
外国人雇用を本音で語る「リクアジの編集部」の上田です。本日のトピックはこちら!
・外国人技能実習生に適用される労働基準法のポイント
・最低賃金法や労働安全衛生法、労災保険などの基礎知識
・外国人採用における実践的なノウハウ
外国人技能実習生を受け入れる際には、日本人と同じ労働基準法や最低賃金法の遵守が不可欠です。「言葉が通じないから大丈夫」と軽視すると、思わぬトラブルに発展するリスクも。
本記事では、最低賃金法や労働安全衛生法、労災保険の基本から、外国人採用を円滑に進めるためのコミュニケーションやサポート体制のポイントまでをわかりやすく解説します。自社の採用戦略に活かすヒントを、ぜひ最後までご覧ください。

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外国人技能実習生にも適用される労働基準法
外国人技能実習生も日本人と同様に「労働者」として扱われ、労働基準法(労基法)をはじめとする関連法令が適用されます。
外国語が話せない経営者や担当者が労働条件の説明を怠ったり、「実習生だから」と最低賃金以下の賃金で働かせたりすると、重大な違反となる場合があるので注意が必要です。
- 会社の備品破損を理由とした罰金(労基法第16条に違反)
- 強制的な貯蓄契約や通帳の預かり(労基法第18条に違反)
- 賃金支払日の遅延や残業代の未払い(労基法第24条・第37条などに違反)
以下では、技能実習生受け入れの際に特に見落としやすい項目について、詳しく解説します。

労働条件の明示と違反例
労働基準法第15条では、「労働契約を結ぶ際に、就業場所や業務内容、労働時間、賃金、支払日」などを書面(または電子媒体)で明示する義務があると定めています。
- 例:労働条件通知書を交付しない、口頭でしか説明しない
- 例:最初の契約書と実際の労働条件が異なる
このようなケースは労基法違反となり、後から「契約時の説明と違う」というトラブルが発生しやすいです。必ず書面で明示するとともに、技能実習生が理解できる母国語などで説明する配慮が求められます。

賠償予定・強制貯金・賃金支払いのルール
外国人実習生を受け入れる上で、労働法のルールとして特に気をつけたいのが、下記の3つです。
強制貯金の禁止(労基法第18条)
賃金の支払方法・タイミング(労基法第24条)
これらを順に解説していきますので、詳しく見ていきましょう。
あらかじめ罰金や違約金を設定するのはNG
労働基準法第16条が定める「賠償予定の禁止」により、たとえば「あらかじめ罰金を定める」「損害が起きたら一律に○円差し引く」といった契約は無効となります(例:備品を壊したら5万円罰金など)。
実際に労働者の過失によって企業が損害を被った場合でも、個別の損害賠償請求そのものが禁じられているわけではありません。ただし、はじめから一律の違約金を設定しておくことはできない点に注意が必要です。
賃金の勝手な天引きや通帳保管はNG
労働基準法第18条が禁止する「強制貯金」とは、実習生本人の意思に反して貯蓄を強制し、通帳や印鑑を使用者が預かる行為などを指します。
賃金の正しい支払い方(労基法第24条)
労働基準法第24条では、賃金を「現金(または口座振込)で、全額を、一定の期日に支払う」ことが定められています。賃金支払日を過ぎた未払いは違法となるため、必ず期限を守らなければなりません。
また、税金や社会保険料以外の控除を無断で行うことは違法です。もし寮費や食費などの名目で賃金の一部を控除する場合は、労使協定の締結と、具体的な金額・使途の明示が必要になります。
さらに、実習生が残業を行った場合は、割増賃金を含めて正確に支払うことが求められます。

時間外労働と割増賃金の重要性
1日8時間、週40時間を超える時間外労働は、原則として禁止されています(労基法第32条)。ただし、所轄の労働基準監督署へ「時間外労働・休日労働に関する協定届(36協定)」を届け出ることで、限度時間内の時間外労働が可能になります。
時間外労働(残業)や休日労働を行った場合の賃金は、25%以上の割増率で計算して支払わなければなりません(労基法第37条)。
- 違反例:8時間を超えて働かせているのに割増賃金を支払わない
- 違反例:割増額を時給350円など、最低賃金を大幅に下回る水準に設定している
これらは明らかに違法行為です。のちに未払い残業代をまとめて請求されたり、監督署の調査が入る可能性があるため、十分に注意が必要です。
最低賃金法と外国人採用のポイント
最低賃金法では、都道府県別の地域別最低賃金と、産業別の特定最低賃金が定められています。いずれも日本で働くすべての労働者に適用され、外国人技能実習生も例外ではありません。
違反例:最低賃金が時給1,000円の地域で、時給600円の契約を結んで支払う
このような契約は最低賃金法違反となり、契約で定めた金額自体が無効です。実際には最低賃金法上の賃金が適用されるため、後から差額を一括請求される恐れがあります。
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労働安全衛生法で求められる安全管理
日本で働く外国人技能実習生の労働環境を整備するうえで、労働安全衛生法の順守も重要なポイントです。言葉の壁や文化の違いにより、安全対策の周知が不足しがちな点に注意しましょう。

安全衛生教育と就業制限
事業者は、新たに労働者を雇い入れた際、その業務内容に応じた安全衛生教育を実施する義務があります(労働安全衛生法第59条)。危険有害業務にあたる場合には「特別教育」が必須です。
違反例:クレーンやフォークリフト、溶接作業などを無資格・未教育で行わせる
特につり上げ荷重の大きいクレーンの運転やフォークリフト、建設機械の操作などは、有資格者でなければできない業務です(労働安全衛生法第61条)。
企業は、技能実習生が「どの資格を持ち、どの業務が許されているか」を十分に確認する必要があります。
健康診断の実施義務
労働安全衛生法第66条に基づき、雇用時と定期的(1年以内ごと)に健康診断を実施する義務があります。
違反例:1年以上勤続しているのに、健康診断を受けさせていない
外国人技能実習生は、健康保険や日本の医療制度に不慣れな場合が多いです。早期発見・早期治療のためにも、年1回の健康診断を必ず案内し、費用や検診手続きについてもサポートすることが望ましいです。

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労働者災害補償保険法と万が一の備え
労働者災害補償保険(労災保険)は、業務上や通勤途上で負傷・病気・死亡した場合に、療養や休業補償、障害補償、遺族補償などを行う仕組みです。外国人技能実習生であっても、労災保険の適用対象になります。
違反例:仕事中のケガを自己負担させ、治療費や休業手当が支払われない
技能実習生本人が制度を知らないと、「事故にあっても泣き寝入り」になるケースも考えられます。
企業としては、万が一の事故が起きた場合の対応手順や保険の請求方法を事前に共有しておくことが大切です(出典:厚生労働省「労働者災害補償保険制度」)。
まとめ
外国人技能実習生には日本人と同じ労働基準法が適用され、最低賃金や時間外割増など多くのルールを守る必要があります。違反があれば監督署の調査や企業イメージの低下につながりかねません。
適切な労働条件の明示や労災保険への加入など法令遵守を徹底し、母国語対応などのサポート体制を整えることで、トラブルを回避し円滑な外国人採用を実現しましょう。継続的に最新情報を確認し、必要に応じて専門家へ相談することは大切です。
【免責事項】
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の法的アドバイスを行うものではありません。実際の運用にあたっては、最新の関連法令や行政機関のガイドラインをご確認いただくとともに、専門家(行政書士・社会保険労務士・弁護士等)にご相談ください。
参考サイト:外国人技能実習生のみなさんへ

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この記事の監修者

大学卒業後、経営コンサルティング会社に入社し、企業の経営支援に携わる。その後、dodaを運営するパーソルキャリアにて、様々な方の転職支援に従事。その経験を活かし、株式会社JINにて、人材事業を開始。