
外国人雇用を本音で語る「リクアジの編集部」の上田です。
「外国人労働者が一時帰国する際に必要な脱退一時金の手続きってどうやるの?」「再入国時に注意すべき点は何?」こんな悩みを解決する記事です。
この記事を読むことで、次の3つのポイントが得られます。
・脱退一時金の申請手続き流れ
・一時帰国時の再入国における重要な注意点
・知っておくべき外国人の脱退一時金の仕組み
長年、外国人材の管理とサポートに携わってきた現場担当者ですので、信頼できる情報をお届けします。この記事を読めば、スムーズな申請手続きと適切な再入国対応ができ、安心して一時帰国・再入国のサポートが可能になります。


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外国人労働者の「脱退一時金」とは?仕組みと目的を解説

脱退一時金の目的と定義
外国人労働者の脱退一時金は、日本で一定期間働いた外国人労働者が、日本を離れて帰国する際に支給される年金の一部です。目的としては、日本で積み立てた年金保険料が無駄にならないように、帰国後にその一部を受け取れるようにするものです。これにより、外国人労働者が日本で働いた期間中の社会保障が掛け捨てにならない制度になります。
脱退一時金は、外国人労働者が厚生年金や国民年金に一定期間加入していることが前提で、これらの年金制度により、一定額の返還が行われます。
外国人労働者が脱退一時金を受け取る条件
国民年金・厚生年金における支給条件
外国人労働者の脱退一時金を受け取ることができるのは、日本で一定期間働き、国民年金や厚生年金に加入していた外国人労働者です。具体的には、以下の条件を満たす必要があります。
日本を離れて帰国する際、再び日本に戻る予定がない
日本の年金制度に10年以上加入していない(10年を超えると年金として通常支給されるため)
さらに、国民年金の場合も、保険料を一定期間支払っていることが条件です。
これらの条件を満たしていれば、申請手続きを通じて脱退一時金を受け取ることが可能です。厚生年金に加入していた期間や所得に応じて、支給される一時金の金額が決まります。
支給対象外となる場合
一方、脱退一時金を受け取れない場合もあります。主な例としては以下が挙げられます。
■10年以上年金に加入している:
→年金として通常支給されるため、一時金の対象外となります。
■日本に再び戻って働く予定がある:
→日本に再入国し、再び年金に加入する可能性があるため、脱退一時金は支給されません。
■既に年金を一部でも受給している:
→年金を受け取る権利がある場合には、一時金を申請することはできません。
これらの条件は、年金制度を利用した外国人労働者の保障を考慮したものであり、脱退一時金はあくまで帰国して日本の年金制度を離れる人向けの制度です。

脱退一時金:計算方法とデメリット
支給額の計算方法(概算額の計算方法)
外国人労働者の脱退一時金の支給額は、加入していた期間と収入に基づいて計算されます。支給額は基本的に加入期間に応じて次のように算出されます。
6か月以上であることが条件です。
支給額は、厚生年金の報酬月額に基づいて計算されます。加入者が毎月支払っていた保険料の総額に基づき、一定の割合で返還されます。

【概算額の計算方法】
過去の年収×9%=概算支給額
例:給与25万円 賞与年間で20万円 年収320万円 社会保険加入期間2年
年収320万円×2年×9%=支給概算額576,000円
これにより、外国人労働者は日本で働いた期間に応じて適切な金額を受け取ることができます。
概算額と実際の支給額の差
支給額を概算しても、実際の支給額と差が出る場合があります。例えば、上記例Bさんが概算では576,000円と見積もられていても、加入期間や所得の変動が原因で実際には異なる支給額になることもあります。
このように、概算額と実際の支給額が異なることがあるため、申請時には加入期間や所得の記録を正確に確認することが重要です。また、支給額の計算には、厚生労働省や年金事務所の情報を参考にし、適切な手続きを行いましょう。
支給上限の変更点(2021年の改正)
2021年の法改正により、支給上限額が変更されました。以前は最大36か月分の厚生年金保険料を元に計算されていた支給額が、改正後には支給額の上限が引き上げられ、長期間働いた場合でもさらに多くの一時金を受け取れるようになりました。
具体的な変更点として、36か月以上の厚生年金加入者に対して、上限額が設定されず、加入期間に応じて支給額がさらに増えることになっています。この改正により、長期間日本で働いた外国人労働者にとって、より大きなメリットが生まれました。
厚生年金脱退一時金のデメリット
一方で、特定技能脱退一時金にはデメリットも存在します。
これらのデメリットも考慮し、帰国や再入国の計画を立てることが重要です。

脱退一時金の請求手順
脱退一時金請求書の記入例
脱退一時金を請求するためには、まず「脱退一時金請求書」を正確に情報を記入する必要があります。記入する際の主なポイントは以下の通りです。
①氏名・住所:外国人労働者のフルネームと帰国先の住所
②マイナンバーやパスポート番号:本人確認に必要な情報を記入
③年金番号:日本で働いていた期間中に使用していた年金番号
④銀行口座情報:一時金が振り込まれる口座情報を、帰国後に使用する口座で正確に記入
厚生年金や国民年金に関する情報は、日本年金機構が提供している書類の見本に従って記入することで、スムーズに手続きを進めることができます。
必要書類の準備と提出先
脱退一時金を請求する際に必要な書類は次の通りです。
①脱退一時金請求書(正確に記入されたもの)
②パスポートのコピー(入国および出国日が確認できるページ)
③年金手帳のコピー(年金番号の記載があるページ)
④銀行口座の証明書類(海外で開設した口座の通帳コピーなど)
これらの書類をすべて揃えて、帰国後に速やかに提出することが重要です。提出先は日本年金機構で、帰国後に書類を郵送するか、代理人を通じて提出することも可能です。
提出方法と時期
提出方法は郵送が一般的ですが、国際郵便を利用して正確に送付することが必要です。提出する書類には不備がないように再確認を行い、返送された場合の手続きを防ぎます。脱退一時金の請求は、帰国後2年以内に行わなければなりません。この期間を過ぎると請求権が失効するため、早めの手続きが推奨されます。
提出した書類に不備がなければ、請求書受付後、おおよそ4か月後に支払われることになります。
外国人労働者が一時帰国する際の重要ポイント
みなし再入国許可とは?
みなし再入国許可とは、日本を一時的に離れる外国人が、再入国の手続きを簡略化できる制度です。この許可を利用することで、1年以内の再入国を前提に、通常の再入国許可申請を省略できます。これにより、外国人労働者は一時帰国後にスムーズに再入国でき、特定技能の在留資格も維持されます。
この手続きは、空港での出国前に行い、パスポートにスタンプを押してもらうことで完了します。ただし、1年以内に再入国しないと在留資格が失効するため、注意が必要です。
一時帰国時の再入国手続きと条件
一時帰国する際、再入国するためには「みなし再入国許可」または「通常の再入国許可」を取得する必要があります。
みなし再入国許可は1年以内の再入国が条件です。出国時に簡単な手続きが必要で、再入国時に新たな許可を申請する必要はありません。
通常の再入国許可は、1年以上日本を離れる場合に必要となります。この許可を取得することで、2年以内の再入国が可能です。
一時帰国中に手続きを誤ると在留資格が失効する可能性があるため、事前に正確な手続きを行うことが重要です。
一時帰国時の注意点
外国人労働者が一時帰国する際には、いくつかの注意点があります。
再入国許可の確認:帰国前に再入国許可の手続きを行い、1年以内の再入国を確保
在留資格の有効期限の確認:在留カードの有効期限が切れていないか確認し、必要に応じて更新
帰国期間の調整:帰国期間が1年を超えないよう調整し、再入国許可の期限内に日本に戻る。
これらのポイントを事前に確認しておくことで、再入国後も特定技能の在留資格を維持し、引き続き日本での就労が可能になります。
再雇用時の手続きと企業側のサポート
再入国時の「再認定許可」の重要性
外国人労働者が一時帰国し、再び日本で働く場合、再入国時に「再認定許可」が必要になります。この許可は、外国人労働者が再び日本で合法的に働くために欠かせない手続きです。再認定許可を得ることで、労働者は在留資格を再度有効化し、以前の雇用契約に基づいて就労できます。
再認定許可の申請には、雇用契約書や企業側の受け入れ計画が求められるため、事前に企業と労働者の間で十分な準備が必要です。もしこの許可を取得しないまま入国した場合、在留資格が無効となり、再び働くことができなくなる恐れがあります。
企業が行うべき再雇用手続きと注意点
再雇用時には、企業側もいくつかの手続きを行う必要があります。主な手続きは以下の通りです。
外国人労働者が再び働くためには、新しい雇用契約書を作成し、労働条件や待遇を明確にする必要があります。以前の契約が終了している場合は、再度契約書を交わし労働者に提供します。
再雇用時に、企業は受け入れ計画を地方出入国在留管理局に提出します。この計画には雇用条件やサポート内容が記載され、再雇用に必要な詳細が求められます。
再雇用に伴い、社会保険や年金に再度加入する必要があります。企業はこれらの登録手続きを速やかに行い、外国人労働者が適切な保障を受けられるよう支援します。
これらの手続きを怠ると再雇用がスムーズに進まない場合があるため、企業側は事前に十分な準備を行うことが大切です。
社会保障協定を結んでいる国の労働者の場合の注意点
外国人労働者が脱退一時金を申請する際、併せて理解しておくべき制度に「社会保障協定」があります。この協定は、日本と協定国の間で「社会保障の二重加入を防ぎ」「年金加入期間を通算できる」仕組みを提供します。協定国の労働者が日本で支払った保険料は、母国での保険料支払い期間として認められるため、帰国後も年金を受給しやすくなります。
社会保障協定の利用方法
社会保障協定を利用する外国人労働者は、次の2つの選択肢から年金受け取り方法を決めることができます。
注意点:脱退一時金と年金通算の選択
脱退一時金を受け取る場合、その支給対象となる加入期間は「年金通算の対象外」となります。つまり、脱退一時金を選ぶと、日本での年金加入期間が母国の年金制度に加算されないため、帰国後に通算での年金受給ができなくなる可能性があります。
したがって、外国人労働者が帰国後に年金として受け取ることを希望するのか、脱退一時金を即時受け取るのかを事前に確認し、労働者本人の意向に沿った選択をサポートすることが重要です。
社会保障協定を結んでいる主な国
社会保障協定の対象国には以下の国が含まれています
アメリカ、ドイツ、フランス、イギリス、カナダ、韓国、スイス、ベルギー、スペイン、オランダ、オーストリア、インド、フィリピン、アイルランド、ブラジル、フィンランド、ルクセンブルク、スロバキア、ハンガリー、スウェーデン、チェコ、中国
※イタリアは署名済みですが未発効です。
また、イギリス・韓国・中国との協定は「保険料の二重負担防止」のみが対象です。
詳細については、最新の情報を日本年金機構のホームページで確認し、外国人労働者に適切な情報を提供しましょう。
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この記事の監修者

大学卒業後、経営コンサルティング会社に入社し、企業の経営支援に携わる。その後、dodaを運営するパーソルキャリアにて、様々な方の転職支援に従事。その経験を活かし、株式会社JINにて、人材事業を開始。