
外国人雇用を本音で語る「リクアジの編集部」の上田です。本日のトピックはこちら!
・介護ビザの基礎情報
・採用までの具体的なルート
・メリットとデメリットの整理
日本の介護現場では、慢性的な人材不足が深刻化しています。そこで注目されているのが外国人の「介護ビザ」での就労です。とはいえ、在留資格「介護」の取得要件や、特定技能・技能実習との違いは意外と複雑です。この記事では、初めて外国人の採用を検討する担当者でもわかるように、介護ビザの仕組みやポイントを詳しく解説します。

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介護ビザとは?概要を解説

介護ビザの位置づけ
介護ビザは「在留資格『介護』」とも呼ばれ、日本国内で介護福祉士として働くために必要な在留資格です。従来の技能実習制度や特定技能制度では対応しきれない、専門性の高いケアを担う人材を確保できる在留資格として注目を集めています。
雇用先は主に介護業界に限定されますが、在留期間の更新が比較的柔軟である点が強みです。専門職である介護福祉士としての資格が求められるため、一定の教育・試験をクリアした人材しか該当しません。これは事業者側にとって、即戦力となる人材を確保しやすい利点につながります。
- 介護ビザは「介護福祉士資格保有者」が対象
- 在留期間の更新がしやすく、長期的な雇用が可能
- 専門性が高く、即戦力となる人材確保が期待できる

介護分野で働ける4つの在留資格
外国人が日本の介護分野で働くには、大きく分けて4つの在留資格があります。以下、それぞれの特徴を簡単にまとめました。

- 介護ビザ:介護福祉士国家資格が必要
- EPAに基づく外国人介護福祉士:インドネシア、フィリピン、ベトナムが対象
- 特定技能(介護):試験合格で最長5年就労
- 技能実習(介護):技能習得目的、在留期間に制限あり
特定技能は試験に合格すれば資格取得前でも介護職に就けるため、比較的ハードルが低く、多くの施設が導入しやすい制度といえます。技能実習では「習得・移転を目的とした技能の実習」が主眼となるため、実際の介護業務において担える業務範囲や在留期間、待遇などに制限があります。
また、EPA(経済連携協定)に基づく外国人介護福祉士受け入れの対象となるのはインドネシア、フィリピン、ベトナムの3カ国で、看護系学校を卒業しているか、母国で介護士の資格を持っていることが要件です。日本語レベルは国によって異なり、ベトナムはN3相当、フィリピンとインドネシアはN5とされています。4年以内に日本の介護福祉士試験に合格すれば永続的に働くことが可能ですが、不合格の場合は帰国が必要です。


介護ビザの取得要件と日本語力
介護ビザを取得するためには、介護福祉士の資格保有が大前提です。そのうえで、日本語能力や報酬基準など、いくつかの条件をクリアしなければなりません。詳しく見ていきましょう。
介護福祉士資格
介護ビザ取得の必須要件として、「介護福祉士国家資格の取得」が挙げられます。これは、厚生労働省が定める国家試験に合格することで得られる資格で、外国人であっても受験することが可能です。国家試験に合格するためには、以下のようなステップを踏むことが一般的です。
専門学校や短大、大学などで介護福祉士養成課程を修了する。
一定期間(3年以上)の介護業務従事で国家試験受験資格を取得できる。
筆記試験(年1回)と実技試験などをクリアし、合格後は介護福祉士として名簿登録を行い、正式に資格取得
必要な日本語能力(N2程度が目安)
介護ビザ取得に直接JLPT(日本語能力試験)の証明が義務付けられているわけではありません。ただし、介護福祉士国家試験に合格するための学習をスムーズに進めるには、少なくともJLPT N2程度の語学力があることが望ましいとされています。
実際の介護現場では、利用者やその家族とのコミュニケーション、医師・看護師・介護職員など他職種との連携、さらに記録書類の作成など多岐にわたる日本語能力が必要です。試験のための日本語力だけでなく、日常会話や専門用語を使いこなせることが定着と業務遂行に大きく影響します。

報酬要件
外国人を介護ビザで受け入れる際、報酬(給与)水準が日本人介護福祉士と同等以上であることが原則とされています。雇用契約書には、給与額や労働時間、休日などの労働条件を明確に記載し、外国人本人が十分に理解している必要があります。
特に介護現場では、夜勤手当や資格手当といった諸手当の扱いも重要です。企業としては、初回契約時だけでなく、更新時や昇給時にも適正な報酬を維持することが求められます。
仕事の範囲と在留期間・家族帯同

介護で従事できる業務
介護ビザで想定される業務範囲は、介護福祉士として認められた専門業務です。具体的には以下のような業務が含まれます。

また、業務経験を積んだうえで後輩の指導や新規スタッフの教育業務に携わるケースもあります。在留資格「介護」では、介護福祉士としての職務の延長線上にある指導・教育業務も認められやすい傾向があります。
在留期間と更新
初回の在留期間は最長5年まで認められることがありますが、多くの場合は1年、3年といった段階的に付与されます。継続して就労する場合は、在留期限の2~3カ月前から更新手続きを行います。主な更新の条件は以下の通りです。
- 介護福祉士としての業務を継続している
- 雇用契約の内容が、引き続き日本人と同等以上の処遇である
- 過去の在留状況に問題がない(犯罪歴やオーバーステイ等がない)
就労先が変わる場合でも、同じ資格の活動範囲内であれば、必要書類をそろえて更新申請を行うことで在留を継続できます。
家族帯同の可否
介護ビザ保持者は、一定の要件を満たすことで家族を帯同させることができます。帯同が認められるのは、配偶者や未成年の子どもなどで、在留資格は「家族滞在」となります。具体的な要件としては、十分な生活費や住居の確保が挙げられ、雇用主の協力や年収証明などが必要です。
家族帯同が認められると、配偶者は短時間労働(パートタイムなど)も可能になりますが、就労形態には制限があります。

介護ビザ人材の採用ルート
外国人が在留資格「介護」で日本の介護施設に就職するための採用ルートは、大きく以下の3つに分類されます。自社が求める人材像や採用のタイミングに合わせて、最適なルートを見極めることが重要です。
専門知識と技術を身につけ、国家資格取得を目指す代表的なルート。
他の在留資格で介護現場を経験しながら実務を積み、介護福祉士試験に合格する。
例:技能実習や特定技能で働いた後に受験資格を得る方法。
母国で看護・介護資格を持ち、日本で受験要件を満たして介護福祉士試験に合格する。
EPA(経済連携協定)などを活用し、高い専門性と日本語能力を期待できる。
詳しい流れは以下を参考にしてみてください。

養成施設ルート:2年の学びで資格取得
養成施設ルートは、海外からの留学生が日本の介護福祉士養成施設で2年以上のカリキュラムを履修し、国家試験に合格して介護福祉士になる方法です。具体的な流れは以下の通りです。
- 日本語学校で一定期間学習(N2レベル以上を目指す)
- 介護福祉士養成施設に入学し、専門知識と技術を習得
- 国家試験受験 → 合格 → 介護福祉士資格取得
- 介護ビザ申請 → 在留資格「介護」で就職
このルートを経る外国人留学生は、日本の介護現場の環境や文化を理解したうえで就職するため、定着率が高いという特徴があります。企業側も、在学中から実習やアルバイトを通じて交流を深めることで、適性を見極めやすいメリットがあります。
実務経験ルート(特定技能や技能実習からの移行など)
すでに特定技能や技能実習で介護施設に勤務している外国人が、実務経験を積んだのちに国家試験を受け、介護ビザへ移行するパターンも増えています。特定技能1号であれば、所定の試験に合格すれば介護分野で働くことができますが、国家資格はまだ未取得というケースがほとんどです。
このルートは、現場での実務を通じて実践的なスキルを習得しやすいというメリットがあります。一方で、就労中は業務と勉強を両立する必要があるため、企業側のサポート体制が重要です。
母国で資格を持つ人材の採用ルート
母国で看護や介護の資格を取得している外国人を採用するルートは、高度な専門性と実務経験を活かせる点が魅力です。EPA(経済連携協定)などを利用し、一定の日本語力や受験要件を満たした人材が来日後に介護福祉士を目指すケースが増えています。
受け入れには制度理解が欠かせないため、募集段階から各種書類や研修計画を整え、就業後も継続的なフォローを行うことが重要です。今後も海外の優秀な人材を安定的に確保するには、職場環境の整備や語学力向上プログラムの実施が不可欠であり、利用者やチームにとっても相乗効果が期待できます。

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採用メリットとデメリット
外国人介護人材の活用は、多文化共生を促進し、介護職場の人手不足を補う大きなチャンスです。一方で、生活面や在留資格管理などの課題があることも事実です。ここでは、メリットとデメリットを整理し、自社に合う採用戦略を検討するヒントにしましょう。

メリット
介護ビザは、在留資格の更新が可能であり、長期的に働く見込みがある人材を確保できる点が大きなメリットです。特定技能や技能実習では在留期間の上限が定められており、一定期間を過ぎると帰国する必要が生じます。しかし、介護ビザを保持する外国人介護福祉士であれば、長期間の雇用による職場定着が期待できます。
さらに、介護福祉士としての配置人数に応じて、介護報酬の加算が受けられる場合があります。これは事業者にとって経営面でのメリットにもつながるため、外国人でも介護福祉士資格を持つ職員を確保する価値は高いといえます。
介護保険制度に基づいて介護サービスを提供した事業所に対し、利用者の一部負担と国・自治体等の公費から支払われるお金のことです。施設は提供したサービス内容に応じて報酬を受け取り、加算を取得することで通常より多くの収益を得られます。
デメリット
外国人介護人材を採用するうえで、生活面のサポートが必要となるケースが多い点に留意しましょう。例えば、住宅探しや銀行口座の開設、各種行政手続きなど、日本人には当たり前の手続きも初めて経験する外国人にとっては大きなハードルです。事業者として、通訳・翻訳の手配や生活オリエンテーションなどを行う必要があります。

また、在留資格の更新や変更手続き、家族帯同など入管手続きに関する知識が求められます。手続きを怠ると不法滞在になるリスクもあるため、企業側の責任範囲としてしっかり管理することが重要です。
まとめ
介護ビザは、介護福祉士資格の取得が必須で、長期雇用と家族帯同が可能という大きな特長があり、人材不足の改善に貢献します。特定技能やEPAなど他の制度と比べても、養成施設ルートをはじめ資格取得の選択肢が豊富です。外国人でも介護福祉士を取得すれば、処遇改善加算など事業運営面でのメリットも期待できます。今後も見直しが行われる可能性があるため、常に最新情報を確認しながら制度をうまく活用しましょう。
【参考情報】
厚生労働省「介護福祉士について」
出入国在留管理庁「在留資格『介護』について」
介護福祉士国家試験情報(公益財団法人 社会福祉振興・試験センター)

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この記事の監修者

大学卒業後、経営コンサルティング会社に入社し、企業の経営支援に携わる。その後、dodaを運営するパーソルキャリアにて、様々な方の転職支援に従事。その経験を活かし、株式会社JINにて、人材事業を開始。