
外国人雇用を本音で語る「リクアジの編集部」の上田です。本日のトピックはこちら!
・ビルクリーニング業界の現状と課題を把握
・特定技能「ビルクリーニング」の制度や取得方法
・外国人材を採用する際の注意点
ビルクリーニング業界の深刻な人手不足を解決するには、外国人材の活用が鍵となります。特定技能「ビルクリーニング」の取得方法や採用時のポイント、さらに具体的な支援策をご存じですか?本記事では、企業が知っておくべき重要な情報を分かりやすく解説しています。
ビルクリーニング業界の現状と課題
近年、ビルクリーニング業界では人手不足が深刻化しています。その原因には、少子高齢化による働き手の減少や、女性の社会進出による働き方の多様化、そして業界特有の厳しい労働環境が挙げられます。
ビル清掃員の有効求人倍率は2.95倍と非常に高く、転職市場全体の平均有効求人倍率と比較しても大幅に高い数字です。さらに、清掃が必要な建物の数も増加しており、人手不足が一層深刻化している状況です。
【有効求人倍率】

出典:厚生労働省「ビルクリーニング分野について」より「リクアジ」が作成
ビルクリーニング分野の特定技能外国人数
特定技能制度におけるビルクリーニング分野の外国人受け入れ目標は、制度開始から5年間で20,000人、2024年4月からの5年間で37,000人とされています。しかし、最新の2024年6月末時点では、実際に働いている特定技能外国人は4,635名にとどまっており、さらなる受け入れ拡大が期待されています。

出入国在留管理庁|特定技能在留外国人の公表をもとに「リクアジ」が作成
特定技能「ビルクリーニング」とは?
「特定技能」は、人手不足解消を目的に設けられた在留資格で、一定の専門性や技能を持つ外国人を受け入れています。2019年4月に開始され、全14分野で多くの外国人材が働いています。ビルクリーニング分野も対象で、特定技能1号を取得した外国人は、最長5年間、条件を満たしたビルメンテナンス会社で働けます。ビルクリーニングとは、事務所や店舗など多くの人が利用する建物の清掃業務を指し、特定技能では日常清掃や定期清掃に加え、ホテル客室のベッドメイク作業も可能です。

特定技能「ビルクリーニング」の1号と2号の違い
特定技能には1号と2号の2種類があり、1号は一定の技能を持つ即戦力の労働者向けで、2号はさらに高い技能や現場管理経験を求められる資格です。ビルクリーニング分野では、2号取得のために複数の作業員を指導しつつ、2年以上の現場管理経験が必要です。2号を取得すると在留期間の上限がなくなり、家族の帯同も可能になるため、外国人労働者にとって非常に魅力的な資格です。
特定技能「ビルクリーニング」で任せられる仕事
特定技能「ビルクリーニング」では、建築物の内部を清掃する際、汚れの種類や場所の用途、部位の特性に応じて適切な方法や洗剤、用具を選び、自ら判断して業務を遂行します。外国人材が従事できる業務は、技能試験で確認されたスキルを基に、多くの人が利用する建築物(住宅を除く)の内部環境を清潔に保つことが目的です。具体例は以下の表をご覧ください。

特定技能「ビルクリーニング」でベッドメイク業務が可能に
「ビルクリーニング」と聞くと清掃だけを思い浮かべる方もいるかもしれませんが、この分野ではホテルなどでのベッドメイク業務も含まれます。人材不足が深刻な宿泊業界では、「宿泊業」が特定技能制度の14業種の一つとして認められていますが、業務内容によって適用される分野が異なります。フロント業務やレストラン接客は特定技能「宿泊」に該当する一方、ベッドメイクが主な業務の場合は特定技能「ビルクリーニング」の分野に含まれます。

特定技能1号「ビルクリーニング」を取得する方法
それでは、ビルクリーニング分野の特定技能1号はどのように取得すればよいのでしょうか?ここでは、取得条件と方法を分かりやすく解説します。
ビルクリーニング分野に限らず、特定技能1号の取得方法は以下の2つのパターンに分けられます。
① 試験に合格する
- 特定技能1号評価試験(分野ごとの技能試験)
- 日本語能力試験(一定以上の日本語スキルが必要)
② 技能実習を修了する
- 技能実習2号を良好な成績で修了していること。
- 技能実習3号を修了している場合も対象。
【ステップ①】ビルクリーニング特定技能試験に合格する
ビルクリーニング分野で特定技能1号を取得するには、「ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験」と「日本語能力試験」の両方に合格する必要があります。ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験は、受験者の技能水準を評価する試験です。この試験の水準は「第2号技能実習修了相当」と定められており、場所や汚れの種類に応じて作業手順に基づき、適切な清掃を行えるレベルが求められます。
受験資格は、試験日時点で17歳以上であること、国内試験の場合は在留資格を有していること(「短期滞在」も含む)が条件です。試験内容は「判断試験」と「作業試験」の2つで構成され、これらの結果によって合否が判定されます。
試験名:ビルクリーニング分野特定技能業評価試験
実施:公益社団法人 全国ビルメンテナンス協会
実施国:日本、ミャンマー、フィリピン、インドネシア、タイ、スリランカ、カンボジア
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判断試験
試験時間は20分
作業試験
使用資器材は、試験会場に用意されている物を使う
【ステップ②】日本語試験に合格する
日本語能力試験(JLPT)は、年間100万人以上が受験する世界最大規模の日本語試験で、日本語のコミュニケーション能力を5段階(N1~N5)で評価します。特定技能取得にはN4(基本的な日本語理解)が必要です。一方、国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)は、就労目的の外国人向けで、日本語能力を6段階(A1~C2)で評価し、特定技能取得にはA2(基礎的な会話能力)が求められます。
【パターン②】技能実習2号からの移行
特定技能の取得方法には、技能実習2号から移行するパターンもあります。技能実習2号を良好に修了した外国人は、特定技能評価試験と日本語試験を受けることなく、特定技能に移行することが可能です。
ただし、ビルクリーニング以外の分野で技能実習2号を修了した場合は試験免除の対象外となり、特定技能評価試験を改めて受験する必要があります。


外国人材を採用する企業が満たすべき条件と注意点
外国人労働者を採用する企業は、無条件で受け入れることはできません。特定技能「ビルクリーニング」分野で外国人を雇用する場合も同様で、企業には一定の条件を満たす義務があります。以下で、その条件について詳しく説明します。
特定技能協議会への加入
特定技能外国人を受け入れる企業は、受け入れから4ヶ月以内に「ビルクリーニング分野特定技能協議会」に加入する必要があります。この協議会は、制度の適正な運用と関係機関の連携強化を目的に設置されています。加入後、協議会からの調査(賃金台帳の確認やヒアリング)や協力要請に対応する義務があります。協議会に加盟していない場合、特定技能外国人の受け入れが停止される可能性があるため、必ず手続きを行ってください。

「建築物清掃業」または「建築物環境衛生総合管理業」の登録が必要
ビルクリーニング分野で特定技能外国人を受け入れられるのは、建築物衛生法に基づく「建築物清掃業(1号登録)」または「建築物環境衛生総合管理業(8号登録)」の登録を受けている事業所です。特定技能の在留資格を申請する際には、いずれかの登録証明書を提出する必要があります。
登録を受けていない場合は、事前に必要な登録手続きを行いましょう。ただし、登録には要件があるため、事前に確認しておくことが重要です。また、既に登録済みの場合も、有効期限が切れていないかを必ず確認してください。
支援体制の準備
特定技能「ビルクリーニング」の外国人材を受け入れるには、事前ガイダンス、日本語学習の支援、住宅の確保、相談・苦情対応などの支援体制を整える必要があります。この支援体制は、自社で構築するか、または「登録支援機関」に委託する方法があります。
自社で支援体制を構築する場合、過去2年間に外国人材の受け入れ実績が求められます。また、外国人材との円滑なコミュニケーションを図るため、通訳を雇う場合もあります。そのため、多くの企業が支援内容の一部またはすべてを登録支援機関に委託する方法を選んでいます。

採用時の注意点
特定技能ビルクリーニング分野で外国人材を採用する際には、いくつかの注意点があります。特定技能の取得には、試験合格または技能実習2号の修了が必要ですが、以下に該当する場合、在留資格申請が不許可となる可能性があります。採用時には必ず確認してください。
- 住民税や国民健康保険料を滞納している。
- 留学中に週28時間を超えてアルバイトしていた。
- 留学中に学校を退学していた、または出席状況が悪かった。
まとめ
ビルクリーニング業界では、少子高齢化や労働環境の課題から深刻な人手不足が続いています。その解決策の一つとして特定技能制度が注目されています。本記事では、特定技能「ビルクリーニング」の取得方法、企業が満たすべき条件、支援体制の準備や採用時の注意点について詳しく解説しました。効果的な人材活用と、持続可能な事業運営の実現を目指すための一助としてご活用ください。
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「リクアジ」では、ビルクリーニング業界に特化した外国人材の採用支援を行っています。特定技能「ビルクリーニング」に関するご相談や疑問に、経験豊富なスタッフが無料でお答えします。清掃業務全般や支援体制の構築など、貴社の課題に合わせた最適な解決策をご提案いたします。お気軽にお問い合わせフォームからご相談ください。
この記事の監修者

大学卒業後、経営コンサルティング会社に入社し、企業の経営支援に携わる。その後、dodaを運営するパーソルキャリアにて、様々な方の転職支援に従事。その経験を活かし、株式会社JINにて、人材事業を開始。