
外国人雇用を本音で語る「リクアジの編集部」の上田です。本日のトピックはこちら!
・特定技能「漁業」の基本概要
・企業が遵守すべき要件と支援内容
・特定技能「漁業」での雇用形態について
日本の漁業業界が直面する人手不足問題。その解決策として注目される「特定技能『漁業』」。この制度で何が変わり、どのように活用できるのでしょうか?具体的な受け入れ人数の推移や業務内容、企業の要件など、知っておくべきポイントをわかりやすく解説します。ぜひ最後までご覧ください!
特定技能「漁業」とは?
特定技能「漁業」とは、2019年4月の出入国管理法改正により創設された新しい在留資格で、外国人が漁業・水産業分野で働くことを可能にしました。この制度は、人手不足が深刻化している日本の漁業業界に即戦力を提供することを目的としています。2024年6月末時点で、特定技能1号で在留する外国人は全体で251,747人、そのうち漁業分野では3,035名が活動しています。この制度を通じて、漁業業界の持続可能性向上が期待されています。

日本の「漁業」が直面する課題
日本の漁業は、従事者の高齢化と後継者不足が深刻化しています。現在、漁業就業者の多くが50代以上を占め、60代・70代も珍しくありません。一方で、新規参入者は少なく、若者が漁業に関心を持つ機会が限られています。試算によると、漁業従事者数は減少を続け、2028年には約10万3千人、2048年には約7万3千人になると予測されています。このままでは、人手不足がさらに進み、漁業の持続可能性に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

特定技能「漁業」で可能な業務内容
特定技能の漁業分野には、「漁業」と「養殖業」の2つの職種があり、それぞれ従事する業務が異なります。

関連業務について
特定技能「漁業」における関連業務とは、漁業や養殖業に直接関係する補助的な作業を指します。たとえば、漁具の修理や清掃、漁獲物の選別や保管作業、養殖池の清掃や設備点検などが含まれます。これらの業務は、主たる作業を円滑に進めるために重要な役割を果たします。ただし、関連業務のみを行わせることは認められておらず、特定技能で認められる主たる業務と併せて従事することが必要です。

特定技能「漁業」で従事できない業務
特定技能「漁業」で認められない業務は、漁業や養殖業に直接関係のない作業や、主たる業務以外の単純労働です。たとえば、清掃作業や荷物の運搬のみを行うこと、または漁業以外の業種に属する作業(例:食品加工や販売業務)は認められません。在留資格で認められた業務範囲を遵守することが重要です。
特定技能「漁業」の取得方法
以下の表は、特定技能「漁業」における在留資格の取得ルートと特徴をまとめたものです。必要な要件や特徴を簡潔にご覧いただけます。
在留資格 | 取得ルート | 取得要件 |
---|---|---|
特定技能1号 | 同分野の技能実習から移行 | 技能実習2号を良好に修了※試験不要 |
未経験者が取得 | 特定技能測定試験合格- 日本語検定N4以上またはJFT A2以上合格 | |
特定技能2号 | 特定技能1号から移行 | 特定技能2号評価試験合格- 実務経験(監督・管理職として2年以上) |
ここでは、技能実習2号からの移行と未経験者の取得方法について、日本語能力試験および漁業技能測定試験1号技能測定試験の概要、試験問題、申し込み方法などを詳しく解説していきます。

【ステップ①】特定技能評価試験に合格する
特定技能「漁業」を取得するためには、漁業分野ごとに実施される「特定技能評価試験」に合格する必要があります。この試験では、漁業や養殖業に必要な専門知識や技能が問われます。漁具の使い方や魚の選別方法などが含まれます。実際の業務に直結した内容なので、漁業経験がない人でも学習すれば挑戦可能です。
【ステップ②】日本語試験に合格する
日本語の基本的な会話力を確認するため、「日本語能力試験N4」または「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT)」のいずれかに合格する必要があります。これらの試験は、日常会話や簡単な日本語の読み書きができることを証明するもので、試験対策用の教材も豊富に用意されています。
技能実習2号からの移行条件
すでに技能実習2号を良好に修了している場合、特定技能「漁業」への移行が可能です。この場合、日本語試験は免除されます。ただし、漁業分野での実習経験が求められ、実習中に規律や技能習得で問題がなかったことが条件となります。具体的には、以下の条件を満たす必要があります。
漁船漁業職種における以下の8作業のいずれかを修了している必要があります。
- かつお一本釣り漁業
- 延縄漁業
- いか釣り漁業
- まき網漁業
- ひき網漁業
- 刺し網漁業
- 定置網漁業
- かに・えびかご漁業
養殖業職種では、ほたてがい・まがきの養殖作業を修了していることが条件です。

特定技能「漁業」で受け入れる企業の要件
漁業特定技能協議会への加入
特定技能「漁業」で外国人を受け入れる企業は、必ず「漁業特定技能協議会」に加入する必要があります。この協議会は、漁業分野における特定技能制度の適切な運用を目的としています。
- 加入期限: 外国人を雇用した日から4か月以内に加入することが義務付けられています。
- 協議会の活動への協力: 現況調査や協議会で決議された事項に基づいた措置を実施する必要あり
- 加入可能な協議会の例: 全国漁業協同組合連合会、大日本水産会、全国いか釣り漁業協会など、多くの分野別団体が対象となります。
支援制度の構築
外国人が特定技能で円滑に働き、生活を送れるよう、企業は支援計画を策定し実行することが求められます。この支援計画は、外国人材が仕事や日常生活で困らないように設計されるもので、以下が含まれます。
- 事前ガイダンス: 日本での生活ルールや勤務先での注意事項の説明
- 住居確保: 安全で快適な住居を手配
- 生活オリエンテーション:文化や医療制度、ゴミ分別などの情報提供
- 日本語学習支援:業務や日常会話に必要な学習機会の提供
- 相談窓口の設置:困りごとに対応する窓口の設置
- 公的手続き支援:必要な手続きの同行・補助
これらの支援は、企業が自社で行うことも可能ですが、専任担当者の配置や体制整備が求められます。負担が大きい場合は登録支援機関に委託するのが一般的で、効率的な運用が期待できます。

受入れ企業の法令遵守
外国人を受け入れる企業には、法令遵守が厳しく求められます。まず、労働・社会保険法や出入国管理法を守り、適切な労働条件や雇用契約を整備する必要があります。また、1年以内に不本意な離職者や技能実習生の失踪者を出していないことが条件です。これらの要件を満たさない場合、罰則や受け入れ停止措置が科される可能性があるため、企業は慎重に対応しなければなりません。
特定技能「漁業」での雇用形態
特定技能「漁業」では「直接雇用」と「派遣雇用」の2つの雇用形態が認められています。これは、漁業分野の特性に合わせて柔軟な人材活用を可能にするための措置です。
直接雇用の場合
直接雇用では、漁業事業者が外国人技能労働者と直接雇用契約を結びます。事業者は、労働条件を明確に記載した契約書を締結し、日本人と同等以上の報酬を保証しなければなりません。また、労働保険や社会保険への加入が義務付けられています。加えて、外国人材が職場や生活で困らないように、生活支援や相談窓口の設置なども行います。
派遣での雇用
特定技能「漁業」では、派遣雇用も認められており、派遣元事業者が外国人技能労働者を雇用し、派遣先である漁業事業者に労働者を提供します。派遣元は、外国人材の雇用契約を結ぶとともに、生活支援や日本語学習の提供などの支援業務を行います。派遣雇用は、繁忙期など特定の時期に労働力を確保したい場合に特に有効です。ただし、派遣雇用では派遣元と派遣先の密接な連携が必要で、法令を遵守し、適正な報酬を支払うことが求められます。

採用方法の詳細を知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。


特定技能「漁業」のまとめ
特定技能「漁業」は、日本の漁業分野での深刻な人手不足解消を目的とした制度です。漁業と養殖業の業務に従事する外国人が対象で、直接雇用と派遣雇用の両方が可能です。企業は法令遵守や支援計画の策定が求められ、外国人労働者が円滑に働ける環境づくりが重要です。この制度を通じて、漁業の持続可能性向上や国際化が期待されています。
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この記事の監修者


大学卒業後、経営コンサルティング会社に入社し、企業の経営支援に携わる。その後、dodaを運営するパーソルキャリアにて、様々な方の転職支援に従事。その経験を活かし、株式会社JINにて、人材事業を開始。