
外国人雇用を本音で語る「リクアジの編集部」の上田です。本日のトピックはこちら!
・スリランカ人材の特徴
・日本との歴史的結びつき
・採用ポイントと注意点
インド洋の真珠とも呼ばれるスリランカ。ヨーロッパ諸国のバカンス地として昔から人気がある、とても美しい島国です。日本で働く意欲を持つ若者が多く、日本語を熱心に勉強する姿があちこちでみられます。
2022年に就任したウィクラマシンハ大統領は「今後5年間で34.5万人のスリランカ人労働者を日本に送る」と発表し、国民から絶大な支持を受けました。2024年に政権が変わったため政策が継承されるか未定ですが、日本で仕事をするスリランカ人が増えていくことは確実視されています。

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スリランカの基本情報

スリランカは「輝く(シュリ)」「島(ランカー)」という意味です。国土は北海道よりもひとまわり小さく、人口は日本の約5分の1。主な産業は農業や繊維業で、上質な宝石やセイロン紅茶、観光業なども盛んです。日本で流通している「亀の子タワシ」の原料もスリランカ産です。
項目 | 詳細 |
---|---|
国名 | スリランカ民主社会主義共和国(Democratic Socialist Republic of Sri Lanka) |
国土 | 6万5,610平方キロメートル(北海道の約0.8倍) |
国旗 | 剣を持ったライオン(シンハ)と菩提樹の葉が描かれている。ライオンの周りの海老茶色は仏教、オレンジはヒンドゥー教、緑はイスラム教を意味している。 |
首都 | スリ・ジャヤワルダナプラ・コッテ |
人口 | 約2,204万人(2023年:スリランカ中央銀行) |
民族 | シンハラ人(74.9%)、タミル人(15.3%)、スリランカ・ムーア人(9.3%) |
言語 | 公用語(シンハラ語、タミル語)、連結語(英語) |
宗教 | 仏教徒(70.1%)、ヒンドゥ教徒(12.6%)、イスラム教徒(9.7%)、キリスト教徒(7.6%) |
1人あたりGDP | 3,474米ドル(2022年)(スリランカ中銀) |

スリランカ人材の特徴
2012年には8,428人だった日本に住むスリランカ人は、2023年には46,949人と約5.6倍に増加しました。特に介護・看護、IT、建築などの専門資格を持つ人材が増え、日本の人手不足を補うだけでなく、多文化交流を進める役割も期待されています。では、スリランカ人材にはどんな特徴があるのでしょうか。


日本語習得能力が高い
スリランカは、南アジアではインドに次いで日本語学習者が多いことで知られています。また、8割近くが使っている「シンハラ語」は日本語と文法と発音が似ているため、多くのスリランカ人にとって日本語を話すことはそう難しくありません。
高学歴の優秀な若者が多い
公立校であれば大学まで学費無料のスリランカ。子どもたちは小学生時代から全国テストを受け、し烈な競争を経て進学します。国内では良い就職先が限られているため、海外で働く動きが高まっています。他国よりも安い賃金で優秀な人材を確保することが可能です。
日本社会に馴染みやすい
スリランカ人材の多くは、日本的な縦社会をすぐに理解できます。目上の者を敬い、謙虚で和を大事にするため、余計な軋轢を生みません。
スリランカの社会
長引く内戦が終結し観光国として潤ってきた矢先、2022年に財政破綻し大混乱に陥ったスリランカ。中国の支援をバックに長期政権を握っていたラジャパクサ大統領は、国外に逃亡しました。その後財政再建のために努力していますが、いまだに回復していません。

歴史と宗教
紀元前543年、スリランカにシンハラ王朝が建国されました。王の祖父はライオン(シンハ)だった、という神話があります。紀元前255年ごろインドから仏教が伝わり、ブッダが悟りを開いた菩提樹の苗とブッダの歯がスリランカに贈られました。菩提樹と仏歯は今でも信仰の対象として大事に守られています。仏教伝来当時の教えは「上座部仏教」となり、周辺国へも広がりました。
スリランカは民族によって宗教が違う傾向にあります。国民の7割以上を占めるシンハラ人は、その殆どが上座部仏教です。また、土着信仰のような形でヒンドゥーの神々を祀る仏教徒も多く存在しています。

タミル人は主にヒンドゥー教を信仰しています。タミル人にはインドから渡ってきたグループと、紅茶産業のためにイギリス政府が連れてきた労働者のグループがあります。
アラブから渡ってきた商人たちはムーア人と呼ばれるイスラム教徒で、タミル語を話します。キリスト教徒にはシンハラ人もタミル人も存在しています。
26年続いた内戦
スリランカは互いの宗教を尊重し、異教徒が隣同士で仲良く暮らす寛容な世界でした。ところが1983年ごろからタミル人過激派との民族紛争が勃発。同時期に毛沢東主義者によるシンハラ人同士の粛清もあり、多くの命が犠牲となりました。
大国に翻弄されるスリランカ
スリランカは東洋と西洋を結ぶ海の要衝であること、スパイスや紅茶、宝石も沢山とれる豊かな国であることから、大国に狙われ続けた歴史があります。
インドの侵略を何度も受け、ポルトガル・オランダ・イギリスから相次いで植民地支配を受けました。最近も中国の一帯一路に組み込まれ、借金が返せずに南部の港を中国に差し出す事態となってしまいました。
カースト制度
スリランカには目に見えないカースト制度が未だに残っています。インドと同じように、身分によって職業が決められている「職業カースト」です。最も高いカーストは農民で、壺つくり、洗濯業など手が汚れる仕事は低カーストです。カーストを抜け出すため、キリスト教やイスラム教に改宗する人も多く存在しています。
名字や出身地によってカーストがわかってしまうことが多いのですが、インドと大きく違う点は「成り上がりが可能」なこと。通常、大統領は農民カーストから出るのですが、低カースト出身者が大統領になったこともありました。

スリランカの国民性と仕事観
仏教とヒンドゥー教、イスラム教とキリスト教が共存しているスリランカ。多様な文化を受け入れる柔軟性があると言われています。スリランカの人々はどんな国民性で、どういう思いで仕事に向き合っているのでしょうか。

国民性
笑顔を絶やさず、目上の人を尊敬し奉仕する心を忘れないスリランカの人々。虫も殺さない慈悲深い人々が多いのも特徴的です。そして、民族によって性質に違いがあるとも言われています。
国民の約7割を占めるシンハラ人は、物腰が柔らかくいつも笑顔を心がけています。仏教の教えを実践し、家族や友人が何よりも大事。平穏に暮らすことに喜びを感じます。
タミル人は2割にも満たない数ですが、勉強熱心で優秀な人が多い傾向にあります。シンハラ人社会の中で虐げられてきた歴史があり、シンハラ語や英語が話せないと就職も難しいことから、一生懸命に勉強し上を目指します。
商売人の多くはイスラム教徒のムーア人で、その数はスリランカ人口の1割以下。お金持ちが多い印象で、数字に強く損得勘定で動くとも言われることも。同族意識が高く、大家族で助け合って暮らします。
スリランカ民族早見表
民族 | 人口割合(約) | 主な言語 | 主な宗教 | 特徴 |
---|---|---|---|---|
シンハラ人 | 74.9% | シンハラ語、英語 | 上座部仏教 | 歴史的に農業に従事する人が多い。目上を敬う文化が根強く、家族・仲間を重視。 |
タミル人 | 15.3% | タミル語、英語 | ヒンドゥー教、キリスト教 | インドから渡ってきたグループと、紅茶産業のために連れてこられたグループが存在。 |
スリランカ・ムーア人 | 9.3% | タミル語、英語 | イスラム教 | 先祖はアラブから渡ってきた商人が多い。商売に長けている。 |
その他 | 0.5% 程度 | 英語、シンハラ語、タミル語 | 仏教、キリスト教、イスラム教など | バーガー人やマレー人など多民族が混在。 |
仕事観
スリランカ人の多くは、安定した仕事を求めています。大切な家族のために仕事をするので、少しでも良い条件で長く働きたいのです。職場では上下関係をわきまえ、真面目に取り組みます。
スリランカ人と一緒に働くときの注意点
希望と不安を抱いて来日したスリランカの人々を迎え入れるとき、受け入れる私たちは何に注意するべきでしょうか。お互い気持ちよく仕事をスタートさせるために、職場や生活、食事などで押さえるべきポイントをまとめました。
職場で注意すること
スリランカ人は目上の人に従順なので、上司に言われたことは何でも引き受けようとします。とても無理なことでも笑顔で承諾してしまうため、本当にできるのか確認すること。人前で注意するのは避け、個別にじっくりと話を聞いてください。
スリランカ人は、職場に無表情な人がいると窮屈に感じ、自分が悪いのかと心配してしまいます。受け入れ側は笑顔を心がけ、リラックスした雰囲気を作りましょう。

生活で注意すること
スリランカ人の多くは、ひとりでいることに慣れていません。仲の良い同僚とルームシェアする選択肢を与えたり、休日が重なるよう配慮すると良いでしょう。飲酒しない人も多いので、歓迎会などで無理強いしないよう注意してください。
食生活
ベジタリアンが多く、肉食する人でも鶏肉のみで、豚や牛を好みません。目覚めに紅茶を飲まないと、身体のリズムが悪くなるケースもあります。
食事には唐辛子などの香辛料と玉ねぎ、紅茶にはたっぷりの砂糖や練乳を使う人が多いので、準備しておくと喜ばれるでしょう。
日本とスリランカの関係
日本はスリランカに恩があります。1951年のサンフランシスコ講和条約に出席したスリランカのJ.R.ジャヤワルダナ氏が、日本に対する賠償請求権を放棄する演説を行い、そのスピーチが出席者の胸を打ちました。結果として日本が東西に分断される事態を防いだ功績は特筆に値します。J.R.ジャヤワルダナ氏はその後大統領に就任し、日ス両国の友好関係を深めました。1996年に亡くなった時「片方の目は日本に、もう片方の目はスリランカに」という遺言が実行され、角膜が日本人とスリランカ人に移植されました。
スリランカに日本大使館が設立されたのは1952年2月で、2022年には外交樹立70周年を迎えています。古くから仏教の交流や東インド会社を通じた貿易の拠点などで親交が続いており、幕末の使節団や福沢諭吉、夏目漱石、森鴎外らもスリランカに立ち寄ったという記録があります。昭和天皇や上皇様ご夫妻も訪問され、新種の黄色い蘭(デンドロビウム)は「MICHIKO」と名づけられました。
政府開発援助(ODA)
日本はスリランカに対し、2020年度までの累計で有償資金協力11,267億円、無償資金協力2230億円、技術協力857億円を実施しました。空港や港、テレビ局や道路などのインフラ整備から、貧困削減、教育、福祉などの分野で幅広く支援しています。
対日感情
スリランカは伝統的な親日国です。日本が大好きで、いつも日本に温かい眼差しを向けています。JRジャヤワルダナ元大統領がサンフランシスコ講和会議で日本を助けたことに誇りを持っており、日本を兄弟のように感じています。
シニア世代は「日本ではすべての家に天皇皇后両陛下とJRジャヤワルダナ氏の写真が掲げてある」「日本の国鉄がJRと名前を変えたのは、JRジャヤワルダナの功績を忘れないため」と考えていました。桜の花や雪を見てみたいと日本旅行を夢見る人も大勢います。
日本の技術をとても信頼しており、日本の製品やサービスは高品質だと考えています。
シンハラ語に「ジャパナハパナ」という言葉があって、その意味は「日本のものは最高」。「made in Japan」は高品質の代名詞なのです。
まとめ
政治も経済も不安定なスリランカでは良い就職先がとても少なく、高い教育を受けた多くの若者に活躍の場がありません。日本は円安が続き、賃金の目減りが問題となっていますが、スリランカから見るとまだまだ魅力的です。子どもを大事にし手元におきたがるスリランカ人ですが、「日本ならば安全で良い国だから」と安心して送り出します。日本社会にうまく溶け込めるスリランカ人は、労働力不足に悩む日本の新たな働き手として、今後ますます需要が高まるでしょう。
参考資料
外務省:スリランカ基本情報
スリランカ大使館:スリランカと日本の外交関係
日本スリランカ交流協会:人材

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この記事の監修者

大学卒業後、経営コンサルティング会社に入社し、企業の経営支援に携わる。その後、dodaを運営するパーソルキャリアにて、様々な方の転職支援に従事。その経験を活かし、株式会社JINにて、人材事業を開始。