
外国人雇用を本音で語る「リクアジの編集部」の上田です。本日のトピックはこちら!
この記事を読むことで、次の3つのポイントが得られます。
・外国人労働者とトラブルが起きている原因
・宗教や食生活の違いについて
・トラブルを起こさない様にするために
長年、外国人材の管理とサポートに携わってきた現場担当者ですので、信頼できる情報をお届けします。この記事を読めば、外国人労働者を採用・関わる際の注意点などが理解できるようになります。


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はじめに
日本で働く外国人労働者数は令和5年10月末で200万人を超えました。その数は今後も増加する見込みで、2030年には490万人の外国人労働者が必要になるとの試算もあります。異なる文化を持つ人々と接する機会が多くなり、それに伴いトラブルも増えると危惧する方は多いのではないでしょうか。
外国人労働者とのトラブルの中には、文化摩擦によるものが数多く存在しています。日本人の価値観で良かれと思って行った言動が、外国人労働者の尊厳を傷つけ問題に発展することも。異文化を理解し多様な価値観を認めることが、我々日本人に求められているのです。
この記事では、外国人労働者を受け入れる我々が押さえておくべき文化の違いについてまとめました。外国人労働者とのトラブルを避ける一助となれば幸いです。
日本で増え続ける外国人労働者

現在、外国人労働者の占める割合は全雇用者の3.4%。外国人が働いている姿を見かけることが増えたと実感する方も多いことでしょう。
日本で働く外国人労働者は、在留資格やビザの違いで就労の形態が違います。厚生労働省は外国人労働者を「高度に専門的な職業」「大卒ホワイトカラーや技術者」「外国人特有又は特殊な能力等を活かした職業」の3つに分類し、雇用を推進しています。なぜ日本は外国人労働者を受け入れるのでしょうか。
外国人労働者を受け入れる理由
日本は少子高齢化社会に突入して久しく、労働力不足が深刻化しています。そこで政府は外国人労働者を受け入れ、特定分野の人手不足解消を目指しました。また、外国人労働者はインバウンド対策や海外販路開拓など、日本のグローバル化に貢献することも求められています。

外国人労働者が抱える問題
日本語を十分理解できず、日本の文化に馴染めず戸惑っている外国人労働者は大勢います。受け入れ体制が整っていればすぐに順応し、仕事に集中できるようになるもの。しかし受け入れ側からのサポートが得られない場合はストレスが大きくなり、出社するのも難しくなってしまいます。心身ともに不健康になり、帰国せざるを得ない状況に陥ることも。
また、受け入れ側の問題もまだまだ多いのが現状です。契約より低い賃金、残業代未払い、長時間労働、劣悪な生活環境。外国人労働者をターゲットにしたいじめや暴力もニュースになりました。
外国人労働者の中には、来日する際、ブローカーに多大な手数料を支払った人もいます。大きな借金を抱えて日本にやってきても、円安の影響などで思うように稼げず追い詰められることも。故郷の家族を養えないと絶望するケースもあります。

外国人労働者のトラブル例
日本で働く外国人労働者のまわりでは、どのようなトラブルが起きているのでしょうか。
職場では、ルールや仕事の仕方を理解できずに失敗したり、言った言わないの揉め事が発生します。生活面では、ゴミ出しのルールを守らない・公共地で勝手に畑を作る・騒音を出すなど、近隣住民から苦情が出ることもあるでしょう。
受け入れ側の人々が外国人労働者の文化を知らずに食事に招待し、豚肉に口をつけない外国人労働者に「好き嫌いせずに食べてごらん」「食べないなんて失礼だ」と言って困らせることもよくあります。
金銭を巡るトラブルは深刻です。外国人労働者同士で揉めたり、窃盗や強盗などの事件に発展することも。失踪して不法残留や不法就労する外国人労働者も後を絶ちません。法務省によると、失踪し連絡のつかない技能実習生の数は令和5年度で7,093人。不法就労や窃盗・強盗など犯罪に手を染めるケースが問題視されています。
文化摩擦を避けるため外国人労働者の文化を知ろう
外国人労働者を深く理解するために、その背景となる文化を知ることはとても重要です。日本の常識では考えられないようなことが、他の国では常識とされているような例は枚挙にいとまがありません。外国人労働者が自国の文化を尊重してもらえると「職場に受け入れてもらった」と安心できるもの。日本人との信頼関係が構築できれば、失踪などのトラブル発生を未然に防ぐことが期待できます。
宗教
宗教と生活習慣は深く関係しています。多くの国では生活圏の中心に教会や寺院があり、教義や戒律などが人々の行動や衣食住に影響を与えているのです。世界には様々な宗教・宗派がありますが、外国人労働者に多いのは「イスラム教」「キリスト教」「ヒンドゥー教」「仏教」です。それぞれの特徴を見てみましょう。
イスラム教

過激なものと判断されがちなイスラム教ですが、実はとても平和的な宗教です。イスラム教の信者はムスリムと呼ばれ、唯一の神アッラーを信じています。
イスラム教の信者(ムスリム)が、世界で最も多い国はインドネシア。 約2億人(国民の87%)が信仰していると言われています。
中東やアフリカの国々、パキスタン、バングラデシュ・インド・インドネシア、マレーシアなどに多い宗教です。
日本では特に食事に気を付けてください。豚肉やそのエキスを口にすることは禁止、基本的に神に許されたハラール食品(野菜・穀物・果物・魚介類・卵・牛乳、祈りを捧げた肉など)しか食べることはできません。また、1日5回の祈りやラマダン(断食)、女性が肌や髪を覆い隠す服装をすることなどへの理解も必要です。戒律の厳しさは宗派や解釈によって異なります。
また、イスラム教では頭を神聖なものと考えるため、頭を触ったり撫でたりするのは好まれません。
キリスト教

キリスト教は世界で最も教徒の多い宗教です。世界に約24億人いるとされ、総人口の3割以上を占める世界最大宗教です。欧米諸国やアフリカでは宗派が混在しており、フィリピンはローマンカトリック、韓国はプロテスタント、ロシアは正教会が多い傾向にあります。
キリスト教では、日曜日を安息日として神に感謝することが重視されます。日曜日には教会に行って礼拝を行う事が多いです。
キリスト教では、食事に関する禁止事項は特にありません。しかし宗派によっては例外も存在します。例えばモルモン教(キリスト教の一派)では、アルコール類、コーヒー、紅茶、お茶、タバコの摂取が禁じられています。
セブンスデー・アドベンチスト教会では、信者に菜食を勧めています。
キリスト教の伝統的な行事(感謝祭、クリスマス、カーニバルなど)では、七面鳥、羊、魚(タラなど)などを用いた料理が食べられています
ヒンドゥー教

ヒンドゥー教徒は世界で約11億人います。キリスト教、イスラム教に次いで信者の多い宗教です。インドやネパールに多く、またバングラデシュ・スリランカ・インドネシアの一部の地域に信者が存在しています。
菜食主義者が多いので、食事は事前に確認が必要です。肉を食べる人もいますが、牛は神聖な動物として崇拝されているのに対し、豚は不浄な生き物とされています。そのため、牛肉・豚肉は避けたほうが良いでしょう。左手は不浄の手なので、物を渡したり触れたりするときは必ず右手で行ってください。
アルコール
ヒンドゥー教の規範とされている「マヌ法典」によって、酒を飲むことは「五大罪」の一つとされています。飲酒は好ましくないものとする価値観が伝統的に強く、公共の場での飲酒は日本よりも限られていますので、確認をしましょう。
仏教

仏教にも様々な宗派がありますが、大きく分けて大乗仏教と上座部仏教に分けることが出来ます。日本人にとっても馴染みのある仏教ですが、食事などに関しては宗派によって考え方が異なります。日本やベトナムなどは大乗仏教が多数派ですが、タイやミャンマー、スリランカなどは上座部仏教が多く、厳しい戒律があります。
食生活
食事は心身の健康と直結するため、外国人労働者の食生活に気を配る必要があります。宗教的なタブーを押さえることはもちろん、アレルギーや嗜好も把握しましょう。刺身や納豆、生卵などどうしても食べられない外国人も多いですが、決して押し付けないように。食べなれたスパイスを準備したり、庭に小さな畑やプランターを与えて好きな野菜を栽培する環境を整えるなど、工夫も必要でしょう。
生活習慣
入浴やトイレなどは、国によって使い方が違います。湯船につかったり熱いお湯で洗う習慣が無い国から来日すると、お風呂の使い方で戸惑うことでしょう。大浴場で他人と一緒に入浴するのを嫌がるケースもよくあります。また、日本のようにトイレットペーパーを使わない国は多く、水で洗う設備を整える必要があります。トイレ後に水で洗う習慣のある国の人々は、トイレットペーパーを使う人を不潔に感じる傾向にあることを覚えておきましょう。

外国人労働者と文化摩擦を起こさないために
希望をもって来日してきた外国人労働者。うまく共存して日本と外国の良い面を融合し、仕事に活かしたいものです。文化摩擦を起こさないようにするには、どうしたら良いでしょうか。
まず必要なのは、契約やルールをしっかり理解してもらうこと。わかりやすい言葉で説明し、理解できているか確認する必要があります。外国人雇用管理アドバイザーに相談するのも良いでしょう。
次に必要なのは、受け入れる我々が外国人労働者の文化を学び尊重すること。もちろんすべてを受け入れるのは難しいでしょう。その際は当人とよく話し合い、うまく折り合いをつけていく必要があります。例えば、イスラム教徒は一日5回の祈りが必要で、特に金曜日の祈りは重要なのですが、就業内容によっては時間を与えることが出来ない場合もあります。それから、祈りの前には手足などを水で清めなければいけないので、その際に利用できる水場の準備も必要です。キッチンの流し台で足を洗っていたという例もあるので、事前に話し合いましょう。
まとめ
外国人労働者との文化摩擦は、宗教や生活習慣、価値観の違いにより生じます。言葉の壁があったり、職場でのコミュニケーションが不足したり、受け入れ態勢が整っていないことで誤解が生じ、トラブルに発展してしまうのです。
外国人労働者を受け入れ続ける日本政府に対して「日本人の職が奪われるのでは」と心配する声も聞こえます。しかし、外国人労働者は移民ではありません。在留期間は5年以内で、家族を帯同せず単身で来日。深刻な人手不足の分野で就業することになっているため、基本的には日本人の職を奪うことにはなりません。
厚生省は毎年6月を「外国人雇用啓発月間」と定めています。外国人労働者は、日本の経済を支える強い味方。お互いの文化を尊重し、うまく共存していきたいものですね。
【参考資料】
厚生労働省 「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和5年10月末時点)
経済産業省 未来人材ビジョン
厚生労働省 日本で就労する外国人のカテゴリー
内閣府 令和6年度年次経済財政報告(第2章3節)
厚生労働省 外国人雇用管理アドバイザー
法務省 技能実習生の失踪
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この記事の監修者

大学卒業後、経営コンサルティング会社に入社し、企業の経営支援に携わる。その後、dodaを運営するパーソルキャリアにて、様々な方の転職支援に従事。その経験を活かし、株式会社JINにて、人材事業を開始。