
外国人雇用を本音で語る「リクアジの編集部」の上田です。本日のトピックはこちら!
・タイ人の国民性と文化を理解
・職場での注意点と対応
・タイ人採用成功への具体策
微笑みの国として知られているタイは、東南アジア屈指の工業国。日系企業も数多く進出しており、そこで働くタイ人も増加しています。日本で働く夢を持つ若者も多く、日本語熱は常に高い状態です。令和6年6月現在、5,178名のタイ人が特定技能外国人として日本で就労しています。その数は現在、全ての特定技能在留外国人数のわずか2.1%に過ぎません。しかし親日家が多く、性質的にも日本と親和性が高いタイの労働力は、今後増大していくことが予想されています。
タイ人と共に働くとき、どのような点に注意すべきでしょうか。受け入れる我々が知っておくべきタイの基本情報と職場や生活で注意するポイント、600年続く日本とタイの深い関係などについてまとめました。

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タイ王国の基本情報

タイの正式名称はタイ王国。王様がいる立憲君主制の国です。インドシナ半島の中央に位置し、南北をチャオプラヤ川が縦断。その周辺では稲作農業が盛んで、かつては世界第1位、現在は世界第2位の米輸出国です。国土は日本の1.4倍ですが、人口は日本の6割弱です。
項目 | 詳細 |
---|---|
国名 | タイ王国(Kingdom of Thailand) |
国土 | 51万4,000平方キロメートル |
国旗 | 赤・青・白の三色旗。赤は国民、青は王室、白は仏教を意味している |
首都 | バンコク |
人口 | 6,609万人(2022年・タイ内務省) |
民族 | 大多数がタイ族。その他、華人、マレー族等 |
言語 | タイ語 |
宗教 | 仏教 94%、イスラム教 5% |
1人あたりGDP | 7,331.5ドル(2023年・タイ国家経済社会開発委員会) |

経済成長と近年の停滞
ASEAN諸国の中では「最も先進的な経済大国のひとつ」と言われているタイ。経済協力開発機構(OECD)はタイを「高中低所得国」と位置付けています。
工業や農業、観光業などで順調に成長し、いつの日か「高所得国」即ち「先進国」の仲間入りができるのでは、と期待されていました。ところが、コロナ禍で業績は一気に転落。その後なかなか回復できない状況が続いています。

経済の停滞に加え、不安定な政治や高齢化による労働者不足など、タイは様々な問題を抱えています。
そんな中、タイ政府はデジタル経済のインフラ整備を進めており、AIなど最新技術を活用したスタートアップ企業への支援を表明。若い世代を中心にデジタル分野での活躍の場が拡がっています。

女性性高い国:タイの社会
タイは「世界で一番女性性が高い国」とも言われています。タイの人々は温和で微笑みを絶やさず、男女ともに話し声が鼻にかかった高音ということもあり、とても優しい雰囲気です。
日本のように「男だから」「女だから」という概念はあまりありません。性別は18種類あるとされ、LGBTにとても理解のある国としても知られています。タイは一体どのような国なのでしょうか。
100万年前から続く歴史
タイには100万年前から人が住んでいました。6世紀ごろモン族がドヴァーラヴァティー王国を建国しましたが、9世紀にカンボジアのクメール王朝から制圧。13世紀にタイ族によるスコータイ王朝がはじまり、その後アユタヤ王朝が繁栄。18世紀にチャクリー王朝が成立して現在に至ります。
王族と政治
タイの人々は王族をとても大事にしています。特に先代のプミポン国王の人気は絶大で、国民は自分の父のように慕い、深く尊敬していました。しかし2016年に崩御。長男であるワチラーロンコーン王太子が次の王として即位しましたが、普段はドイツやスイスで生活しタイにあまり戻って来ないこともあってか、国民からの人気はあまり高くないと言われています。

押さえておきたいポイント!
タイでは、王室の批判をしたり国旗を粗末にすることは許されません。朝と夕方に国家が流れますが、その時は立ち止まり、座っているものは立ち上がって敬意を表さなければなりません。不敬罪は外国人であっても適用されます。最近では、SNSに上がった王室批判にイイネを押した人も不敬罪として罰せられるようです。
また、タイの政治はなかなか安定しません。これまで19回も軍事クーデターが起き、そのたびに憲法が改正されました。選挙のたびに大規模のデモなどの混乱が生じ、非常事態宣言も発令されています。
タイ文化の核心!仏教×精霊信仰
タイについて語るうえで欠かせないのが仏教です。ほとんどの国民が上座部仏教の熱心な信者であり、生活習慣や考え方なども仏教の影響を大きく受けています。


上座部仏教とは、ブッダの教えが色濃く残る原始仏教を継承したもの。煩悩や苦悩から解脱できるのは厳しい戒律を守る僧侶のみ、という教えです。在家信者は修行僧や貧者に施したり、善行を積むことで功徳を得ます。
男性はみな、一生に一度は出家し修行しなければなりません。「持つものが持たないものへ分け与える」「間違いを犯した人を憎んだり恨んだりしない」「常に笑顔で優しい言葉を使う」などの仏教の教えが、タイ社会を優しいものにしています。
インドから上座部仏教が伝わる以前から、タイには独自の精霊信仰が根付いていました。人々は両者をうまく融合させ、現在でも上座部仏教を信仰しつつ、庭に精霊のための祠を作って供物を捧げています。王制や官僚制度、文学などもインドから渡ってきました。
タイの食文化や手工芸などは、中国の影響が強いと言われています。タイの陶器として有名なスンコロク焼き(宋胡録焼)やベンジャロン焼きは、中国から伝わった技法を発展させたものです。ゴムの栽培や鉱物の採掘、貿易なども中国から渡ってきた商人がタイに伝えたものです。


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タイの国民性と仕事観
独自の歴史や文化の中で生活しているタイの人々は、どのような国民性があるのでしょうか。また、どんな思いで仕事に向き合っているのでしょうか。タイ人の国民性と仕事観について見てみましょう。


国民性
タイの人々はとても礼儀正しく、特に目上の人を敬う心を忘れません。僧侶や年長者へ挨拶するときには合掌するのですが、その手の位置の高さは敬意の高さを表しています。
家族や友人をとても大切にし、特に両親や祖父母を深く敬愛しています。平穏であること、快いことを優先し、辛い状況にある人を放っておけません。問題が発生したら臨機応変に、あらゆる手を尽くして解決しようと頑張ります。
仕事観
家族のため、快く楽しい生活のために働くといわれているタイの人々。仕事にやりがいを求めるというよりは、生活を良くするため少しでも良い条件の会社で働きたいと考えています。
職場のため、自分のスキルアップのために1人で頑張るのではなく、みんなで一緒に仕事をすることが好きです。仕事について考えるのは仕事中のみ。プライベートと仕事はしっかり分けています。
タイ人と一緒に働くときの注意点
タイの人々が来日した時、受け入れる私たちはどんな点に注意したらよいでしょうか。職場と生活それぞれの注意点をまとめました。


職場で注意すること
「組織のため」という意識の高い日本人は、上司の命令に従って行動します。一方、タイ人は上司の命令というよりは、「親しくしている〇〇さんのために働く」という意識を持っています。仕事の話は抜きにして、お互いの家族について話したり写真を見せ合ったりするなど、楽しい時間を過ごしましょう。
タイ人に厳しい口調で注意をすると「いじめられている」と感じ萎縮してしまうので、優しい口調でゆっくり教えるようにしてください。
仕事の業績や能率などをタイ人同士で競わせるのは良くありません。勝った人が妬まれ居づらくなるなど、関係が悪くなったという報告があります。個人競争ではなく、グループ競争にするほうが良いでしょう。


生活で注意すること
タイでは、他のいくつかのアジア諸国同様に頭に精霊が宿るとされており、他人の頭に触ってはなりません。人に足を向けたり左手で握手するのも避けるべきです。
王室や政府を批判したり、タイの仏教を軽視する発言はしないように。男女が二人きりになったり、身体に触れてもいけません。挨拶のつもりで軽く肩を叩く、という行為も良くないので注意しましょう。
食生活
タイでは、食べ物に多くの香辛料、飲み物には多量の砂糖が使われています。健康志向が高まりを見せているタイでは、日本食を健康食だと考える人が増加。来日するタイ人の多くは、日本食に抵抗なく受け入れる傾向にあります。
タイでは食器を持ち上げて食べたり麺をすすって食べることなどが下品とされています。日本の食習慣を教えたり、食器を手で持たないタイ人に理解を示すなど、受け入れ側は柔軟に対応しましょう。
住環境
大家族で賑やかに住むことが多いタイの人々は、1人暮らしに慣れていない傾向にあります。それぞれの意向を聞き、仲の良い人とルームシェアできるようにしたり、仲間と一緒に過ごせる空間を作るなど、工夫すると良いでしょう。
タイでは湯船につかる習慣が無く、人前で肌を露出することを嫌がるので、温泉や大浴場に連れていくときは行きたいかどうか希望を聞くようにしてください。また、タイのトイレには小さなホースがついており、手動のウォシュレットになっています。そしてトイレットペーパーは流さず、ゴミ箱に捨てています。


日本とタイの関係
日本政府はタイを「伝統的な友好国」と位置付けており、人的交流の歴史は600年続いていると言われています。
1887年、日本とタイは「日タイ修好宣言」を発表し、正式に国交を樹立しました。明治政府が東南アジアと外交を結んだ最初の国がタイだったのです。以来今日まで、両国は様々な分野で交流が続いています。
日本の皇室とタイの王室の間も親密です。1960年代、上皇陛下が皇太子時代、食糧事情の厳しいタイにたんぱく源としてティラピアを贈られました。現在ティラピアはタイの食文化に根付いていますが、日本の皇太子から贈られた魚であることはタイの人々によく知られているそうです。
政府開発援助(ODA)
日本政府はタイに対して、1954年から政府開発援助を実施しています。2021年までの累計で円借款23,789億円、無償資金協力1,729.01億円、技術協力2,415.73億円を実施。
タイのインフラや教育・医療などが日本の援助によって整備されました。日本の協力によって建設された橋が切手となったこともあります。
対日感情
以前から「おしん」「ドラえもん」「クレヨンしんちゃん」などが放映され、現在も日本のアニメが人気のタイは、親日家がとても多いことが知られています。中等教育の第二外国語の一つに日本語が指定されており、日本語熱や日本文化への関心も高い状況です。
タイの人々は日本を「同じ仏教国」「皇室や王室がある」「礼を重んじる」国と考えており、価値観を共有していると感じています。
対日世論調査結果
令和6年に日本政府が実施した対日世論調査では、タイの人々の対日感情がとても良いことがわかりました。日本を重要なパートナーと考え、今後も友好関係が続くと答えています。
日本の印象について上位にあるのは「豊かな伝統と文化」「技術力と経済力」「豊かな自然」。98%の人々が「日本を信頼できる」「どちらかといえば信頼できる」と回答しています。
まとめ
穏やかで優しいタイの人々は、良き隣人となる素質を持っています。職場に新たな価値観が生まれ、タイ人と一緒に働く日本人も世界の広さを学ぶことができるでしょう。彼らが日本でその能力を充分に発揮できるよう、タイの歴史や文化を理解し、受け入れ環境を整えましょう。
参考資料
外務省:日タイ交流の歩み
外務省:タイ基礎情報
出入国在留管理庁:特定技能制度運用状況
OECD:DAC List of Aid Recipients – 2024-25 flows.pdf
タイ国政府観光庁:文化
タイ国政府観光庁:日本人村(アユタヤ日本人町跡)
外務省:外国の切手になったODA
外務省:海外における対日世論調査


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この記事の監修者


大学卒業後、経営コンサルティング会社に入社し、企業の経営支援に携わる。その後、dodaを運営するパーソルキャリアにて、様々な方の転職支援に従事。その経験を活かし、株式会社JINにて、人材事業を開始。