
外国人雇用を本音で語る「リクアジの編集部」の上田です。本日のトピックはこちら!
・特定技能「自動車整備」の仕組みと背景
・受け入れ手続きや必要な条件
・外国人材活用のメリットと注意点
日本の自動車整備業界では、深刻な人材不足が問題となっています。その解決策として注目されるのが「特定技能 自動車整備」。実際にどんな業務が可能で、どのような手続きが必要なのか、気になるポイントをわかりやすく解説します。外国人材を活用した新たな可能性に迫りつつ、企業が知っておくべき注意点も詳しくご紹介します!
特定技能「自動車整備」とは?
特定技能「自動車整備」とは、自動車整備業界の人手不足を解消するために創設された在留資格です。この制度では、日常点検整備や定期点検整備、分解整備などの作業を行える一定の技能水準を持つ外国人材が受け入れ可能です。2019年4月に制度が開始され、技能試験や日本語試験に合格する、または技能実習2号を修了することで資格を取得できます。

「自動車整備分野」ができた背景
日本では自動車整備士の人数が年々減少しています。平成24年度には約34.6万人いた整備士が、令和3年度には約33.4万人に減少し、この10年間で約1.2万人減っています。また、令和3年から令和4年の1年間でも2,638人が減少しました。
一方で、日本の自動車保有数は約8,000万台前後で安定しており、依然として高い需要があります。さらに、ハイブリッド車や電気自動車が普及し、電子制御装置の点検や整備に関する専門知識が求められるようになっています。これにより、人材不足に加え、整備士一人あたりの負担が増加し、より高度なスキルが必要とされる時代となっています。

参考:国土交通省の資料を元に「リクアジ」が作成
特定技能「自動車整備」の現在の状況
特定技能「自動車整備」分野では、2023年12月末時点で2,519人の外国人材が受け入れられています。この人数は2021年9月から急増しており、特に2022年からの約1年半で倍増しました。国籍別ではベトナムが1,165人で最多、次いでフィリピンが815人となっています。新型コロナウイルスの影響で一時増加が鈍化したものの、現在も受け入れは増加傾向にあり、今後のさらなる拡大が期待されています。

参考:出入国在留管理庁を元に「リクアジ」が作成
特定技能「自動車整備」で可能な業務
特定技能「自動車整備」分野で外国人が従事できる業務は、自動車の安全と機能を維持するための整備作業が中心です。
- 日常点検整備
- 定期点検整備
- 分解整備
日常点検整備
日常点検整備は、車両を安全に使用するための基本的な点検作業です。具体的には、ブレーキやハンドルの動作確認、タイヤの空気圧や摩耗状態のチェック、ライトやウィンカーなどの灯火類の作動確認が含まれます。また、エンジンオイルや冷却水、バッテリー液の量も確認し、必要に応じて補充します。
定期点検整備
定期点検整備は、法令に基づき一定の期間や走行距離ごとに実施する点検作業です。主に、エンジンやブレーキ、排気系統、ステアリング装置など、車両全体の動作確認や部品の摩耗・損傷のチェックを行います。また、部品の交換が必要な場合は、事前に顧客と相談して実施します。
分解整備
分解整備は、車両の部品を分解して行う詳細な整備作業です。具体的には、エンジンやトランスミッション、ブレーキシステムなどの内部構造を点検・修理し、必要に応じて部品の交換や調整を行います。特に、最近ではハイブリッド車や電気自動車の整備も含まれるため、電子制御技術の理解が求められます。
特定技能「自動車整備」での関連業務とは?
関連業務として、自動車整備や修理に必要な機材や部品の準備、整備後の清掃や後処理作業などが含まれます。さらに、自動車整備工場だけでなく、カー用品店や整備ピットを併設するガソリンスタンドなどでも、特定技能の外国人材を採用することが可能です。
- 整備内容の説明や関連部品の販売
- 自動車の板金塗装や下回りの塗装作業
- 洗車作業
- 車内清掃作業
- その他、整備に付随するサポート業務
特定技能「自動車整備」を取得する方法
特定技能「自動車整備」を取得するには、指定された試験に合格する、または技能実習2号を良好に修了することが必要です。これに加え、日本語能力試験の合格も求められます。それぞれの要件について詳しく解説します。
【ステップ①】特定技能評価試験に合格する
特定技能「自動車整備」を取得するためには、自動車整備分野の特定技能評価試験に合格する必要があります。この試験は学科試験と実技試験に分かれており、どちらにも合格する必要があります。
- 学科試験
試験範囲には、自動車の基本構造、各部品の役割、安全基準、法律に関する内容が含まれます。 - 実技試験
実技試験では、工具の使用方法や部品の分解・組み立て作業が課されます。車両の基本点検や異常箇所の特定といった実務的な内容が含まれます。
自動車整備分野特定技能評価試験は、学科が60分30問、実技が20分で3課題9問出題されます。受験資格は17歳以上(インドネシア国籍は18歳以上)で日本国籍を持たないこと。合格基準は学科65%以上、実技60%以上。合格証明書は雇用契約後に交付され、手数料16,000円は受入れ企業が負担します。
申し込み:自動車整備分野特定技能評価試験
【ステップ②】日本語試験に合格する
特定技能「自動車整備」を取得するためには、日本語能力試験(JLPT)のN4レベル以上に合格することが求められます。N4は「基本的な日本語を理解できるレベル」で、日常生活や職場での基本的な会話や簡単な文章の読解ができることを示します。もしくは国際交流基金日本語基礎テストに合格する必要があります。
技能実習2号から特定技能「自動車整備」へ移行する
特定技能「自動車整備」を取得するもう一つの方法は、自動車整備分野の技能実習2号から特定技能1号へ移行することです。
技能実習2号は、外国人が日本で自動車整備に関する専門的な技術や知識を学び、それを母国に持ち帰ることを目的とした制度です。この制度では作業範囲が細かく規定されており、実習生は一定期間日本で実務を経験した後、必ず母国に帰国する必要があります。しかし、「特定技能」制度の導入により、技能実習から特定技能への移行が可能となり、日本で自動車整備に従事し続けることができるようになりました。

特定技能「自動車整備」の外国人材受け入れの条件
特定技能「自動車整備」の外国人材を受け入れる企業には、以下のような要件が求められます。この要件を満たすことで、外国人材が安心して働ける環境を提供し、適切に管理することができます。
支援体制の準備
特定技能外国人を受け入れる企業には、事前ガイダンス、生活オリエンテーション、公的手続きの支援、日本語学習の機会提供などの支援体制を整える義務もあります。これらの支援業務は、自社で行うか、登録支援機関に委託することが可能です。登録支援機関を活用することで、効率的に支援体制を構築できます。ただし、過去に法律違反や不適切な管理があった企業は受け入れが認められません。

その他条件
労働条件が不透明な場合や過去に労働基準法違反があった企業は、受け入れが認められません。また、外国人材が日本で安心して生活できるよう、企業はサポート体制を整えておくことが求められます。
条件 | 詳細 |
---|---|
社会保険への加入 | 健康保険、厚生年金保険、雇用保険などの社会保険に必ず加入していることが必要です。 |
安定した経営基盤 | 経営状態が良好で、継続的に外国人を雇用できる見込みがあることが求められます。 |
労働条件の明示 | 外国人に提示する労働契約書には、給与、勤務時間、休日などが明確に記載されている必要があります。 |
過去の不適切な事例の有無 | 技能実習や外国人雇用において、法律違反や不適切な管理がないことが条件です。 |

地方運輸局長の認証が必要
自動車整備分野で特定技能外国人を受け入れるには、地方運輸局長の認証を取得することが義務付けられています。管轄の地方運輸局へ申請書を提出し、施設の広さ、作業機械の有無、作業員の人数などの条件を満たす必要があります。複数事業所を運営する場合は、各事業所ごとに申請が必要です。
特定技能協議会への加入義務
特定技能で外国人を受け入れる企業は、「自動車整備分野特定技能協議会」への加入が義務付けられています。この協議会は国土交通省や業界団体、所属機関などで構成され、特定技能外国人の適正な受け入れを支援します。
特定技能協議会の役割
項目 | 詳細 |
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問題発生時の対応 | 雇用企業間で情報共有を行い、問題が発生した際には協議会を通じて解決策を模索します。 |
支援体制の構築 | 外国人材が安心して働ける環境を整えるため、定期的な会議や研修を実施します。 |
情報提供 | 法改正や制度変更など、雇用に関する最新情報を提供します。 |

特定技能「自動車整備」を活用する際の注意点
特定技能制度を利用して外国人材を受け入れる際には、制度の仕組みを正しく理解し、適切な対応を行うことが重要です。以下では、定着率向上のためのサポート方法や費用負担、転職可能な制度について詳しく解説します。
定着率向上のためのサポート方法
特定技能外国人が企業に長く定着するためには、職場環境や生活面でのサポートを充実させることが欠かせません。具体的には、外国人材向けの分かりやすい作業マニュアルや日本語学習機会の提供、生活オリエンテーションの実施が効果的です。また、定期的に意見を聞く機会を設け、職場での悩みや課題に早期対応することで、外国人材との信頼関係を築きやすくなります。

雇用時の費用負担について
特定技能外国人を雇用する際には、採用や支援にかかる費用を事前に計画することが重要です。具体的には、採用プロセスでの手数料、住居確保や生活支援の費用、さらに登録支援機関に委託する場合の委託費などが挙げられます。これらの費用は企業側が負担する必要があり、不当な形で外国人材に負担を求めることは禁止されています。予算を適切に管理し、支出と収益のバランスを考慮することで、スムーズな受け入れが可能になります。

転職可能な制度の理解
特定技能外国人は一定の条件を満たす場合に転職が可能なため、企業は制度を十分に理解しておく必要があります。企業側としては、外国人材が安心して働ける環境を整備し、転職を防ぐ努力が求められます。一方で、転職が発生した際には、行政の指示に従い適切に対応し、次の雇用主への引き継ぎをサポートする姿勢が重要です。こうした対応は、企業の信頼性向上にも繋がります。

まとめ
特定技能「自動車整備」は、自動車整備業界の深刻な人材不足を解消するために設けられた重要な制度です。外国人材が高度なスキルを活かし、点検や整備業務を担うことで業界全体の活性化が期待されています。受け入れ企業は、適切な手続きや支援体制を整えることで、安心して働ける環境を提供することが求められます。外国人材の定着とスムーズな雇用を実現するため、制度の正しい理解と準備が鍵となります。
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この記事の監修者

大学卒業後、経営コンサルティング会社に入社し、企業の経営支援に携わる。その後、dodaを運営するパーソルキャリアにて、様々な方の転職支援に従事。その経験を活かし、株式会社JINにて、人材事業を開始。