
外国人雇用を本音で語る「リクアジの編集部」の上田です。本日のトピックはこちら!
育成就労制度の目的と背景
育成就労制度と技能実習制度の違い
育成就労制度のメリット・デメリット
この記事では、育成就労制度の目的と背景について詳しく解説しています。企業が安心して外国人雇用を進めるために必要な情報を知りたい方にとって、必見の内容です。

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【基礎知識】育成就労とは?
育成就労制度は、日本の産業発展のために外国人材を育成・確保することを目的としています。この制度では、外国人が3年間の育成期間を通じて必要なスキルを習得し、特定技能1号の水準に到達することを目指します。
従来の「技能実習制度」は廃止され現状の労働力不足を背景に、日本国内の人材育成に重点を置く形で再編される予定です。

制度背景と変更の理由
育成就労制度は、外国人労働者が日本でスキルを高め、適切な環境で働ける新たな制度として注目されています。

育成就労制度はいつから施行される?
育成就労制度を含む改正法案は、2024年の通常国会で審議され、、2027年までに施行される予定です。施行後も、現行の技能実習制度からのスムーズな移行を目的として、約3年間の移行期間が設けられます。
この期間中は、現行の技能実習制度も引き続き利用できるため、外国人労働者と受け入れ企業が徐々に新制度に適応できるように配慮されています。
「育成就労」を取るための条件
育成就労には、就労開始時点での日本語能力に関する要件が設定されています。具体的には、以下の条件が求められます。
育成就労制度の「転籍」とは?
育成就労制度では、これまでの技能実習制度では原則不可能だった「転籍」(別の企業に移ること)が可能になります。例えば、受け入れ企業が倒産した場合など、「やむを得ない事情」がある場合に限られていた転籍のルールを明確化し、手続きもスムーズになる予定です。
さらに、本人の希望で職場を変えることも条件付きで認められます。具体的には、以下の要件を満たす必要があります。
- 1~2年以上の同一機関での勤務(職種によって年数は異なります)
- 技能検定試験の基礎級に合格
- 日本語能力試験(A1~A2レベル)に合格
- 転籍先が同じ業務内容で、適正な受け入れ基準を満たすこと
このように転籍が認められることで、労働環境が過酷な場合に「逃げられない状況」を改善し、外国人労働者がより働きやすくなるよう配慮が進んでいます。
育成就労制度で受け入れ可能な職種について
育成就労制度では、外国人労働者の就労が可能な職種が特定の産業分野に限定されています。技能実習制度では90職種・165作業と幅広く受け入れ可能でしたが、育成就労制度は特定技能制度と同じ16分野に絞られ、以下の職種が対象です。
- 介護
- ビルクリーニング
- 工業製品製造業(素形材、産業機械、電気電子情報関連製造業を統合)
- 建設
- 造船・舶用工業
- 自動車整備
- 航空
- 宿泊
- 自動車運送業
- 鉄道
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造
- 外食
- 林業
- 木材産業

監理団体の「監理支援機関」への名称変更
これまで技能実習制度で、技能実習生や受け入れ企業をサポートしてきた「監理団体」は、新制度で「監理支援機関」に名称が変わり、より独立した組織を目指す予定です。
悪質な監理団体の存在を受けて、国は育成就労制度における監理団体の許可要件を厳しくし、外部監査人の設置を義務付ける方針です。この義務付けにより、不法就労や人権侵害などの問題に対して迅速な対応が可能になると期待されています。
また、現在の監理団体が「監理支援機関」になるためには、再申請が必要です。具体的な審査内容についてはまだ決定していないため、今後の情報に注目する必要があります。

育成就労制度における日本語能力向上
育成就労制度では、働きながら日本語を学び、段階的に日本語能力を高めることが求められます。具体的な要件は次のとおりです。
就労前:日本語能力試験N5に合格すること、または認定された日本語教育機関で基礎講習を受講することが求められます。
1年目の終了時:日本語能力試験N5の再度合格を目指し、基礎的な技能検定試験にも合格することが推奨されます。
3年目の終了時:日本語能力試験N4に合格し、技能検定3級または特定技能1号評価試験に合格することが期待されます。

育成就労制度と技能実習制度の違い
育成就労制度と技能実習制度には、目的や受け入れ職種などに大きな違いがあります。各制度の詳細な違いについては、下記の表をご覧ください。
項目 | 育成就労制度 | 技能実習制度 |
---|---|---|
目的 | 人材確保・人材育成 | 国際貢献・途上国への技術継承 |
受入れ可能な職種 | 特定技能と同じ職種(16分野) | 90職種(165作業) |
在留期間 | 3年が基本 | 最長5年間 |
転籍 | 同一企業で1年以上働いた後、可能 | 原則不可 |
日本語能力 | 技能検定試験の基礎級や一定水準以上の日本語能力試験の合格が必要 | 第1号技能実習・第2号技能実習のみ基準あり※日本語能力は不問 |
育成就労制度では、特定技能への資格移行がよりスムーズになるよう職種を調整し、さらに一定条件のもとで転籍が可能になっています。これにより、外国人労働者がより柔軟な働き方ができる制度となっています。

育成就労制度のメリット・デメリット

企業にとってのメリット
長期雇用が可能
育成就労制度では、特定技能への移行がしやすくなっており、3年間の在留期間が終了しても、引き続き日本で働くことができる可能性が高くなります。特定技能1号を取得すれば、最長5年間の滞在が可能で、特定技能2号まで取得すると、家族も日本に呼び寄せることができます。

高い日本語能力を持つ人材の受け入れ
育成就労制度では、一定レベルの日本語試験に合格することが条件とされており、日本語の基礎が身についている人材を受け入れることができます。
これにより、企業は受け入れた外国人に対して日本語の基礎から教える手間が省け、日常的な業務指示やコミュニケーションがスムーズに進むことが期待できます。
不法就労防止の強化
外国人が適切に働けるように「監理支援機関」と呼ばれる新しい組織が設置され、これまでの管理体制がより厳しくなりました。この監理支援機関が定期的に外部からの監査を行うことで、不法就労(決められた仕事以外の仕事をしたり、許可がないのに働いたりすること)を防ぎやすくしています。
この仕組みにより、企業側も外国人労働者を安心して雇いやすくなります。万が一、働く中で問題が発生した場合にも、監理支援機関がサポートしてくれるので、企業にとっても、外国人労働者にとっても、より安心して働ける環境が整備されています。

企業にとってのデメリット
採用コストの増加
育成就労制度では、企業が外国人労働者の渡航費や送り出し機関への手数料の一部を負担する必要があり、初期の費用が技能実習制度よりも高くなる可能性があります。渡航費や手数料などで1人あたり50万円程度の費用がかかることも考えられます。
また、企業にとっては受け入れ準備や教育にかかるコストが増える点にも注意が必要です。
転職・転籍のリスク
同じ企業で1年以上働いた場合に、他の企業へ転職・転籍ができるルールがあります。これにより、せっかく育成した人材が別の企業に移ってしまう可能性があります。
特に、給料や福利厚生が良い都市部の企業への転職が増える可能性が高く、地方の企業にとっては人材を安定して確保することが難しくなることが懸念されます。地方の企業が人材を引き留めるには、働きやすい環境や魅力的な福利厚生を整えることが重要です。
このように、育成就労制度では人材が転職・転籍しやすくなっているため、企業にとっては人材流出を防ぐための工夫が必要です。

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まとめ
育成就労制度は、特定技能への移行を円滑化するために設計中で、現在は施行前の段階です。対象職種は特定技能の分野と重なり、新たな在留資格「育成就労」のもと、最長3年間の在留が認められる見込みとなっています。これにより、技能実習制度で課題とされた実態との乖離を改善し、外国人労働者がスムーズに日本で働きながらスキルアップできる環境を整備する狙いがあります。細則は主務省令待ちのため、続報が入り次第更新します。

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この記事の監修者

大学卒業後、経営コンサルティング会社に入社し、企業の経営支援に携わる。その後、dodaを運営するパーソルキャリアにて、様々な方の転職支援に従事。その経験を活かし、株式会社JINにて、人材事業を開始。