
外国人雇用を本音で語る「リクアジの編集部」の上田です。本日のトピックはこちら!
・家族滞在ビザの基本要件
・就労制限と資格外活動許可の仕組み
・他の在留資格への切り替え方法
日本で就労や学業を行う外国人が家族と暮らすために欠かせない「家族滞在ビザ」。一方で、「技能実習」や「特定技能1号」では家族を呼び寄せられなかったり、週28時間以内とはいえ就労制限があったりと、不安や疑問も尽きない現状です。この記事では、取得の要件から手続きの流れ、就労ルールのポイントまで分かりやすくまとめています。

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家族滞在ビザとは?
家族滞在ビザは、日本で就労や学業を目的に滞在する外国人(扶養者)の配偶者や子ども(被扶養者)に付与される在留資格です。このビザを取得することで、扶養者の家族が日本で一緒に生活することが可能になります。
また、家族滞在ビザの期間は法務大臣が個別に指定し、最長で5年となります。このビザを取得するためには扶養者が一定の在留資格を有し、経済的に安定していることが条件となります。
家族滞在ビザを持つ外国人の人数は?
家族滞在ビザを持つ外国人の人数は、ここ数年で増加傾向にあります。2019年末には201,423人でしたが、2021年末に192,184人と減少しました。これは新型コロナウイルスの影響による入国制限が原因と考えられます。
しかし、その後は回復基調に転じ、2023年末には266,020人となり、2024年6月末には283,204人に達しました。この間、前年比で7.9%や6.5%といった高い増加率を記録しており、外国人家族が日本で生活を共にする環境が整備されつつあることを示しています。

家族滞在ビザの取得要件
家族滞在ビザの取得要件について詳しく見ていきましょう。

要件1:扶養を受けていること
家族滞在ビザを取得するためには、配偶者や子どもが「扶養者」から経済的に支援を受けていることが大前提です。たとえば扶養者が「技術・人文知識・国際業務(技人国)」や(※特定技能2号など、家族帯同が認められる在留資格)を持って働き、安定した収入を得ている必要があります。

要件2:日本で生活可能な経済力があること
十分な生活費を賄えるだけの経済力があることも必須です。一般的には年収300万円以上が一つの目安と言われていますが、家族の人数や在留地(都市部か地方か)によってはさらに上の収入基準が求められる場合もあります。
また、預貯金の残高や家族の滞在費用をどのように捻出するかを示す書類が必要になるケースもあります。
要件3:家族関係が証明できること
家族滞在ビザの対象は、法律上の配偶者と子どもです。よって、結婚証明書や出生証明書など、公的に家族関係が立証できる書類を提出する必要があります。
戸籍の概念が異なる国出身の場合、政府発行の証明文書や在外公館の証明を用意することが多いです。内縁関係や事実婚などは、原則として対象になりません。

家族滞在ビザの申請方法

海外から家族を呼び寄せる場合(新規入国)
海外にいる家族を呼び寄せる場合は、主に以下の2つのアプローチがあります。
- 海外の日本大使館・領事館で直接ビザを申請
- 国や地域によっては、扶養家族が在留資格認定証明書なしでもビザを申請できる場合があります。
- 日本で在留資格認定証明書を取得して、本国の大使館でビザ発給を受ける
- 扶養者(日本に在留中の外国人)またはその代理人(企業の担当者など)が、日本の入管で「在留資格認定証明書」を取得
- 家族にその証明書を海外に送付
- 家族が本国の日本大使館・領事館へ出向き、在留資格認定証明書を添えてビザを申請
- ビザ発給後に家族が日本に入国し、空港等で在留カードを受け取る
一般的に後者の方法(在留資格認定証明書を先に取得)がスムーズだと言われており、多くの企業や留学生家族が利用しています。
具体的な申請の流れ
以下は、海外から呼び寄せる際に代表的な流れとなる、在留資格認定証明書交付申請を前提とした方法です。
扶養者(企業で働いている外国人など)またはその代理人が、入管へ提出するための書類を一式揃えます。
- 在留資格認定証明書交付申請書(家族滞在用):所定の様式に記入
- 写真(縦4cm×横3cm程度):1葉(申請者)
- 返信用封筒(404円の切手貼付):1通
- 申請人と扶養者の身分関係を証明する文書
- 戸籍謄本、結婚証明書(写し)、出生証明書(写し)など
- 扶養者の在留カードまたは旅券の写し:現状の在留資格を確認するため
- 扶養者の職業・収入を証明する文書
- (1)扶養者が就労ビザの場合:在職証明書、住民税の課税証明書、納税証明書、給与明細や源泉徴収票など
- (2)扶養者が留学ビザなどの場合:奨学金給付証明書、預金残高証明など
最寄りの地方出入国在留管理局に提出します。審査期間は数週間から数ヶ月程度かかることがあり、時期や申請内容、入管の混雑状況によって異なります。
無事審査を通過すると、入管から在留資格認定証明書が交付されます。これを申請者(扶養者)が受け取り、海外にいる家族に郵送・送付します。
家族は在留資格認定証明書を持参し、自国または居住国の日本大使館・領事館でビザ申請を行います。審査が通れば家族滞在のビザが発給されます。
ビザを取得した家族が日本に入国する際、空港などの入国審査場で在留カードが交付されます(成田・羽田・関西・中部など主要空港の場合)。地方空港の場合は後日、居住地の市区町村役場等で受け取る流れになる場合もあります。
日本在住の外国人が「家族滞在」へ変更する場合
すでに他の在留資格で日本に滞在している外国人が、婚姻などの事情で家族滞在ビザに切り替える場合は、在留資格変更許可申請を行います。
具体的な申請の流れ
すでに日本国内にいる外国人(例:別の在留資格を持つ配偶者)が、家族滞在ビザに切り替える際の一般的な流れは以下のとおりです。
- 在留資格変更許可申請書(家族滞在用):所定の様式に記入
- 写真:1葉(申請人)
- パスポート及び在留カードの提示(原本確認)
- 申請人と扶養者の身分関係を証明する文書
- 戸籍謄本、結婚証明書(写し)、出生証明書(写し)など
- 扶養者の在留カードまたは旅券の写し
- 扶養者の職業及び収入を証する文書
- 収入を伴う事業や就労活動の場合:在職証明書や納税証明書、源泉徴収票など
- それ以外の場合:預金残高証明書、奨学金給付証明書、仕送りの証明書など
書類一式を地方出入国在留管理局へ提出します。受付時に審査手数料(変更許可が下りるときに収める)などの案内があります。
入管は提出された書類を基に審査を行い、問題なければ「在留資格変更許可」が下ります。審査期間は数週間~数ヶ月を要する場合があります。
許可が下りた後、在留カードに「家族滞在」の資格が追記されます(ICチップ内の情報も変更)。これで日本国内での活動が「家族滞在」扱いとなります。

近年、在留カードの偽造が増えているので注意しましょう!


家族滞在ビザの就労制限について
家族滞在ビザは大前提として、「就労を目的としない」資格と位置づけられているため、原則としてフルタイムの労働はできません。
しかしながら、資格外活動許可を得ることで、一定の制限(週28時間以内など)の範囲内でパートやアルバイトとして働くことが可能になります。
包括許可と個別許可の違い
家族滞在ビザで週28時間以内の範囲で働く場合、大きく分けて以下の2種類の許可形態があります。
- 包括許可
一度申請して許可を得れば、週28時間以内の制限内で複数のアルバイト先で働くことができます。- メリット:一度許可を取得すれば、雇用先が増減しても週28時間以内なら再申請不要
- デメリット:就労可能時間の管理を本人が徹底しないと、万が一28時間を超えてしまうと違法就労扱い
- 個別許可
特定の企業・職種に対して許可を得る形です。たとえば「○○株式会社で週20時間まで働く」など、個別に認められます。- メリット:特定の業務内容に焦点が当たっているため、審査上のトラブルが起きにくい
- デメリット:雇用先変更や掛け持ちをするときは、その都度申請が必要
家族滞在ビザでの雇用形態と注意点
家族滞在ビザの保有者が働く場合、基本的にはパートタイムやアルバイトなど、週28時間以内の労働形態に限定されます。
契約社員・派遣社員なども実質的に「フルタイム労働」になる場合は認められないケースが多いので要注意。
また、夜勤や深夜残業を伴う仕事で労働時間管理が複雑になる場合は、企業側がしっかりと時間管理を行い、週28時間を超えないようにする体制づくりが求められます。


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家族滞在ビザと他の在留資格への変更


家族滞在ビザ→定住者ビザへの変更条件
定住者ビザは日系人や特定の事情(日本人配偶者の連れ子など)により長期在留を認める在留資格です。家族滞在ビザから定住者ビザへの変更は、以下のような要件を満たす場合に可能とされています。
- 日本国内での在留実績:ある程度の年数住んでいて、安定した生活基盤がある
- 特別な理由:家族の事情(日系人ルーツ、配偶者の死亡や離婚など)
- 経済的安定性:扶養者がいなくなった場合でも自活できることを証明できる


家族滞在ビザ→特定活動ビザへの変更条件
特定活動ビザは、インターンシップや高度専門職の配偶者、起業準備など、特定の活動を行う場合に付与される在留資格です。家族滞在ビザから特定活動ビザへ変更するには、以下のような要件・状況が考えられます。
- 大学などでインターンシップを行う場合
- ワーキングホリデー制度や特定の研究活動に参加する場合
- 起業準備のために一定条件を満たしている場合
個々の活動内容によって必要書類や条件が大きく異なるため、事前に在留資格認定基準を調べ、入管当局に確認することが重要です。


家族滞在ビザ→技人国ビザへの変更条件
技術・人文知識・国際業務(技人国ビザ)は、日本国内の企業などでフルタイム就労するために一般的に利用される在留資格です。変更条件としては、以下の点が挙げられます。
- 学歴要件:大学卒業、または実務経験10年以上(職種による)
- 職務内容:翻訳・通訳、エンジニア、経理、マーケティングなどの「人文知識・国際業務」または「技術」分野
- 契約企業の適正性:企業の規模や安定性、賃金水準が適正であるか
家族滞在ビザで週28時間以内のパート勤務をしていても、企業からフルタイムの雇用契約を得られれば技人国ビザへ変更が可能になるケースが多々あります。月給や年収などが審査に影響するため、十分な報酬が支払われることを証明する必要があります。


家族滞在ビザ→経営管理ビザへの変更
経営管理ビザは、日本で起業や事業運営を行う場合に必要となる在留資格です。家族滞在ビザで在留している外国人が自営業を始めたい、あるいは自ら会社を設立したい場合、このビザへの変更が必要になります。
- 金500万円以上の出資(一般的な目安)
- 事務所の設置(自宅兼事務所は認められない場合が多い)
- 具体的な事業計画書や収支見込み
家族滞在ビザに関するよくある質問
- 家族を日本に呼ぶための収入基準は?
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「年収300万円程度」が一つの目安と言われることが多いですが、実際には家族の人数や生活地域、家賃などの要因によって増減します。たとえば子どもが2人いる場合、年収300万円では生活が厳しいと判断される可能性もあり、もう少し高い水準を求められることがあります。
また、預貯金や他の家族の収入を合算できる場合もあるため、総合的に「家族が日本で自立して生活できるか」が審査で重視されます。 - 内縁関係でもビザ取得は可能?
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原則として「法律上の婚姻関係」が必須となるため、内縁関係や事実婚だけでは家族滞在ビザは認められません。例外として、国によっては事実婚を法的に認める場合があり、当該国の公的証明があるときは認められるケースもゼロではありません。しかし、いわゆる日本法基準での「内縁」はハードルが高いのが実情です。
- 家族滞在ビザの更新は何歳まで可能?
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子どもについては、基本的に就学中(高校卒業前)であれば更新が認められやすいですが、18歳~20歳を超えてくると、本人が「留学ビザ」や「就労ビザ」に切り替える必要が出てくる場合があります。
一方、配偶者は婚姻関係が続き、かつ扶養者が安定した在留資格を持ち続けている限り、年齢制限にかかわらず更新が可能です。
まとめ
家族滞在ビザは、日本で就労・学業を行う外国人が配偶者や子どもを呼び寄せ、一緒に暮らすための在留資格です。取得には扶養者の在留資格や経済力、法律上の家族関係の証明が必要。最長で5年間の在留が認められますが、技能実習や特定技能1号では家族帯同が不可。なお、資格外活動許可を得れば週28時間以内の就労も可能となります。


外国人採用はお気軽にご相談ください。
この記事の監修者


大学卒業後、経営コンサルティング会社に入社し、企業の経営支援に携わる。その後、dodaを運営するパーソルキャリアにて、様々な方の転職支援に従事。その経験を活かし、株式会社JINにて、人材事業を開始。