
外国人雇用を本音で語る「リクアジ編集部」の上田です!本日は、元行政書士の監修による信頼性の高い情報をもとに、外国人雇用に関するトピックを分かりやすく解説します。
・会社が対応すべき外国人従業員の退社手続き
・外国人本人の視点で見た退社手続き
縁あって採用した外国人人材も、さまざまな理由で転職を決意したり、やむを得ず職場を離れたりするケースも出てきます。外国人従業員から退職の申し出があった場合、日本人従業員への対応をベースとしつつ、労働基準法や出入国管理及び難民認定法を遵守し、粛々と実務を行っていかなければなりません。

外国人社員が退職した時のチェックポイント!
- ✅ 退職証明書の準備(請求があった場合)
- ✅ 雇用保険被保険者資格喪失届の提出
- ✅ 離職証明書 / 離職票の要否を確認
- ✅ 外国人雇用状況の届出(未加入者のみ退職翌日から10日以内)
- ✅ 所属機関による届出(ハローワーク届出を行わない場合、入管へ14日以内)
- ✅ 会社へ退職意思を伝える(退職日の2~3カ月前が望ましい)
- ✅ 退職願または退職届を提出
- ✅ 必要に応じて退職証明書を請求
- ✅ 貸与物・保険証の返却(最終出社日または退職日)
- ✅ 入管への所属機関に関する届出(退職または転職後14日以内)
- ✅ 失業保険を申請(被保険者期間12カ月以上ある場合)
- ✅ 3カ月以内を目安に転職活動を行う(在留資格取消防止)
【会社人事総務がやるべき】外国人の退職手続き


基本は日本人と同じ退職手続きを行う
外国人従業員から退職したい旨の相談があった際は、日本人従業員と同じように、退職日を決定して、退職願を受理し、必要に応じて引継ぎを命じ、有給休暇を消化してもらうようにします。
また、退職後に医療機関を受診する可能性がある場合は、国民健康保険へ切り替える必要があること、あるいは任意継続保険への加入が可能であることも案内しておくと親切です。
社宅は通常、退職日に退去してもらうのが一般的ですが、やむを得ない事情(辞職理由・引越し先未定など)がある場合は、新居が見つかるまで退去を猶予する企業もあります。
退職証明書を外国人に交付する
日本人の場合、退職の際に「退職証明書」を発行することはほとんどありません。しかし外国人の場合は、退職時に交付が必要となるケースがあります。
なぜなら、転職先(新しい会社)から提出を求められるだけでなく、外国人が出入国在留管理庁で在留資格変更許可申請や就労資格証明書交付申請を行う際にも添付書類として必要になるためです。
退職証明書は、労働基準法22条に定めがあり、使用期間や業種、地位(役職)、賃金、退職事由(解雇の場合はその理由)を記載します。これは法定義務にあたるため、外国人本人から請求があった場合は速やかに交付してください。
なお、退職証明書を交付する際には、外国人従業員が希望しない項目を無理に記載したり、今後の就業を妨げる目的で国籍・信条・社会的身分などに関する情報を記入したり、秘密の記号を用いてはなりません。違反した場合、罰則の対象となりうるため、十分に注意が必要です。
雇用保険被保険者資格喪失届を提出する
外国人従業員が雇用保険に加入していた場合は、退職して被保険者でなくなった日の翌日(つまり退職日の翌々日)から起算して10日以内に、事業所を管轄しているハローワークに提出をしなければなりません。
手続きの内容は、離職証明書を作成するか、作成しないかで異なりますので、注意が必要です。
ケース | 必要書類 |
---|---|
離職証明書が不要な場合 |
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離職証明書を作成する必要がある場合 |
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退職証明書と離職証明書のちがい
離職証明書不要のケース例
離職証明書が不要になるケースとは、退職する前に次の転職先がすでに決まっている場合や、失業保険の受給要件を満たしていない場合などが該当します。
失業保険の受給資格
失業保険を受給するには、離職日以前の2年間に被保険者期間が通算で12カ月以上必要です。1カ月のカウント条件は「11日以上」または「80時間以上」の業務従事で、これが12カ月分あれば連続でなくても受給資格を満たします。
なお、雇用保険被保険者資格喪失届をハローワークに提出すると、次項で説明する外国人雇用状況の届出も行ったものとみなされるため、届出は不要です。
外国人雇用状況の届出
外国人雇用状況の届出は、在留資格「外交」「公用」、「特別永住者」を除く外国人を雇用した事業主はすべて、外国人の入社時、退職時にハローワークに届出を行うことを義務付けている手続きです。
先にお伝えしたとおり雇用保険に加入している外国人従業員については、雇用保険被保険者資格喪失届を出せば、外国人雇用状況の届出は不要となります。
しかしながら雇用保険に加入していない外国人従業員が退職した場合は、雇用保険被保険者資格喪失届を出す必要はありませんが、外国人雇用状況の届出をハローワークに出さなければなりません。
所属機関による届出手続(中長期在留者の受入れに関する届出)
外国人が退職する際には、雇用主が退職日から14日以内に出入国在留管理庁へ退職の事実を届け出る必要があります。
ただし、既にハローワークへ「外国人雇用状況の届出」を行っている場合は、改めて「中長期在留者の受入れに関する所属機関の届出」を提出する必要はありません。
外国人の退職手続き【外国人本人がやるべき手続き】
本章は、外国人の退職手続きについて人事担当者や総務担当者が、大局的に全体像を把握することで理解を深め、実務に役立てられるよう、外国人従業員の視点でまとめましたので、ぜひ参考にしていただけますと幸いです。


退職したい旨を申し出る
民法627条に基づき、雇用期間の定めがない労働者(日本人・外国人問わず)は、いつでも退職を申し出ることができます。ただし、実際に退職できるのは、申し出た日から最短で2週間後です。
会社が即日や直近での退職を認めると、人員計画に支障をきたすほか、他の従業員の負担が増えるなど、会社や同僚に迷惑をかけるおそれがあります。そのため、民法では「会社に退職を伝えてから2週間が経過すれば雇用契約は終了する」と規定しています。
ただし、有給休暇の消化や後任者への引継ぎなどを考えると、退職希望日の2~3カ月前には、まず直属の上司に申し出るのが望ましいでしょう。
退職の承認を受けたら退職願を書く
上司に退職の意思を伝え、退職の承認を受けたら、通常は「退職願」を提出するよう指示されます。会社によってはフォーマットが用意されており、書くべき項目があらかじめ決まっている場合もあるでしょう。
優秀な人材や会社にとって必要不可欠な人材であれば、退職は大きな痛手となるため、引き留めを受けたり、好条件を提示されたりすることもあり得ます。しかし、どうしても退職以外の選択肢を考えられない場合には、退職願ではなく「退職届」を提出する方法もあります。
退職証明書の交付を求めておく
就労ビザをもって日本に入国している外国人の方は、転職に伴い、在留資格変更許可申請や就労資格証明書の交付申請を行う場合に退職証明書が必要となります。
退職後に会社に連絡したり、受け取りのために再び会社に足を運んだりしなくてもいいように前もって交付をお願いするようにします。
速やかに所属(活動)機関に関する届出を行う
入管法19条の16の規定に基づき、3カ月以上の中長期在留者である外国人の方は、出入国在留管理庁長官に転職や退職によって、所属(活動)機関が変わった旨を届け出ます。
退職の翌日から転職先での勤務が決まっている場合は、同時に届出を行います。
失業保険の手続き
退職した時点で転職先が決まっていない場合、給料から雇用保険料が天引きされていてかつ退職日から遡ること2年間のうち、月11日以上、80時間以上、勤務した月が通算12以上あれば、いわゆる失業保険の基本手当をいただきながら、転職活動を行なえます。
退職日以降、会社から離職票が送られてきます。それを持参してハローワークに足を運び、受給資格決定と求職の申し込みを行います。
受給資格決定日から、間もなく基本手当が支給されることはなく、受給説明会への参加を経て、4週間に1度、失業状態にあるとの認定を受けたのちに、はじめて初回の基本手当が支給されます。
転職(求職)活動を行う
転職(求職)活動を行う場合、基本手当は転職先が決まるまでの生活を支援するためのもので、活動していないと支給されない場合があります。受給条件として、認定日から次の認定日までに原則2回以上の求職活動実績が必要です。
活動内容としては、ハローワークでの職業相談・求人紹介を受ける、転職エージェントの面談、セミナー参加などが認められます。なお、真剣に転職活動を行うことで、在留資格が取り消されにくくなる可能性もあります。
退職から3カ月以上無職の場合は在留資格取り消し?
就労ビザをもって日本に入国し、在留している外国人が3カ月以上、就労していないことが判明した場合は、正当な理由がある場合を除き法務大臣は現在、認めている在留資格を取り消すことができるようになっています(入管法22条の4及び6項)。
ただし、次のような正当な理由がある外国人の方なら、在留資格が取り消される可能性は低くなるでしょう。
失業保険の基本手当の支給を受けながら真面目に転職活動をしている
新しい会社から内定はいただいており、入社日を調整中である
退職手続きでよくある質問
- 退職日の翌日から次の会社に就職することが決まっています。雇用保険被保険者資格喪失届などの手続きは必要ですか?
-
はい、必要です。
たとえ退職の翌日から新しい会社で働く場合でも、「雇用保険被保険者資格喪失届」は会社側がハローワークに提出しなければなりません。ただし、転職先ですでに雇用保険に加入することが確定しているため、失業給付のための離職票(離職証明書)は発行されないことが多いでしょう。
また、在留資格をもつ外国人の場合でも雇用保険資格の喪失手続きは国内在住の労働者として扱われるため、必ず行う必要があります。 - 有給休暇を退職直前にまとめて消化したいと希望する外国人従業員がいます。会社は拒否できますか?
-
原則として認める必要があります。
有給休暇は労働者の権利であり、退職日までに消化できる日数が残っているのであれば、会社は基本的に拒否できません。業務の都合で取得日を調整する「時季変更権」は一定の要件を満たした場合に行使できますが、「退職が近い」というだけで一律に拒むことはできないとされています。円滑な引き継ぎなどを考慮し、本人と十分相談しながら日程を決めるのが望ましいでしょう。 - 外国人従業員が退職して3カ月以上就職していないと、在留資格は取り消されますか?
-
正当な理由がない場合、取り消される可能性があります。
就労ビザで在留している外国人が3カ月以上就労していないと見なされた場合、入管法の規定で在留資格が取り消されることがあります。ただし、失業保険を受給しながら真面目に求職活動を行っている、あるいは病気やケガで就労が困難だが治療後に働ける見込みがあるなどの正当な理由が認められるケースでは、取り消しの可能性は低くなります。
したがって、退職後は速やかに転職活動を行い、必要に応じて「就労資格証明書」の交付申請や在留資格の変更手続きも適切に進めることが大切です。
まとめ
外国人が退職する際の手続きは、基本的に日本人と内容は変わりませんが、退職証明書の交付や、外国人雇用状況の届け出を行わなければなりません。
外国人の退職の手続きは実務上、書類を作成する、添付書類を用意する、関係機関に提出するなどで足りますが、それ以上に大変なのは退職した外国人の後任者の選定や採用活動だと思料します。
外国人が退職したため、優秀な外国人人材を探している、1日も早く人手不足の状態を解消したい場合は、外国人人材会社や、その道のプロにぜひ、ご相談ください。


外国人採用はお気軽にご相談ください。
この記事の監修者


大学卒業後、経営コンサルティング会社に入社し、企業の経営支援に携わる。その後、dodaを運営するパーソルキャリアにて、様々な方の転職支援に従事。その経験を活かし、株式会社JINにて、人材事業を開始。