急成長する人口大国インド:IT人材の魅力と日本企業が採用すべき理由

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外国人雇用を本音で語る「リクアジの編集部」の上田です。本日のトピックはこちら!

・インドの人口ボーナス期について
・インド社会の概要
・インド人材採用の注意点

世界最大の人口国、インド。経済発展も目覚ましく、2027年までに世界第3位の経済大国になると予想されています。インドには世界を目指す優秀な若者が溢れており、様々な国で活躍し高く評価されているのです。

一方、日本で働くインド人はまだまだ少数派。2023年に発表された在日外国人数のうち、インド人はわずか 1.4%の46,262名でした。かつてはインド料理店で働く人が多い傾向でしたが、現在はIT分野を中心とした高度人材の割合が増えています。

日本貿易振興機構(JETRO)は、2030年の日本は先端IT人材が約55万人不足していると予測しました。IT人材の卵である理工系学位取得者は、中国37.3%・インド20.7%ですが、日本はわずか1.6%という調査結果が報告されています。日本はIT人材を外国に頼らざるを得ない状況なのです。

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インドの基本情報

日本の9倍の面積に、11倍以上の人口がひしめくインド。400とも600ともいわれる民族が住み、それぞれの言語を使っています。様々な宗教が存在し、それぞれ文化が異なります。ひと言では表せない多様性とパワフルさがインドの特徴です。

項目詳細
国名インド共和国(Republic of India)
国土328万7,469平方キロメートル(インド政府資料:パキスタン、中国との係争地を含む)(2011年国勢調査)
国旗黄色(サフラン色)は「勇気」「自己犠牲」、白は「平和」「真理」、緑は「豊穣」「信仰」などを表す(諸説あり)。中央の丸い模様は「アショーカ王のチャクラ(法輪)」。
首都ニューデリー
人口14億1,717万人(2022年世銀資料)
民族インド・アーリヤ族、ドラビダ族、モンゴロイド族等
言語連邦公用語はヒンディー語。他に憲法で公認されている州の言語が21言語。
宗教ヒンドゥー教徒79.8%、イスラム教徒14.2%、キリスト教徒2.3%、シク教徒1.7%、仏教徒0.7%、ジャイナ教徒0.4%(2011年国勢調査)
1人あたりGDP2,485ドル(2023年:世銀資料)

人口ボーナス期が続くインド

情報提供元: datacatalog.worldbank.org

インドは現在、労働力となる生産年齢人口(15〜64歳)の割合が高い「人口ボーナス期」の最中にあり、ピークを迎えるのは2034年頃と予想されています。2023年のデータでは、インドの生産年齢人口は全人口の67.8%。2032年ごろには68.9%を占めると予想されています。

これはインドが今後しばらく経済成長し続け、教育や雇用創出などの条件が合えば国際競争力が飛躍的に高まることを意味しています。その一方で、日本の人口ボーナス期は1990年代から2000年代初頭に終了。働く人よりも支えられる人の方が多くなる「人口オーナス期」に突入しており、労働力不足や社会保障の維持など大きな問題を抱えているのです。

IT大国インドの高度人材

インドはIT大国として有名です。1960年代からインドの科学技術分野の中核都市だった南部の高地ベンガル―ル(バンガロール)は現在、インドのシリコンバレーと呼ばれており、優秀な人材を数多く排出しています。

GAFAMはじめ世界的なIT企業のトップにインド系がとても多いという現状は、インドが世界のIT産業をリードする存在であることを示しています。

インドがIT大国となった理由

インドがIT大国となった背景には、インド政府による後押しと2000年問題、インドとアメリカの時差、インド人の能力の高さなどの要因がありました。

インド政府は1980年代からソフトウェア開発などに注力。その後2000年問題が叫ばれ、プログラムの修正など細かい作業が必要となりました。そこで注目されたのがインド人エンジニアの高い技術と語学力。加えて、アメリカとインドの時差が約半日であることも有利に働きました。両国が力を合わせれば、24時間体制で作業可能ということ。こうしてインドは、世界のIT産業アウトソーシング国として大躍進し、IT大国へと成長を遂げました。

インド人材の特徴

IT分野で活躍しているインドの高度人材は、ハングリー精神があり問題解決能力が高いことで知られています。とても優秀で英語が流暢であるにもかかわらず、他国の人材と比べて賃金が安いことも大きな魅力です。日本もインドの高度人材に注目しており、数千人のインド人エンジニアを抱える企業が出現しました。

インド政府のデータによるとインドの平均年収は約35.4万円に相当します。(1INR=1.7円換算)
参考:PLFS 2020-21 Annual Report

インドのIT人材が優秀な理由のひとつに、カースト制度があります。インドのカーストは職業別に分かれていて、例えば手を汚す仕事(洗濯や掃除、精肉、漁師など)は下の身分に位置付けられています。

インドは身分を超えた職業選択は基本的にできない社会なのですが、新しい産業であるIT分野は、伝統的な職業カーストの枠に入っていません。あらゆる身分の優秀な若者が、IT分野で就業することを目標に努力しているのです。

インドの社会

世界をリードする先端技術の発達とともに、何千年も変わらない伝統的な慣習が共存しているインド。激しい経済格差、地域格差、教育格差、根強いカースト制度などの問題も抱えています。

インドの歴史と宗教

インドの歴史は、宗教の歴史と深く結びついています。紀元前2500年頃には高度なインダス文明が栄え、その時代には土着信仰が中心でした。その後、中央アジアから侵入したアーリア人によってバラモン教が成立し、これを基にヒンドゥー教が発展します。

紀元前4世紀のマウリヤ朝では仏教が広まり、16世紀のムガル帝国時代にはイスラム教が拡大しました。こうしてインドには多様な宗教が入り交じり、時には宗教間の対立も起こりました。

さらに、19世紀にイギリスの植民地となったことでキリスト教への改宗が進みましたが、それでもヒンドゥー教徒が多数を占める状況は変わりませんでした。

現在でもインドの人口の約8割がヒンドゥー教徒とされています。

カースト制度

インドは1950年に定めた憲法でカースト制度や身分差別を禁じています。しかし今日でも根強く残っているのが現状です。

カースト制度はヒンドゥー教がもたらしました。4つの階級「ブラフミン(司祭)」「クシャトリヤ(武士)」「ヴァイシャ(商人)」「シュードラ(労働者)」に分かれ、さらに職業別に多数のカーストが定められています。最下層に置かれているのは不可触民(ダリット)です。カーストは固定されており、身分を超えた職業選択は困難です。カーストから抜け出すために他の宗教に改宗する人もいます。

しかし前述の通り、IT産業は新しくできた職業であるためカーストに組み込まれていません。どんな身分でもIT産業のエンジニアを目指すことができるのです。

インドの国民性と仕事観

楽観的で陽気、おおらかで寛容な人が多いと言われているインド。人々は信心深く、家族や友人が何より大事です。親子のスキンシップは子どもが成長した後でも続きます。また、結婚は家同士の結びつきを重視して行われることが多く、家柄や条件の釣り合いが取れたお見合い結婚が主流です。

数学が得意

インドは数字の「0(ゼロ)」という概念を発見した歴史をもつことでも知られています。伝統的に理数系の教育を重視しており、二桁以上の掛け算を暗算したり、「インド式計算法」を習得してる人を多く見られます。

インド人の国民性

インドは「人種のるつぼ」と呼ばれるほど多様な文化や価値観が共存しています。そのため、一言で「インド人の国民性」を定義するのは難しいといえます。実際、地域によって大きな違いがあり、一般的には下記のように語られています。

北インド:積極的で外交的な性格とされ、自己主張や社交性が高い人が多いといわれます。
南インド:比較的穏やかで内向的な性格とされ、落ち着いたコミュニケーションを好む傾向があります。

このような地域差は、言語や食文化、宗教観などの要因が複雑に絡み合って生まれたものです。採用活動やチームビルディングの際は、インド国内の多様性を理解しておくことで、よりスムーズなコミュニケーションを図ることができます。

インド人の仕事観

インドの人々は、専門分野への知識が深く、学習意欲が非常に高いといわれています。とりわけ理数系やIT分野など、専門性が求められる領域での活躍が目立ちます。

課題に対してじっくり取り組む姿勢があり、向上心をもって努力を続ける傾向が強いのが特徴です。さらに、自分のスキルや成果に対して誇りを持ち、自信をもって仕事に取り組む姿勢が多くのインド人に見られます。

インド人と一緒に働くときの注意点

「欧米諸国ではなく日本で働きたい」と考えるインド人は多いと言われています。日本には人種差別が無いので仕事しやすいだろう、と考えているそうです。希望と不安を抱いて来日するインドの人々を受け入れるとき、どのような点に注意すべきでしょうか。

職場で注意すること

インドの人々はできないことでも「できる」と言ってしまう傾向にあるため、時間や納期、仕事の手法など、事前にしっかり打ち合わせましょう。指示や目標を明確にして、曖昧な表現は避けること。間違いなどを正すときは個別に呼び出して、穏やかに論理的に説明してください。

政治や宗教について馬鹿にするような発言はせず、家族や趣味の話などで仲良くなりましょう。左手は不浄の手なので、握手したり何かを渡したりするときは必ず右手で行うようにしてください。

生活で注意すること

宗教によって生活スタイルが違います。来日するインド人の宗教をできるだけ早く把握し、対策を考えておくと良いでしょう。来日した後は本人の意向を尊重し、ひとつひとつ確かめながら生活環境を整えてください。

食生活

ヒンドゥー教は牛肉を、イスラム教徒は豚肉を食べません。仏教には菜食主義者が存在し、シク教徒には食のタブーは無いと言われています。

しかし、どの宗教も信仰の度合いや地域差などで食生活が違うので、本人にしっかり確認することが重要。宗教上の理由で飲酒しない人も多いので、歓迎会などの場で強要しないように注意してください。

住環境

家族と過ごすことが多いインドの人々は、1人暮らしに慣れないかも知れません。気の合う同僚とルームシェアできる選択肢を与えてください。トイレや浴室の使い方はインドとずいぶん違います。日本の使用法をしっかり教えましょう。

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日本とインドの関係

日本とインドの関係は、6世紀頃の仏教伝来から始まったといわれます。8世紀には奈良の大仏開眼供養の際、インドの僧・ボーディセーナが来日しました。1952年に正式な国交を樹立し、現在は「特別な戦略的グローバル・パートナーシップ」で結ばれています。

政府開発援助(ODA)

日本が円借款(低金利での資金貸し出し)を一番最初に実施したのは1958年、相手国はインドでした。現在、インドにとって最大の援助国は日本です。日本政府がインド相手に実施している政府開発援助は、2018年までの累計で58,354億円、無償資金協力957億円、技術協力927億円です。

インドの主要インフラ整備や教育・医療など、多岐にわたる分野で日本の協力が活かされています。優秀なIT関連人材を数多く輩出しているインド工科大学は、円借款により設立されました。

対日感情

インドには親日家が多いと言われています。日本がインド発祥の仏教国であること、ともに西欧諸国と戦ったアジア人であること、「おしん」のように苦しい生活にも耐えていること、など同じ価値観を共有していると考えています。

日本のアニメやファッションなども人気が高く、ヘルシーな日本食も好まれています。

対日世論調査結果

2024年3月、外務省は世界各地で対日世論調査を実施しました。その結果、「日本を信頼している」人が最も高かったのはインドで、その割合は96%。インドの人々が日本に対し、とても良い感情を抱いていることが明らかとなりました。

まとめ

日本では、インドの高度人材を雇用する動きが高まっています。これから日本で不足するIT人材の多くを、インドのエンジニアが埋めることになるでしょう。世界で最も日本を信頼している国からやってくる人々が、その素晴らしい能力を発揮できるよう、受け入れる私たちは環境作りに努めたいものです。

参考資料
外務省:インド基礎データ
アジア研究所:インド経済と人口ボーナス
JETRO:在日インド高度人材に関する調査報告書
日本経済新聞:楽天にはインド人が数千人 理系の頭脳を戦力に
JICA:対インド協力の現状
産経新聞:「日本信頼」インドで96% 外務省の海外世論調査
外務省:令和5年度海外対日世論調査

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この記事の監修者

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キャリアアドバイザー
秦 秀斗

大学卒業後、経営コンサルティング会社に入社し、企業の経営支援に携わる。その後、dodaを運営するパーソルキャリアにて、様々な方の転職支援に従事。その経験を活かし、株式会社JINにて、人材事業を開始。

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