
外国人雇用を本音で語る「リクアジの編集部」の上田です。本日のトピックはこちら!
・特定技能「農業」が解決する人手不足の現状
・特定技能1号「農業」の取得方法
・特定技能「農業」の特徴
日本の農業は深刻な人手不足に直面しています。外国人材の力を借りることで、農業現場の効率化や生産性向上を実現するこの制度は、多くの農家にとって新たな可能性を広げています。本記事では、特定技能「農業」の仕組みやメリット、導入方法について詳しく解説します。ぜひ最後までご覧ください!
特定技能「農業」とは?
特定技能「農業」は、日本の農業分野での深刻な人手不足を解消するために設けられた在留資格です。この資格により、外国人が耕種農業(野菜や果物の栽培・収穫)や畜産農業(家畜の飼育管理)をはじめとする農業関連業務に従事できます。対象となるのは、技能評価試験と日本語試験に合格した方や、技能実習2号を修了した方です。特定技能「農業」は受け入れ人数に上限がなく、長期間の就業が可能なため、農業現場にとって重要な即戦力として期待されています。

日本の農業が直面する課題
日本の農業は、深刻な後継者不足と高齢化に直面しています。過去10年間で農業労働力は約100万人減少しており、基幹的農業従事者の68%が65歳以上という現状です。一方で、49歳以下の従事者はわずか11%にとどまり、若年層の参入が課題となっています。この状況を受け、経営規模の拡大や雇用労働力の増加といった対応が進んでいるものの、人手不足の解消には至っていません。また、基幹的従事者の平均年齢は67歳を超えており、年々労働力の減少が進む傾向にあります。

このような中、人手不足を補うために1993年に創設された技能実習制度では、発展途上国から技能実習生を受け入れてきました。農業分野での受け入れは年々増加傾向にありますが、制度の目的と実態にギャップがあることも指摘されています。

農業分野における外国人材の受入れ状況
令和5年12月末時点で、農業分野で働く技能実習生と特定技能外国人の総数は約5万4千人です。そのうち、特定技能外国人は制度創設から5年間で約2万4千人に達し、年々割合が増加しています。国籍別では、ベトナム人が最も多く、次いでインドネシア人が続いています。このように、特定技能外国人は農業分野で重要な役割を担っています。

特定技能「農業」で従事できる業務
特定技能「農業」では、「耕種農業全般」と「畜産農業全般」、およびそれらに関連する業務に従事することができます。次に、この2つの業務区分について詳しく見ていきましょう。

耕種農業
出入国在留管理庁のWEBサイトによると、耕種農業区分の概要や主な業務は以下の通りです。
耕種農業は、栽培管理や農産物の集出荷・選別作業などの農作業全般を指します。特定技能2号では、これらに加えて「管理業務(農場管理、品質管理、人材育成など)」が含まれます。具体的な業務内容としては、下記をご覧ください。
- 土壌づくり(作物に応じた調整)
- 施肥作業(肥料の投入や管理)
- 種子・苗木の取扱い(選定・植え付け)
- 資材・装置の取扱い(農機具や設備の使用)
- 栽培に関する作業(手入れ・管理)
- 安全衛生業務(作業環境の整備など)
これらの内容から、耕種農業とは、田畑を耕し、種を撒き、農作物を育てるといった一般的な農業のイメージに該当すると考えて問題ありません。
畜産農業
畜産農業については、出入国在留管理庁のWEBサイトで以下のように説明されています。
畜産農業では、飼養管理や畜産物の集出荷・選別作業といった農作業全般を担当します。また、特定技能2号では、これらに加えて「農場管理」「品質管理」「人材育成」などの管理業務が追加されます。
- 各畜種に応じた器具の取扱い
- 家畜の取扱いや観察
- 飼養管理(餌やりや健康管理)
- 生産物の取扱い(乳製品や肉類の出荷準備)
- 安全衛生業務(作業環境の整備)
これらの内容から、畜産農業は養牛、養豚、養鶏、養羊、養蜂、酪農など、家畜を育てたり管理したりする業務を指しており、一般的な畜産業務と考えて問題ありません。
関連する業務とは?
「関連する業務」とは、農業分野の主要な作業を支える補助的な業務を指します。具体的には、農畜産物の製造・加工(野菜の洗浄やパック詰め、乳製品や精肉の加工など)、運搬(収穫物の輸送や出荷準備)、販売(直売所や市場での接客や販売業務)などがあります。また、冬季の雪国では、農業施設や農道を維持するための除雪作業も含まれます。これらの作業は、農業経営の効率化や消費者に高品質な農畜産物を届けるために重要な役割を果たしています。
実際の業務内容についての注意点
「耕種農業」では栽培管理業務、「畜産農業」では飼育管理業務が必ず含まれている必要があります。関連業務だけを行わせることは、他の分野と同様に認められていません。認められていない業務に従事させた場合、不法就労助長罪が適用される可能性があるため注意してください。

特定技能1号「農業」の取得方法
農業分野における特定技能の在留資格を取得するための要件について説明します。特定技能1号の在留資格を取得するためには、外国人が次のいずれかの条件を満たす必要があります。要件について詳しく確認していきます。
①試験に合格する
→農業技能測定試験、日本語能力試験
②技能実習からの移行
→技能実習2号を良好に修了する
【パターン①】特定技能評価試験と日本語試験に合格する
特定技能「農業」の在留資格を取得するために必要な農業技能測定試験は、「耕種農業全般」と「畜産農業全般」の2つのカテゴリーに分かれて実施されています。この試験は、農業分野の技能や知識を評価する重要な要素です。
試験の運営は一般社団法人全国農業会議所が行っており、詳細情報や受験手続きについては公式ホームページを参照してください。
項目 | 内容 |
---|---|
試験科目 | 学科試験、実技試験、日本語試験 |
問題数 | 約70問 |
試験時間 | 60分 |
試験方式 | CBT方式(コンピュータ上で実施) |
実施頻度 | 原則として毎月実施 |
日本語試験について
日本語能力試験には2つの選択肢があり、いずれかで定められた合格基準を満たす必要があります。
【パターン②】技能実習2号からの移行
特定技能1号「農業」を取得するためのもう一つのルートは、「農業分野の技能実習2号から移行する」ことです。
技能実習2号は、1993年に導入された技能実習制度に基づく在留資格の一つで、日本で一定期間の技能実習を行い、所定の要件を満たすことで取得できます。この制度は、外国人が日本の職場で実践的な技術を学ぶことを目的としており、特定技能への移行を視野に入れた仕組みでもあります。
- 技能実習2号を良好に修了すること
- 技能実習の職種・作業内容と特定技能1号の職種が一致していること

特定技能「農業」外国人を採用する方法
農業分野で特定技能外国人を受け入れる企業(受け入れ機関)に求められる要件について解説します。
支援体制の準備
特定技能「農業」分野で外国人材を受け入れる際には、事前ガイダンスの実施や日本語学習の支援、住宅の確保、相談や苦情への対応など、さまざまな支援体制を整える必要があります。この支援体制の整備方法には、自社で対応する方法と、登録支援機関に委託する方法の2つがあります。
自社で支援体制を構築する場合、過去2年間に外国人材を受け入れた実績が求められるほか、外国人材との円滑なコミュニケーションを図るために通訳を雇うなど、追加の準備が必要になることもあります。
農業特定技能協議会への加入
特定技能外国人の在留申請を行う前に、協議会への加入が必要です。加入の手続きは「申し込み → 事務局での確認 → 加入通知の受領」という流れで進みます。入会費や年会費はかかりませんが、支援計画の作成を代行する登録機関が申請を行うことはできないので注意が必要です。
① 入会申請フォームへの入力
② 事務局での確認
③ 加入通知の受領
詳細については農林水産省ホームページからご確認ください。

特定技能「農業」の特徴
特定技能「農業」には、業務範囲の広さや日本語能力の高さ、長期就労が可能など、農家にとって大きなメリットがあります。以下では、その特徴を詳しく解説します。
特定技能「農業」は派遣が可能
特定技能「農業」では、直接雇用だけでなく派遣雇用も可能です。
特定技能の中で派遣が認められているのは「農業」と「漁業」のみで、季節や地域によって仕事の内容や期間が異なるためです。繁忙期と閑散期が明確な農家では、繁忙期に派遣を利用することで人手不足を補うなど、雇用の柔軟性を活かせます。なお特定技能外国人を農業分野で派遣形態で受け入れるには、以下の条件を満たす必要があります。
- 農業または関連業務を行う者であること
- 地方公共団体または農業関係者が資本金の過半数を出資していること
- 地方公共団体や農業関係者が業務執行に関与していること
- 「特定機関」に該当すること
受け入れ人数に上限なし
特定技能「農業」では、1事業者あたりの受け入れ人数に上限がないため、必要な人数の外国人を雇用することが可能です。一方、技能実習では常勤職員数に応じて受け入れ人数に上限があります。例えば、夫婦2人で農業を営む農家では、2人までしか受け入れられません。
日本の農家は高齢化が進み、担い手が減少しているため、より多くの外国人を受け入れられる特定技能「農業」は、こうした課題に対する大きなメリットとなります。

特定技能「農業」のメリット
特定技能「農業」には、技能実習と比べて多くのメリットがあります。専門的な農業業務に加え、関連する付随業務にも対応でき、業務範囲が広いのが特徴です。一方、技能実習は仕事内容や従事時間に制限があり、柔軟性に欠けます。
また特定技能外国人は、日本語能力が比較的高い場合が多いため、現場での意思疎通がスムーズです。日本人との橋渡しや管理業務を任せることも可能で、コミュニケーションミスを減らす強みがあります。さらに、就労期間も特定技能の魅力です。技能実習は最長3年間ですが、特定技能では5年間帰国せずに働けます。特定技能2号を取得すれば在留期間の制限がなくなり、長期的な就労も可能です。繁忙期と閑散期に合わせた柔軟な勤務も選べ、最大10年間働くことができます。
これらの理由から、特定技能「農業」は農家にとって柔軟性が高く、実戦力のある人材を確保できる制度です。

まとめ
特定技能「農業」は、日本の農業が抱える人手不足や高齢化という深刻な課題に対処するための重要な在留資格です。この制度は、幅広い業務範囲と柔軟な雇用形態を提供し、日本語能力の高い人材を迎え入れることで、現場の効率化と生産性向上を実現します。技能実習との違いやメリットを理解し、適切に活用することで、農業経営の課題解決につながるでしょう。
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この記事の監修者

大学卒業後、経営コンサルティング会社に入社し、企業の経営支援に携わる。その後、dodaを運営するパーソルキャリアにて、様々な方の転職支援に従事。その経験を活かし、株式会社JINにて、人材事業を開始。