ミャンマー人労働者の採用のポイント:文化・仕事観を徹底解説

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外国人雇用を本音で語る「リクアジの編集部」の上田です。本日のトピックはこちら!

・ミャンマー人労働者の文化的背景と国民性
・ミャンマー人を採用する際の注意点
・日本とミャンマーの関係性とミャンマー人の対日感情

日本で働くミャンマー人が増えています。厚生労働省によると、2023年10月現在で71,188名のミャンマー人が外国人労働者として入国しました。2022年の入国数は47,498名で、その伸び率は実に49.9%。現在、ミャンマー人労働者数は外国人労働者の3.5%に過ぎませんが、今後は確実な増加が見込まれ、日本経済の担い手として期待されています。

ミャンマーは日本と同じアジアの一国ですが、軍によるクーデターが起きたり、ノーベル平和賞を受賞したアウンサンスーチー氏が軟禁されたりと日本に伝わる情報は断片的。また、仏教国ではありますが、日本の仏教とは種類が違うようです。そんな国から日本に働きに来る人々は、どんな価値観を持っているのでしょうか。ミャンマーの人々と働く上で、受け入れる私たちが押さえておきたいポイントについてまとめました。

ミャンマーの基本情報

ミャンマー(旧ビルマ)は東南アジアに位置する国で、首都はネピドー、最大都市はヤンゴンです。主要言語はビルマ語で、英語や少数民族の言語も使用されています。仏教が主要宗教で、国民の約90%が信仰しています。農業が経済の基盤で、米や天然資源の輸出が重要です。2021年の軍事クーデター以降、政治的混乱が続き、国内では抗議活動や武力衝突が発生しています。国際社会の制裁や援助が状況改善に向けた重要な課題となっています。

項目内容
国土68万平方キロメートル(日本の約1.8倍)。タイ、ラオス、中国、インド、バングラデシュと国境を接する。
首都2006年にヤンゴンからネーピードーに移転。
人口5458万人、ビルマ族が約70%、135種の少数民族が居住。
平均年齢28.98歳(2020年、国連調べ)
宗教仏教(90%)、キリスト教、イスラム教など。
1人あたりGDP約1,105ドル(2021/22年度、IMF推計)

ミャンマーの平均年収は約38万円で、日本と比較すると大幅に低い水準となっています。

国名と国旗

ミャンマーの正式名称はミャンマー連邦共和国(Republic of the Union of Myanmar)。1989年まではビルマと呼ばれていました。

国旗は上から黄色・緑・赤の三色に白い星で、黄色は国民の団結、緑は平和と豊かな自然環境、赤は勇気と決断力を表しています。中央に描かれている白い星は、ミャンマーが地理的にも民族的にも一体化するという意味があります。現在のミャンマー国旗は、2010年に制定されました。

ミャンマー人の国民性

ミャンマー人の国民性は、温厚で親しみやすい点が挙げられます。仏教の影響が強く、感情を抑え穏やかであることが尊ばれています。そのため、ミャンマー人は礼儀正しく調和を大切にする傾向があります。素直で真面目な性格の人が多く、言われたことを忠実に実行するため、日本人との相性が良いとされています。

一方で、叱られることや人前での注意に慣れていないため、指摘する際には優しく、1対1で伝える配慮が必要です。日本への親しみも強く、歴史的背景や文化への興味から「親日派」として知られています。このような国民性を理解し、温かく迎え入れることで、職場での円滑なコミュニケーションと長期的な定着が期待できます。

ミャンマー人の宗教

ミャンマーの人々はそれぞれ属している宗教の考え方に基づいて生活しています。宗教について理解し、ミャンマー人の価値観を理解しましょう。

上座部仏教

仏教には、上座部仏教と大乗仏教のふたつの流れがあります。原始的な仏教に近く戒律を重んじる上座部仏教と、大衆を救うことを目的とした大乗仏教です。日本には大乗仏教が伝わり、ミャンマーには上座部仏教が広まりました。

ミャンマーは11世紀にビルマ族が中心となり、統一王朝が始まりました。建国の基礎になったのはスリランカから伝わった上座部仏教で、それ以来長い間、上座部仏教はミャンマーの国教という位置づけです。国を指導するものは良い仏教者であるべきだ、という考えが浸透しており、軍事政権さえも仏教を重んじる政策を続けました。

出家僧はとても尊敬される存在で、人々はより良い来世を信じて出家僧を大事にし、良い行いを続けて功徳を積みます。男子は20歳になるまでに一度は出家するべきとされていて、多くは10歳前後に短期間出家し僧侶としての生活を送るようです。女性も希望すれば出家生活を送ることが可能。上座部仏教の教えは、人々の生活や価値観に多大な影響を与えているのです。

キリスト教

ミャンマーのキリスト教徒は人口の約6%。その多くはチン族などの少数民族です。軍事政権下で迫害の対象となっており、住民がお金を出し合って建設した教会が焼き払われ、牧師の命まで奪われました。キリスト教徒が9割のチン州は行政サービスも行き届かず、ミャンマーの最貧困地域となっています。

イスラム教

イスラム教徒はミャンマーの人口の約4%ほど。その多くはバングラデシュと国境を接するラカイン州に住んでいます。ロヒンギャと呼ばれるイスラム教徒たちはミャンマー政府から国籍を与えられていません。迫害の対象となっており、国際社会から問題視されています。

ミャンマー人の仕事観

ミャンマーには、とても真面目に仕事をする人が多いと言われています。宗教の教えを守り、誠実に働くことが良いこととされているのです。真面目に黙々と働いていることをきちんと認め、褒めてあげるようにしてください。

政情が安定せず所得が低いミャンマーに比べ、日本は給料が高く安全です。ミャンマーの人々が日本で働く目的は、家族への仕送りや貯金、日本の高い技術を学ぶこと。日本の職場に慣れるため、努力を惜しみません。

ミャンマー人と働く際の注意点と採用のポイント

ミャンマー人と一緒に働く際の具体的な注意点を詳しく解説していきます。文化的背景や仕事への姿勢を理解し、円滑な職場環境を作るためのポイントを順を追ってご紹介します。

ミャンマーには挨拶文化がない

ミャンマーには「あいさつ」の文化が無いといわれています。あいさつの代わりに「ご飯食べた?」と尋ねたり、笑顔でアイコンタクトしたりするとのこと。日本語を学ぶ時にあいさつを重視する日本文化について触れるので、来日するミャンマー人はあいさつができると考えられます。しかし来日後、あいさつできずに周囲と摩擦を起こすケースもあるので、その重要性をまず伝えるようにしてください。

また、「ありがとう」をあまり言わないとの報告もあります。これは上座部仏教の教えで、良い行いをするのは功徳を積む為であり、感謝を求めるためではない、という考え方に起因していると思われます。まったく悪気が無いので怒ったりせずに、日本では「ありがとう」という言葉を大切にすることを教えましょう。

前述の通り、ミャンマー人はとてもまじめに働くと高く評価されています。一生懸命なあまり、できないことまで頑張って引き受けてしまうミャンマー人もいるので、無理していないか、優しく確認してください。また、何でも引き受けるからといって、皆が嫌がる仕事ばかりを押し付けてはいけません。他の従業員と仕事量のバランスを取るよう心掛けてください。

豆知識:ミャンマー人には名字がない!?

ミャンマーの人々には名字がありません。例えば日本でも有名な「アウンサンスーチー」は「アウン・サン・スー・チー」と4つに区切ることが可能ですが、どれかが姓というわけではなく全てが名前です。長い名前で覚えにくい場合は、勝手に短縮するのではなく、どう呼べばいいか本人に確認してください。

不安定な政治状況

ミャンマーの国内情勢は、2021年の軍事クーデター以降、不安定な状況が続いています。民主化を求める市民や少数民族勢力と軍政との対立が激化しており、抗議活動や衝突が頻発しています。また、経済も停滞しており、国民生活に大きな影響を及ぼしています。しかし、多くの若者が海外就労を目指す中、ミャンマー人の勤勉さや責任感は海外の雇用主から高く評価されています。こうした背景から、ミャンマー人の採用は国際的な労働力確保の選択肢として注目されていますが注意が必要です。

2023年、失踪した外国人技能実習生は過去最多の9,753人にのぼったことが判明。特にミャンマー人の失踪者数は、前年の約3倍に急増しており、大きな課題となっています。

海外労働許可証が必要になる

ミャンマー人が海外で働くために必要な「海外労働許可証(OWIC)」(スマートカード)は、就労許可の重要な書類です。このカードの発行には、通常2週間から数ヶ月、場合によっては最大半年程度かかることがあります。

特に注意すべき点は、日本の在留資格認定証明書の有効期限が3ヶ月であることです。この期限内にスマートカードが発行されない場合、ミャンマー人労働者は日本への入国ができず、就労計画に支障が出る可能性があります。

そのため、採用担当者は、採用プロセスの早い段階でスマートカードの申請を開始するなど、十分な準備とスケジュール管理を行うことが求められます。計画的な対応が、スムーズな雇用手続きと労働者の迅速な日本での就業に繋がります。

ミャンマー人の対日感情

ミャンマーは日本好きな人が多いと言われています。種類は違えど同じ仏教国なので、価値観を共有でき安心できると考えています。日本のアニメを観て育った人も多いため、日本文化を身近に感じていたり、日本車や日本製品への信頼も厚いようです。

外務省が実施した対日世論調査で、ミャンマーの人々の62%が日本を最も重要なパートナー国であると答えています。最も信頼している国は、との問いに58%の人々が日本と答えました。なぜ信頼できるのか、という問いには53%が「友好関係、価値を共有する関係」と答え、51%が「経済的結びつき」を選択しています。日本に対するイメージは「経済力、技術力の高い国」65%、「生活水準の高い国」47%、「自然の美しい国」41%、という結果です。また、どの外国語を習得したいか、の問いも「日本語」が40%で1位、その理由は「仕事で必要だから」32%、「日本の文化や生活様式を理解したいから」31%、「日本を訪れてみたいから」27%でした。

日本とミャンマーの関係

日本は戦後、食糧難に陥りました。その時、大量のお米を送って助けてくれたのがミャンマーです。ミャンマーの人々は、その当時も今も、日本を友人と考えてくれています。

1954年に始まった日本の政府開発援助(ODA)が、一番最初に賠償・経済協力協定を締結したのはビルマ(ミャンマー)でした。それ以来今日まで、ミャンマーの主要インフラ整備や医療、貧困削減など多岐にわたる分野で日本政府が開発協力を実施しています。2022年までの累計で、円借款(円を低金利で貸し付けること)約13,785億円、無償資金協力約3,654億円、技術協力約1,147億円の実績があります。

日本で働くミャンマー人の声

「アニメやSNSで見ていた憧れの日本に来ることができて幸せです」「日本で働きたい人は沢山います。多くのミャンマー人が日本で働けるようになってほしい」「どんなに苦労しても、日本で頑張りたいです」など

まとめ

軍事政権が続き、内戦状態にあるミャンマー。若く優秀な人材が駆り出され、命を落としている現実があります。柔和で戦いを好まない人々なのに、とても残念なことです。

そんな中、日本に働きにやってくるミャンマー人は日本で技術を学び、しっかり働いて国の家族に仕送りすると固く決意しています。彼らが一日でも早く日本文化に溶け込み、ストレスなく仕事することができるよう、受け入れ態勢を整えましょう。勤勉なミャンマー人が能力を発揮できれば、日本社会にも良い影響を与えることでしょう。

参考資料:
厚生労働省:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】(令和5年 10 月末時点)
外務省:ミャンマー連邦共和国 Republic of the Union of Myanmar
厚生労働省:「外国人雇用状況」の届出状況【概要版】(令和5年 10 月末時点)
法務省:ミャンマーの諸民族と諸言語
東大新聞オンライン:仏教国ミャンマーを揺るがすクーデター 失望と民主化の芽生え
NHK:失われた文化と誇り 脅かされる信教の自由
外務省:ASEAN10か国における対日世論調査
    【別添4】20171003詳細結果(ASEAN対日世論調査)

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この記事の監修者

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キャリアアドバイザー
秦 秀斗

大学卒業後、経営コンサルティング会社に入社し、企業の経営支援に携わる。その後、dodaを運営するパーソルキャリアにて、様々な方の転職支援に従事。その経験を活かし、株式会社JINにて、人材事業を開始。

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