が交付され、これが彼らの法的な地位を証明するものとなります。

永住権取得の申請方法
永住権申請は、主に以下の2パターンで行われます。原則として、申請は申請者本人が行います。
現在の在留資格から永住者の在留資格へ変更する場合
永住権を申請するには、現在の在留資格の「在留期間満了日」以前に申請を行う必要があります。もし、申請中に在留期間が切れてしまう場合は、別途「在留期間更新許可申請」を行わなければなりません。この申請は、在留期間満了日までに行う必要があります。
出生等によって永住者の在留資格を取得する場合
出生やその他の理由によって永住者の在留資格を取得したい場合、事由発生後30日以内に申請を行う必要があります。この場合、手数料はかかりません。
申請先
永住許可申請は以下の場所で行うことができます。
申請先 | 詳細 |
---|---|
地方出入国在留管理官署 | 申請者が住んでいる地域を管轄する地方出入国在留管理官署 |
外国人在留総合インフォメーションセンター | 外国人在留に関する情報を提供するセンター |
永住権申請に必要な書類
永住権申請を行うためには、以下の書類が必要です。変更前の在留資格によって必要な書類は異なるため、詳細は法務省のホームページで確認してください。
必要書類 | 詳細 |
---|---|
永住許可申請書 | 申請者の基本情報を記載する書類 |
写真(1枚) | 写真の裏に氏名を記入し、申請書に添付(16歳未満の方は不要) |
立証資料 | 元の在留資格に基づく証明書類 |
在留カード | 在留カードまたは外国人登録証明書 |
資格外活動許可書 | 資格外活動許可を受けている場合のみ |
旅券または在留資格証明書 | 旅券や在留資格証明書 |
理由書 | 旅券や在留資格証明書を提出できない場合、その理由を記載した書類 |
身分証明書等 | 申請取次者が提出する場合 |
永住権を持つ外国人を採用する際の注意点
企業が永住権(在留資格「永住者」)を持つ外国人を採用・雇用する場合、以下の点に注意することが重要です。
在留カードの更新が必要
永住権を取得すると、在留期間の制限はなくなりますが、在留カードの更新は必要です。永住者の場合、在留資格の更新手続きはありませんが、在留カードの有効期限が切れると、身分証明書として使用できなくなります。また、「有効期限内の在留カードを常に携帯する」義務にも違反してしまうため、定期的な更新手続きを忘れないようにしましょう。
永住権は取り消される可能性がある
永住許可申請時に条件をクリアしていても、その後に犯罪行為を犯すなどすると、永住権が取り消されることがあります。特に、以下のような場合に永住権が取り消されることがあります。
- 故意に税金や社会保険料を未納・滞納した場合
- 窃盗など、通常では資格取り消しに至らない軽犯罪を繰り返した場合
永住権の取り消しは基本的に外国人本人の責任ですが、企業としても採用する外国人に対して注意喚起を行うことが大切です。
特別永住者の通名使用に注意
特別永住者は、通名を使用していることが多いため、注意が必要です。特別永住者は在留カードを持たず、外国人雇用状況の届出も必要ないため、基本的には日本人と同じ入社手続きで問題ありません。しかし、通名と本名が混在することがあり、これが原因で保険や年金の支払いに不利益が生じる可能性があります。企業としては、特別永住者であることを確認し、通名の使用についても適切に管理することが重要です。
日本の永住権の申請で不許可になった事例
社会保険未加入で不許可
【経営管理ビザからの永住申請】 10年間日本に在住し、そのうち5年以上は就労しているが、社長1人で運営している会社で社会保険に未加入だったため、永住権の申請が不許可になった事例です。
【ポイント】 外国人経営者は、たとえ自社の社員がいなくても、自分自身が社会保険に加入する義務があります。社会保険への加入は、永住権申請において重要な要素となるため、経営者も適切に手続きを行うことが求められます。
転職を繰り返し不許可
【就労ビザからの永住申請】 10年間日本に在住し、そのうち6年を就労ビザで働いている場合、永住権取得の条件は満たしていると考えられます。しかし、申請直近の1年以内に3回転職をしたため、安定性がないと判断され、永住権が不許可になったケースです。
【ポイント】 永住権申請時に、直近1年以内に転職歴がある場合、安定性が不足していると見なされ、申請が不許可になるリスクが高くなります。転職回数が多いと、経済的安定が見込めないと評価されることがあります。
参照:出入国管理局
まとめ
永住権の取得には複数の条件があり、審査は非常に慎重に行われます。特に、経済的安定性や過去の生活歴が重要な要素となります。もし永住権の申請に関して疑問や不安がある場合、専門家に相談することをお勧めします。必要な書類や手続きについても、詳細な情報を確認し、スムーズに申請が進むようサポートいたします。ご不明点があれば、お気軽にお問い合わせください。
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この記事の監修者

大学卒業後、経営コンサルティング会社に入社し、企業の経営支援に携わる。その後、dodaを運営するパーソルキャリアにて、様々な方の転職支援に従事。その経験を活かし、株式会社JINにて、人材事業を開始。