
外国人雇用を本音で語る「リクアジの編集部」の上田です。本日のトピックはこちら!
・外国人労働者の年収の実態
・賃金設定の注意点
・日本と出身国の給与差
「外国人労働者は賃金が安い」というイメージをお持ちではありませんか?外国人材は日本の労働市場にとって欠かせない存在です。本記事では、外国人労働者の在留資格ごとに給料の実態を詳しく解説します。適正な賃金設定と働きやすい環境づくりについて、一緒に考えてみましょう!
外国人労働者の給料相場とは?
厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、2021年の外国人労働者の平均年収は338万円で、日本人労働者の平均年収489万円を約3割下回ります。業種別では、建設業で日本人平均の約半分、製造業や小売業、医療福祉でも低い水準が目立ちます。一方、教育・学習支援業では外国人の平均年収が629万円と日本人を上回り、高度なスキルを持つ労働者が多いことが影響しています。これらの結果から、多くの外国人労働者は日本の労働力不足を補う役割を担いながらも、全体的に低賃金で働く現状がうかがえます。

賃金構造基本統計調査より「リクアジ」が作成
在留資格別で見る外国人労働者の平均賃金
在留資格の種類 | 平均賃金(月額) |
---|---|
専門的・技術的分野 | 296,700円 |
特定技能 | 198,000円 |
身分に基づくもの(永住者等) | 264,800円 |
技能実習 | 181,700円 |
その他(特定活動など) | 231,300円 |
出典:厚生労働省 令和5年賃金構造基本統計調査の概況
外国人労働者の平均賃金を見ると、専門的・技術的分野や身分に基づく在留資格を持つ人の賃金が比較的高い傾向にあります。専門的・技術的分野では、高度なスキルを求められる職種や経営者層が含まれるため、平均賃金が高くなる要因となっています。また、「技術・人文知識・国際業務」の資格では、金融業やエンジニアなど賃金水準が高い業界での就業が可能なことも関係しています。
一方、身分に基づく在留資格を持つ永住者などは、日本人と同等の職業選択が可能で、勤続年数が長くなることで賃金が自然に上昇しやすい点が特徴です。このような条件が、他の在留資格との差を生み出していると言えるでしょう。
それに対して、特定技能や技能実習の平均賃金は低めにとどまります。これらの資格は特定の業種・職種に限定されており、特定技能は14分野、技能実習は86職種と選択肢が少ないため、賃金水準の低い仕事が多くなりがちです。さらに、これらの資格は在留期間に制限があるため、勤続年数が短く、賃金が上がる機会が限られている点も要因の一つです。

外国人労働者の出身国の平均給与水準
日本で働く外国人労働者の出身国では、一部現地の平均給与が日本より大幅に低いことが一般的です。特にベトナム、インドネシア、フィリピンなどはその傾向が強く、日本での収入の魅力が大きな動機となっています。このような背景を踏まえ、日本での賃金と母国の給与水準の差がどのように形成されているのか、詳しく見ていきましょう。
ベトナムの平均年収と現状
日本貿易振興機構(JETRO)の調査によれば、2022年のベトナムの平均年収は約48万円(月収約4万円)です。一方、日本の平均年収は443万円で、約9.2倍の差があります。しかし、ベトナムでは経済成長が著しく、2019年以降、賃金が大幅に上昇しています。特に2022年には最低賃金が平均6%引き上げられたことが、賃金上昇の要因となりました。
さらに、外国人観光客の受け入れ再開や外資系企業の市場参入が進む中で、ベトナムの給与水準は今後も向上する見込みがあります。

インドネシアの平均年収と現状
インドネシアの平均年収は約31万円(月収約2万9,000円)で、日本の平均年収443万円と比較すると、約11.6倍もの差があります。首都ジャカルタでは平均年収が約70万円と全国平均を大きく上回るものの、日本との格差は依然として大きいです。
さらに、学歴別の賃金を見ると、高学歴ほど収入が高い傾向が明確です。大学卒の平均年収は57万2,000円、高卒の平均年収は34万円とかなりの差があります。インドネシアは経済発展が進む一方で、日本と比較した給与水準の低さが、外国人労働者の日本進出の背景として挙げられる要因の一つといえます。
参考:インドネシア中央統計庁

フィリピンの平均年収と現状
フィリピンの平均年収は約31万円(月収約2万6,000円)で、日本の平均年収と比べると大幅に低い水準です。この低さの背景には、物価が安いため、比較的低収入でも生活が成り立つ経済構造があります。例えば、ローカル食堂での食事は1食100円程度で済みます。
地域別に見ると、首都マニラの平均年収は約31万円、セブ島では約30万円とほぼ同等です。セブ島は外資系企業のアウトソーシング拠点となっており、IT企業やコールセンターが多く集まっています。特にセブ市内で働くと比較的高い収入が得られる可能性があります。こうした地域や職種による違いが、フィリピンの収入事情を特徴づけています。
外国人労働者の採用における給料設定の注意点
最低賃金を下回らない給与設定
日本の最低賃金は、国籍に関係なく全ての労働者に適用されます。たとえ技能実習生であっても、最低賃金を下回る賃金を設定することは法律違反です。また、教育の手間や日本語能力に難があることを理由に賃金を下げることも許されません。仮に最低賃金を下回る賃金で契約した場合、その契約は無効とされ、最低賃金額で締結されたものとみなされます。
賃金設定においては、職務内容や経験、能力による差が認められる一方、同じ仕事内容で賃金差をつけることも許されません。企業は賃金基準を明確にし、合理的な運用を心がける必要があります。最低賃金は労働者保護の基盤であり、企業にとって遵守すべき基本です。
「地域別最低賃金全国一覧」はこちら
外国人労働者に適用される日本の労働法令
外国人労働者にも、労働基準法や最低賃金法、労働安全衛生法、雇用保険法などの労働関係法令が適用されます。これらの法令は、国籍や信条などを理由に労働条件で差別することを禁じており、雇用保険への加入も義務付けています。
一方、労働内容や能力の違いに基づく賃金差は合理的とされる場合もあり、適切な運用が求められます。また、日本の安定した雇用制度や充実した福利厚生、治安の良さが外国人労働者にとって魅力的な要素となっています。企業はこれらを活用しつつ、法令遵守を徹底することが重要です。
給料設定のポイント
外国人労働者を採用する際、給与設定と福利厚生の工夫が重要です。まず、同業他社の平均賃金より高めの設定が求職者に魅力的です。また、多くの外国人労働者は年収よりも月収を重視するため、月収を明確に提示することが効果的です。さらに、少額でもボーナスや残業代の見込みを記載すると好印象を与えます。
福利厚生面では、社員寮の有無が重要です。特に転居を伴う場合、初期費用を負担できない労働者も多いため、低額な自己負担で利用できる寮を提供することで、求職者の関心を集めやすくなります。

賃金が上がらない日本は選ばれる国になれるか?
近年、日本の平均賃金は年々下がり続けており、他国との競争力が弱まっています。この現状は、日本で働くことを検討している外国人労働者にとって大きな課題となっています。例えば、韓国などの近隣諸国では賃金が着実に上昇しており、日本との差が広がっています。このままでは、外国人労働者にとって日本が魅力的な働き先とは言えなくなる可能性があります。
この状況を改善するためには、賃金の向上はもちろんのこと、外国人労働者が働きやすい環境を整えることが必要です。生活支援の充実、キャリアアップの機会提供、そして社会保障制度の強化などが挙げられます。これらの取り組みを進めることで、外国人労働者の満足度を高め、「選ばれる国、日本」を実現することができるでしょう。
順位 | 国名 | 平均月給 (JPY) |
---|---|---|
1位 | スイス | 1,216,650円 |
2位 | ルクセンブルク | 994,950円 |
3位 | アメリカ合衆国 | 968,250円 |
4位 | アイスランド | 966,150円 |
5位 | ノルウェー | 849,750円 |
20位 | 韓国 | 417,600円 |
29位 | 日本 | 371,400円 |
※1ドル150円計算:参考サイト
まとめ:外国人労働者の受け入れ拡大で日本の賃金はどうなる?
低賃金で働く外国人労働者の増加は、日本人の賃金上昇を妨げる可能性があります。外国人労働者が増えれば需給が緩み、全体的な賃金上昇圧力が弱まる恐れがあります。高度なスキルを持つ人材は積極的に受け入れるべきですが、単純労働者を大量に受け入れる政策には慎重さが求めた方が良いとの声もあります。
この問題をどのように捉え、どのような未来を描くべきか?外国人労働者の受け入れは、私たち日本社会の根幹をどう変えるのか、いま一度考える時ではないでしょうか。
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この記事の監修者

大学卒業後、経営コンサルティング会社に入社し、企業の経営支援に携わる。その後、dodaを運営するパーソルキャリアにて、様々な方の転職支援に従事。その経験を活かし、株式会社JINにて、人材事業を開始。